悪役令嬢、お嬢様の日常 ~婚約"覇気"って何ですか?~

星野 願

悪役令嬢に転生しました。

◆序章:悪役令嬢に転生しました。慈悲の心で生き抜きます


「悪役令嬢に転生しました!」


 その一言が頭をよぎったのは、生まれてから5歳の誕生日を迎えたころ。

 前世の記憶が目覚め、自分が「ゲームの悪役令嬢」として生まれ変わったと気付いた主人公。


「死刑エンド?いやいや、絶対回避です!」


 その日から、主人公は悪役としての運命を避けるため、日々を慈悲深い令嬢として全力で生き抜く決意を固めた。

 領地の改善に取り組み、貧しい者への援助、教育の充実など、次々と計画を実行し、領は繁栄の一途をたどる。


◆第一章:ゲームシナリオ通り、王子との婚約が決定しました


 順風満帆の領地経営。

 しかし、そんな矢先に届いた知らせ――国の王子との婚約が決定したという報告に、主人公は思わず顔を覆う。


「これ、ゲームシナリオ通りだわ……」


 渋々ながらも、波風を立てないよう婚約者としての役目を受け入れることにした。

 とはいえ、王子に対して積極的に近づく気はなく、むしろ適度な距離を保つよう努める主人公。


◆第二章:メインヒロイン登場!思わず尊さに膝をつく


 学園に入学し、ついに出会ったメインヒロイン。

 彼女はゲームの通り、庶民ながら清楚で愛らしい少女だった。


「可愛すぎて逆ハーレムも仕方ないわね……」


 遠目にその尊さを見守る主人公。

 しかし、どうやらゲームシナリオが微妙にズレている様子。

 王子や他のキャラクターたちのヒロインに対する反応が、どこか鈍い。


「おや、これは何かがおかしいわね……?」


◆第三章:舞踏会で婚約破棄を申し入れると、王子が謎の「婚約覇気」を発動!


 王が不在の舞踏会。

 シナリオではここで婚約破棄を宣言されるはず。


「おかしいわね。いつまでたっても婚約破棄されないわ」


 舞踏会も終わりそうなのに王子からの婚約破棄の宣言が無い。

 焦った主人公はついに自ら婚約破棄を申し入れる。


「申し訳ありませんが、この婚約、なかったことにしていただけませんか?」


 その瞬間、王子の目が鋭く光り、凛々しい声が会場に響く。


「婚約"はき"などはさせない!これが俺の婚約"覇気"だ!うおおおおお!」


 王子の周囲に見えるほどの覇気が燃え上がり、会場の空気が一変する。

 驚愕する主人公。

 さらに、メインヒロインまでもが「私も……!」と叫び、主人公に覇気を向けてくる。


◆第四章:愛の覇気に困惑するお嬢様


「ちょっと待って、何それ。知らないんだけど!」


 戸惑う主人公の前で、王子とヒロインが「あなたが必要だ!」と覇気を全開にして迫ってくる。

 どうやら、幼いころの主人公の行いにより、王子は私の慈悲深さにほれ込んでおり、ヒロインの家や領民たちの人生に大きな影響を与え、その感謝がとんでもない愛情となっているらしい。


「いや、私はただ平穏に生きたいだけなんだけど……」


 二人の覇気に押されつつも、主人公は冷静にため息をついた。


◆エピローグ:覇気、やめてください。私は平穏を求めています


 王子とメインヒロインの愛が燃え盛る中、主人公はただ一言、こう呟いた。


「なんやねんそれ……」


 その呆れた一言で会場は凍りつき、物語は幕を閉じる――かと思いきや、さらなる波乱が待ち受けているのだった。


◆次回予告:


 お嬢様に迫る、婚約覇気ラブコメ!

 果たして、主人公は平穏な日々を取り戻せるのか!?

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悪役令嬢、お嬢様の日常 ~婚約"覇気"って何ですか?~ 星野 願 @hoshino_negai

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