東武戦線異状なし2

鷹山トシキ

第1話 東武線鉄道警察隊の誓い

登場人物:


日向隼人(ひゅうがはやと):東武鉄道警察隊の若き隊員。正義感が強く、少し真面目すぎるところがある。鉄道が好きで、幼い頃から鉄道警察隊に憧れていた。


田村恭子(たむらきょうこ):日向の先輩で、経験豊富な鉄道警察隊員。冷静かつ理知的で、日向にとっては頼れる存在。


田島信一(たじましんいち):東武鉄道の駅員で、日光駅で長年働いている。鉄道の安全には精通しており、警察隊とも協力して事件解決に取り組む。


坂本刑事


加賀美刑事 日向の恋人


森田刑事 加賀美の後輩


不明な犯人:謎の人物。東武日光駅周辺での一連の犯罪行為に関与している。




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第一章:日光駅の影


東武日光駅は、観光客にとっても鉄道ファンにとっても特別な場所だった。駅前には美しい日光山が見え、周囲には歴史的な観光地も多く、常に多くの人々で賑わっていた。しかし、その日、駅構内に突如として不穏な空気が漂い始めた。


日向隼人は、東武鉄道警察隊として初めて配属された日光駅で、忙しくも充実した毎日を送っていた。鉄道警察隊の仕事は、ただの巡回や監視だけではない。乗客の安全を守り、犯罪を未然に防ぐことが最も重要な使命だ。日向はそんな仕事に胸を張って臨んでいたが、この日、何かが違った。


「隼人、駅の監視カメラに不審な人物が映ってる。君、行ってみてくれ」と田村恭子が言った。


日向はすぐにカメラ映像を確認した。画面に映るのは、駅の片隅に立つ黒いコートを着た男。その人物は、何度も周囲を警戒するように目を光らせながら、駅構内を歩いていた。


「これは…ただの観光客じゃないな」と日向は呟いた。


田村は冷静に言った。「あなたの直感が当たることを祈るわ。あの男の目的を突き止めるのが先決よ。私たちがここにいる以上、何かあればすぐに対応できる。」


日向は覚悟を決め、駅の構内を歩きながらその男に近づいていった。


第二章:不審者の正体


日光駅の改札を通り抜けると、彼は再びその男を発見した。男は一度、プラットフォームに立ち止まり、遠くの風景を眺めていたが、すぐにまた歩き出すと、今度は無言で駅構内を歩き回り始めた。


日向は一度距離を取るようにして、その男を尾行した。すると、その男が不自然な動きでホームに近づくと、何かを取り出して、駅の端に向かって走り出した。その瞬間、日向は全力で男を追いかけた。


「止まれ!」と日向が叫びながら、男を追う。しかし、男はその声に反応することなく、走り続ける。


男が改札近くの階段に向かって駆け上がると、日向はさらに加速し、階段を駆け上がった。そのとき、男が突然振り返り、何かを持っているのを見た。それは明らかに凶器のようなものだった。


「危ない!」と日向は叫びながら、男に飛びかかった。だが、その瞬間、男は手に持っていた物を地面に落とし、そのまま逃げ去った。


日向はその物が何か確認する暇もなく、男を追い続ける。しかし、途中で男は人混みに紛れ込んで見失ってしまった。


「くそっ…逃がしたか…」日向は悔しさを隠せずに呟いた。


第三章:事件の真相


数日後、日光駅では再び不審な事件が発生した。駅員の田島信一が、「改札前に怪しい荷物が放置されている」と通報してきた。日向と田村はすぐに現場に駆けつけた。


「これは…前回の事件と何か関係があるかもしれない」と田村が言う。


日向は荷物の中身を確認すると、それは何と、駅構内で使われるべき鉄道関連の機材だった。その機材は、盗難されたもので、特定の駅や車両の運行に支障をきたす恐れがあった。


「犯人はやはり鉄道の内部に関わりがある者だ」と日向が言った。


田村は冷静に頷いた。「今回の事件、背後にもっと大きな組織が関与している可能性がある。隼人、君はそのまま調査を続けてくれ。」


日向はその後、駅周辺や乗客の証言を元に調査を進め、ついに犯人の正体を突き止めることができた。犯人は、駅の内部で働く一部のスタッフと手を組み、鉄道の運行を妨害しようと企んでいたのだ。


第四章:誓い


犯人が逮捕された後、日向は田村と一緒に日光駅を見渡していた。


「これで一応の平和は取り戻せたな。でも、まだ警戒は続けないといけない」と田村が言った。


日向は静かに頷いた。「僕たちの仕事は、決して終わらない。どんなに小さな違和感でも見逃さず、守り続けます。」


田村は微笑んだ。「その意気だ。隼人、君ならきっと、立派な警察官になれるよ。」


日向はしっかりと背筋を伸ばし、改めて誓った。どんな困難が待ち受けていようとも、この駅と鉄道を守り抜くことを。



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東武戦線異状なし2 鷹山トシキ @1982

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