平成ラジオノスタルジック

平成ラジオノスタルジック

　私が学生の頃。そのときはラジオをスマホのアプリで聞く時代になるなんて予想もしなかった。ラジカセにカセットテープをセットしてアンテナの位置を確認する。少しでも電波が乱れないように。

　始まった。毎週月曜から木曜は、声優をやっている方がパーソナリティをしている番組。だけど、土曜の今日はアニソンのランキングを流す番組が放送される。

　マンガ研究部のみんなより詳しくはないから、私はこのラジオ番組で何がトレンドなのかを研究する。それだけじゃない。テレビアニメの主題歌を、カセットテープに吹き込んで何度も聞くのだ。縦型の8㎝CDは1枚1000円。でも、学生に1000円というのは大きくて、そんなに何枚も買えるものじゃない。だからカセットテープというのは、私にとって大事なモノなのだ。

　10位からのランキング。私が聞きたい曲は今週何位にランクインしているだろう？　ランキングで上位になると曲の1番だけではなく、フルコーラス流してくれるから、それがお目当て。できたらフルコーラスをカセットテープに吹き込みたい。

　ドキドキしながら待っていると、いよいよ第3位。……来た、私の気に入っている曲。イントロが流れると同時に録音ボタンを押す。番組MCの曲紹介も入ってしまうが、贅沢は言っていられない。ずっと待っていたんだから。

　ラジオ番組が終了すると、本当はそろそろ眠る時間。でも、せっかくカセットにお気に入りの曲を吹き込めたのに、眠るなんてもったいない。勉強するとかこつけて、色々なお気に入りの曲が入ったカセットを聞きながらお絵描きをする。マンガ研究部なのに、絵は一番下手なんだよね、私。

　土曜日の深夜。こんな自由な時間が、私のお気に入り。

　カセットテープがなかったら、私の青春はきっと始まらなかっただろうな。