能力者達の夏の過ごし方
キャシヨ
第1章 人類最後の夏
第1話 予知夢
その日、巨大隕石の衝突により地球の8割の生命が失われた。長い間地球を支配してきた人類は滅亡の一途を辿るだろう―――
「……っていう夢を見たのが3日前でぇ、昨日見た夢は―――しかし、5人の少女達の特殊能力により隕石衝突の危機は回避された、ありがとう少女達!って夢……ちょっと、チエ!聞いてる?!」
「えぇ〜聞いてるよ〜。聞いてるけど、さっきのテストやらかしたなーっていうダメージを引きずってて……」
クラスの皆は1学期の期末テストが終わった開放感に浸っている。
私は昨日見た夢の事が気になり、あまりテストに集中出来なかったけど、今はそんな事はどうでもいい。
「もう、終わったテストの事は忘れてさ!地球の危機なんだよ!」
「え〜だって夢なんでしょ?……ありがとう少女達!とか言って、誰目線なんだよいったい」
「それは、ちょっと主観が入っちゃったかもしれないけど……夢だけど、只の夢じゃないんだよ」
「えぇ、どうゆう事〜」
「あのさぁ、今まで内緒にしてたんだけど……私の見た夢って本当になるの」
私は
でも、一つだけ他の人と違う所がある。それは、見た夢が本当になる事。いわゆる予知夢を見れる事だ。
「はぁ〜、リルさぁ、漫画好きが高じて自分が能力発現しちゃったか〜。アタシらもう、高一なんですけど。中二じゃないんだよ」
「う〜、バカにしてー!チエだから思い切って話したんだからね!」
「イヤ悪かったよ、でもいきなりそんなSFチックな事言われてもねー」
この子は
気さくで思いやりがあって、一切人見知りをしない……まぁその分、考え無しの所もあり、馴れ馴れしいと思う事もあるけど、この高校で唯一私が気を許せる人物だ。
「そうだよね、いくらチエでも予知夢見れます!なんて言っても信じないよね」
私は大げさに落ち込んだふりをする。
「そうだなぁ……ん〜?と言う事は、今までも見た夢が本当になった事があるってわけかい?」
チエは顔を上げ、前髪を切り過ぎたせいでハッキリ見える眉毛を上下に動かす。私は笑いそうになるのを堪えて答える。
「そうそう!よくぞ聞いてくれました!例えば……」
「例えば〜?」
「駅前の商業ビルにアニメの店舗入ったじゃん!あれ、夢で見てたんだ」
「あー、あの店ねぇ……他には?」
他に?あまり驚かないチエの態度に動揺する。
「エーと……そうそう、この前学校の帰りにたこ焼き屋の新作食べたよね、あれメッチャ美味しかったー!……って夢で見てたよ」
「はぁ……そんな感じ?随分規模が小さいけれど」
チエはため息をつきながら不満げに机に頬杖をつく。かなり心外な態度だ。
「エッ?何?例えで出しただけですケドー」
「んー、たこ焼きとかの夢はいつ見たわけ?」
「エー、確か1、2週間前位かなー」
「アニメの店は?」
「うーん、よく覚えてないけど、店ができる1ヶ月前とかかなー」
「あの、それもしかしてさぁ、たこ焼きは、今度食べに行こうねーって話してた時で、アニメの店は、今度新店舗入るんだってねーって話してた時じゃないの?」
「んん?話してたから印象に残って夢で見ただけって言いたいわけ?お店の様子とかもちゃんと見て分かってたしー」
「あーゆう店って、どこもそんな変わらないでしょ。それとも何か特徴的なものを具体的に見たの?」
「いや、夢だからそんなハッキリとはしてないんだけど……」
うーん、今日のチエは珍しくツッコミが冴えている。このままでは人類の危機が……。
困っている私の顔をチエが覗き込む。
「まぁ、百歩譲って予知夢が見れたとしてよ。先の事が分かっただけで、防ぎようとかあるの?」
「そう、それだ!思い出した!」
チエは私の大声に驚き、目を見開いて眉毛が上がる。
「あのー、私がまだ小学生の時の話なんだけどね、土曜日に家族で遊園地に出かける予定だったんだけど、急にお父さんが車で出張行くことになってさぁ、その前に何か嫌な夢見たの思い出して、泣いて行かないでって頼んだの。で、出張は延期にしてもらって遊園地行ったんだけどさ、帰ってきてニュース見たら乗るはずだった高速道路で大規模な事故が起こってて……もし、そのまま出張行ってたら巻込まれてたかもしれないって……」
チエは「バン!」と机に両手を付いて立ち上がる。
「リルー!凄いエピソード持ってんじゃん!何、たこ焼きの新作って?いらないでしょ、その話ィー。リルの予知夢のおかげでお父さん助かったんだね!」
チエの予想以上のリアクションにたじろぐ。そこまで感激されるとちょっと……。
「ま、まあそうだね……」
「あれ?なんか自信無さげだな」
「まぁ結果的にね……」
「結果的?まだ予知夢見たの初めてだったからとか、本当に交通事故が起きるとは思ってなかったとかー?」
「そ、そうだね、まぁその前に見た嫌な夢が交通事故だったかも確かじゃないんだけどね」
「え?」
「遊園地に行きたいから泣いただけだったかもしれないけど……」
「おやおや?」
「まぁ昔の事だから記憶が定かじゃないってところもあるし……」
「オイオイオイオイ!さっきのアタシの感激を返してくれ!良いように思い出創作しちゃっただけか!何だ?もっと新鮮で確証ある話をしてくれ」
チエは人差し指で私のオデコをグイグイ押してくる。
「そ、そうだよね、エーと……」
実はもう一つ頭に浮かんでいるエピソードがある。私がもじもじしているとチエが声をかける。
「その顔は何かあるな」
「んー、あるんだけど、ちょっと恥ずいっていうかー」
「今更恥ずかしがってどうする。今までの話も充分恥ずかしいぞ」
「ハァー……」
私は大きくため息をついた。諦めて話すしかなさそうだ。
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