第14話 最後の戦い

翌朝は皮肉なほどにからりと晴れていた。ヴォルディオの軍では夜通し宴会をしていたようで、昨晩よりは落ち着いているが、この後も三日三晩は続けるつもりらしい。しかし、また宴が盛り上がろうとしてきた夕方ごろになって俄雨が直撃した。宴は船の上で行っていたから、敵は皆ずぶ濡れだ。陸に引き返そうにもこの辺りの複雑な潮流が邪魔をして戻れない。この事態の裏では、アッシュが密かに軍を集め、出陣の準備を整えていた。



これから、アスターの最後の戦いが始まる。



雨の中、颯爽と小舟に飛び乗る。それに続いて他の兵士たちも次々乗り込んでいく。

冷たい海の上で、ここだけ熱気が溢れていた。

と、その時。小雨の合間にサッと一筋の光が差し込んだ。天使の梯子はちょうどアッシュの方へ伸び、彼女をパッと浮かび上がらせる。後ろに控えていた兵士たちには、アッシュの濡れた銀髪が光を反射して輝く様はさながら神のようだと思えた。


「皆、準備はいいか!これよりヴォルディオ率いる敵軍に攻め入り、先の二度の戦いで亡くなった者たちの仇を討つ!!」


「うおぉぉぉぉお!!」


アッシュの呼びかけに、兵士たちはめいめいに拳を突き上げて応じた。


ヴォルディオたちにとっては邪魔でしかなかった潮流を、アッシュたちは巧みに利用して驚くべき速さで近づいていった。ようやく接近に気づいたヴォルディオたちは慌てて迎え撃つ準備をするが、間に合わない。アッシュは敵船の間を身軽に飛び移り、次々と敵を倒していく。

辺りには矢が風を切り裂いて飛ぶ音と、甲高い剣の音が響く。

こうしてついに、アッシュたちはヴォルディオ軍を追い返すことに成功した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る