運命はイタズラ心に満ち溢れている
あらフォウかもんべいべ@IRIAM配信者
第1話 スピリチュアルを信じるかい?
◇
アナタハ、カミヲシンジマスカー?
ザビエルの信心深さがそのまま具現化したようなヘアスタイルを流行らせようとする気概は最高にクールだが、俺はそんなものに魅力なんて感じるまでもなく信じるはずもなく、他に当たれと中指を突き立ててノーセンキュー。
八百万の神様の国でまた1人増えようがどうしようが、正直どうでもいい。
それよりもさ、誰が言ったか、信じるに値する言葉がある。
曰く、縁のある者同士は、必ず出会う運命にあるらしい。
スピリチュアルを信じるかと言えば、あっても面白い程度に信じている俺は、遠い遠い過去の記憶を持っているんだ。
まず、前前世で孤児だった俺は、まるで野良犬のようだった。
人間としての尊厳はどこへやら?
負け犬のまま死ねるかと思い至った先は、少年兵となって戦い、生き抜いてやがては大人になった前前世。
長生きし過ぎた少年兵だった俺は、最高の幸せを掴むも壮絶な最期を遂げた……はずだったのだが、何者かによってセカンド・チャンスを与えられたことにより、魔王として君臨、チートを使うまでもなく力技で世界平和を導いたのが前世だ。
そして今、またしても孤児スタートであったものの不思議なご縁に導かれるがまま、戦争とは無縁である平和な現世に至った。
俺はスピリチュアル的なことを信じるかって言えば、前前世、前世同様、信じた方が面白いと思っている。
運命に導かれるがまま、高校進学を機に……物語は動き出すんだ。
俺の名前は、伊那 虎千代(イナ トラチヨ)。
今日から兄貴と一緒に東方共栄学園に通う、自称普通の高校生だ。
兄貴と言っても義理の兄貴、俺は不思議なご縁で養子に迎えられた身。
そんな俺を実の弟のようにかわいがってくれた兄貴の名は、伊那 頼勝(イナ ヨリカツ)……なんだろう、甲越同盟か? HAHAHA!
歴史ジョークはともかく俺と兄貴は、おびただしい数の学生達でごった返す、さながら年末年始のお宮参り状態の通学路から外れ、初登校にも関わらず何故か既視感のある裏道を通り抜けるRTAに挑戦している。
兄貴も既視感を覚えているのか、時折首を傾げながらも悠々と進んでいるのだが、疑惑は確信に変わったのだろう。
歩く速度はそのまま、俺に顔だけ向けて口火を切るのも予定調和なのかもな?
「トラ、変な話をしてもいいか?」
「ああ、俺も同じことを考えているかもな」
「だろうな……俺、ここに来たことあるわ」
「ああ、そりゃあ願書提出、試験、合格発表で来るから当然だろ? 兄貴、お前はアホか? 老人ホームならそこの角を右だ」
「お前もよく知ってるな? まだお世話になる年齢じゃないだろうよ。で、ただのアホだったら合格発表でこの世の終わりのような顔をしていただろ? そんなアホ面眺めてきた俺とお前の着ている制服は、いったいどこの制服なんだ?」
「「HAHAHA!」」
まるで呼吸のようにブラックジョークを交わして笑い合い、少し離れた場所でも同じような馬鹿笑いが聞こえたような……ともあれ、俺と兄貴の疑惑は確信に変わったことに間違いない。
「東方共栄学園、名前だけ見て決めたあの時から兄貴も気付いたようだな?」
「そういうことだ、トラ……後ろを見てみろ?」
兄貴に促されるがまま、足を止めて後ろへ振り返れば……東方共栄学園の制服を着たキャラクターの濃そうな女生徒が4人、馬鹿笑いを飛ばしていた。
一番目立つ191cmぐらいありそうなハーフ系の美人さん、関西弁を喋りそうなキツネ顔美人のドイツクォーター、からっ風文化育ちのめちゃくちゃ足腰が強そうな情報屋、それからとても凶暴そうなチビのポメ柴の4人が、俺たちと同じく裏道を並んで歩いているんだ。
彼女たちも俺と兄貴に気付いた様子で、それぞれが訝しげな表情を浮かべて何かを思い出そうとしている仕草が、ありありと伝わってくるのと同時に、運命のいたずらよろしく、出会うべくしてまた出会ったのだろう。
運命を信じるかって?
ああ、ここまで来たら信じるしかないだろ?————。
◇
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