ここのおコンコの恋物語

プロローグ

「えー……、と。　こほん！色々ありましたがっ、あらためて……」

　　ひと（人）　と　あやかし（妖）。

　文明が進み、とどまることなく繁栄しゆく『人』の世で。

　昔と比べ、その数を大きく減らしてはいるものの……、

　『それら』は現代（いま）でも、『そこ』に在（あ）る。

　おもてと うらと、世界は２面。見えてる世界と視えない世界、重なりあってて お隣どうし。

　そしてこれは、そんな世の中で ───

「飲み物みんな行き渡ってますー？　……って、たまも さん！？ ちょお、乾杯まで待ってくださいよ……！」

「嗚呼、また大きく……立派になったのう……ぐすっ、なぁ鴉の…………んむ？ どぉこ行きおった」

「みふ兄（に）ぃ、ケーキ置く場所ない。それ どかして」

こい を して、こい を しった、一匹（ひとり）の妖（しょうじょ）が。

　一途に、遮二無二（しゃにむに）。

　こい ねがい、こい ねがい、こいねがいつづける。

「う〜ん……。たぬ子さーん、席代わったげてもらえますですか……？」

「妹ちゃあん！お酒 も一本！ こっちに ちょうだ〜い♪」

「あ〜あ、いつの間にか こっちも飲んで…… 目ェ離しちゃダメじゃねっすか〜〜廻（めぐる）さん〜〜〜」　

　そんな……地味で、地道で。

「ふふ…… みなさん既に、こんな調子ですけれど。とにもかくにも、音頭だけ。お願いします、コンコさん」

「うん……。　それじゃ、皆！　ありがとうの───　乾杯のじゃ！！！」　

　ごく ありふれた（かけがえのない）、至極 ありきたりな（幸福に満ちた）、　物語。