第17話 大飛球
◇
ジャパニーズ・ニンジャのようにマウンド上で分身の術を披露するバナナボール部のピッチャー5人は、よく見ればどこからどう見ても分身には似つかない他人であり、そもそも反則のようなものであるが、エンタメ重視なので細かいことはどうでもよい。
なによりもお揃いのユニフォームで遠目から見ればわからないからね?
ああ、今もこの国にはジャパニーズ・ニンジャが居てもおかしくないだろ?
例えばカズサさんのように、気配を消せる特技を持つ人もいるからね?
一方のバッターボックス上で『呉』と化したナギ姐は、どうやって打つのかわからない真正面に正対する構えで待ち構えた。
どうやって打つの? VS どこから投げてくるのかわからない、むしろ5人揃ったら反則の戦隊ヒーローズの対決は、投じられた初球で決した。
『CRACK!!』
ナギ姐の振るった反則的な長さ1メートルの木製バットから快音が鳴り響き、打球はぐんぐんと伸びていき、柵越え通り越して場外へと消えていった。
ナギ姐はバットを放り投げ、ゆっくりとダイヤモンドを一周する。
なお、軽く放り投げたつもりのバットは、思った以上に飛んでいった為、ベンチの俺たちは二次被害を防ぐべく全力で避難した!
ナギ姐、こっちは戦力不足だから勘弁してくれ……ヘルメットの試着をしていなかったら俺が病院送りだったぞ?
ヘルメットが無ければ即死だった宇宙世紀ネタになるとこだったが、被害者の俺はちょっとだけふらついた。
とりあえずギャグ時空なのであまり問題にならないだろうし、保健室へと運ばれたトランポリン君もしれっと復帰している。
さて、結果としてベンチから飛び出したことによりホームベース前でナギ姐を迎えることとなったが、ハイタッチで脱臼しないよう手加減を頼むぜ?
ところでさ、場外に抜けた打球はどうなったかって?……『BANG!』……ああ、俺は何も知らないからな? HAHAHA!
こうしてナギ姐の先制ソロホームランにより、1点リードした俺たちは、続く三番のウィラの打席を見守る。
マウンド上に5人揃った戦隊ヒーロー的なピッチャーの初見殺しを、ナギ姐の初球打ちによる初見殺し返しで攻略出来たが、流石にあれは事故なのでバナナボール部たちも気持ちを切り替え、左打者のウィラをツーストライクまで追い詰めた。
いくら運動神経抜群なウィラであっても、確実にヒットを打てるかはわからない。
野球、もといバナナボールはストライクゾーンに入れてくれるだけ打率は上がるかもしれないが、バナナボールならではのルールってものもあるんだ。
追い詰められたウィラは、当然振りに行ってボールへと食らいつき、本当に女性なのか疑わしい鋭いファールフライを連発。
粘りに粘ったが、やがてはファールフライを観客に捕球されたことにより、アウトコールを告げられたのであった————。
◇
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます