1話 どうやら俺の聖液には凄まじい力があるらしい
ちょっとしたハプニングもあったがその後も俺らはハグを続け、互いの温もりを分け合った。
そして経過すること数分、俺は名残惜しさを感じながらも彼女からゆっくりと離れると、再びテーブルを挟んで向かい合って座る。
「さて、んじゃ具体的な今後の予定を教えてくれるか」
「はい。まずは今の仕事を辞め、引っ越しをしていただきます」
「そりゃまた随分と急だな」
「そこに先程お話したあなたが死んではならない理由も関係してきますので」
言葉の後、リーリェはその理由とやらを話してくれた。彼女の話を纏めるとこうだ。
仮に俺が性的欲求を解放できずに死亡した場合、ダンジョンのレベルは永久に上昇し続ける。そうなった場合、いずれスタンピードが発生。もはやどうすることもできずに魔物に蹂躙されて日本は終わってしまう。
だからその対処として安全性の高い場所で、強者である護衛の側で生活してもらう必要があるらしい。
「……つまり俺の自由が無くなると?」
少しだけ複雑に思いながらそう問うと、リーリェは申し訳なさそうに目を伏せる。
「もちろん多少は不自由にはなるかもしれません」
「そうか……」
「……ただそこまで厳格ではないです。なぜなら雄馬様が要人であることは私含めたほんの数人しか知りませんから。そもそもそこまで命を狙われる心配はございません」
「ん? ならわざわざ護衛なんかいるか?」
「それは万が一暴漢などに襲われた場合の対処のためです。……あとは命とは別に、もう1つ注意いただくことがありまして」
「注意すること?」
「はい。それは精の放出相手についてです」
「……どゆこと?」
「これも預言でわかったことなんですが──」
「預言万能だな」
「──どうやらあなたの体液には、触れた相手の限界レベルを向上させる力があるようです」
「……は?」
「限界レベルはご存知ですよね」
「……まぁ人並みにはな」
限界レベルというのは、ダンジョンにおいてその人が到達できるレベルの上限のことだ。たとえば限界レベルが100であれば、その人は100レベに到達してしまえば、それ以上レベルが上がらない。
限界レベルが50の人ならばどんなに努力しても50までしか上がらないという感じだ。
これがまぁやっかいで、基本的に限界レベルを向上させる手段はない。
つまりスキル同様この限界レベルの高さもまた探索者としての才能という訳だ。
「あなたの体液にはその上限を引き上げる力があるのです」
「なぜ?」
「わかりません」
言ってリーリェは首を横に振った後、一拍空けて言葉を続ける。
「で、その体液の中でもあなたが性的興奮が高まった時に放出するもの、私たちはこれを聖液と呼ぶことにしたのですが」
「……? 同じじゃね?」
「漢字が違います。聖なる液で聖液です」
「あーそういう」
「とにかくこの聖液に特に強力な力があるようです」
俺の聖液? に特別な力ねぇ……。
「……まぁ正直ツッコミたいところは色々とあるが、それと護衛にどんな関係があるんだ?」
「聖液を含めあなたの体液には確かに限界レベルを引き上げる効果があります。ただその力はあまりにも強力。相手によっては器が力に耐えきれず、死に至る可能性がある。……故においそれと精を放出されては困るというわけです」
「だから護衛──という名の見張りをつけると」
「ちなみに護衛は若く美しい女性ですよ」
「あー、見張りであり、ついでに精の放出相手の適任者というわけか」
「そういうことです」
「……それなんてエロゲ?」
「私もそう思います」
言ってうんと頷いた後、リーリェは再度口を開く。
「──とにかく以上の理由によりあなたには私の申し出を受け入れていただく必要があります」
「拒否権は……ないんだろうな」
「申し訳ございません」
小さく頭を下げるリーリェ。その姿を見つめながら俺は脳内で色々と考えを巡らせる。そしてある程度整理がついたところで、俺はゆっくりと口を開いた。
「わかった。とりあえずその申し出は受ける。──ただ一つ宣言しとく。俺は種馬になるつもりはないからな。もちろんある程度は協力するが、特に初めては相手のことを知って、心の底から愛し合いたいと思った人とするつもりだ」
「そこはあなたを尊重すると約束しましょう」
俺の宣言に、リーリェは真剣な面持ちで頷いた。
──この会話から1週間後。早速俺の引っ越しが決まった。
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