この作者の作品は、とても美しく幻想的で
妖しく儚げな退廃を思わせるものが少なく
ないが、その重心の振れ方に拠っては
『怪談』にも『空想科学』にも成り得る
事を、此処に確信したものである。
得てして、情緒的な太正浪漫を感じられる
作品を多く書かれているが、この作品は
まさに何から何までが人工的で無機質な、
前者が水分を多く含むとすれば後者は白く
乾燥した世界を想起させられる。勿論、
ここでは水さえもH2Oであり、湿度はなく
『生命』というモノが乾いた
『人工生命』へと置換されて行く。
どれも美しい掌編であり、それを陳列した
この作品はまるで森閑とした 博物館 の
趣もある。
一つずつじっくりと鑑賞したいと思った。
読んでしまうのが勿体無いと。だが、又
訪れれば良い。それに気がつかぬ程に
作品の一つひとつが神々しい光を放つ。
最後の掌編に、この作者の巧緻な企みが
現れてはいるものの、作者自らが大切に
紡がれた物語であるのは言うまでもない。