第6話 吸血鬼と夕暮れ
さて自室に帰ってくると、アルシュカは買ってきた小説を読み始めた。
そういえば今日、学校思いっきりサボっちゃったな。
まぁいいや。傷心ってことで。寝取られたし。
さて今のうちにカレーを作り置きしておくことにした。にんじんとかじゃがいもとか事前に切ってあるセットが食品売り場には売ってある。
これを鍋に突っ込み、一度茹でる。
もちろん肉もいれる。安いから鶏肉にした。
茹で終わったらルーを溶かして完成。
ずいぶん簡単だ。
まだご飯は炊けてないので、実家が入っているサブスクのアカウントでアニメでも見ることに。最近のサブスクって便利だよな。
機材でテレビに映るようにしてある。
アニメが始まるとアルシュカも隣に座って見始めた。どうやら気になったらしい。三角座りなのはなんなんだ。
「これはなんのアニメだい?」
「今期の異世界アニメだ」
「ふぅん……」
異世界モノに興味があるのかしばらく食い入るように見るアルシュカ。
そうこうしている間に米が炊けたので、カレーを用意することにした。
「よし、食うぞアルシュカ」
「わーい!!」
美味しくカレーをいただくアルシュカ。
それを見ているとなんだか嬉しくなってしまう。
「そういえばおまえ、血を飲まなくてもいいのか?」
「ああ、僕の場合は特別な時以外必要ないよ。パワーを上げるとか、負傷している時とかさ」「ふぅん、あんまり吸血鬼っぽくないな」
「まぁ最近の吸血鬼はそんなモノだよ」
最近の吸血鬼ってなんなんだ……。
たしかにアニメとか漫画じゃそんなに血を吸わなかったり、日光に当たっても平気だったりするが……もしかして昨今の吸血鬼を反映してたのか? あれ。
飯を食べ終わるとゲームをすることにした。
1人用ゲームしか持ってないんだよな。
お金が入ったらなんか買わないとな。
というわけで俺がRPGを始めるとやっぱり食い入るようにアルシュカがそれを眺めていた。
物珍しいようだ。
「そうだ、アルシュカ。俺バイトしようと思ってるんだけど」
「えっ、なんで?」
「おまえの生活費とか稼がないとダメだろ……」
「ああ、そりゃそうだね。……僕の催眠能力で信者でも作ろうか?」
「あんまり暴れたら吸血鬼ハンターに見つかるぞ……」
それもそうだと黙ってしまったアルシュカ。
ピコピコという音だけが部屋に響き渡る。
俺は沈黙に耐えられず、アルシュカに話しかけることにした。
「……そういえばなんでわざわざ日本に来たんだ?」
アルシュカは妙に辛気臭い表情になった。
眉間に皺を寄せている。
「ちょっと会いたい人達がいてね。ああ、でも今は気にしないでいいよ」
「吸血鬼ハンターの方が危険だもんな」
「そういうことさ」
そんなことを話しながらRPGを進める。
明日は学校に行って……バイトを探さないとな。まぁ体も強化されたっぽいしシンプルな肉体労働をやってみるのもアリか。
時間も時間なので、風呂を沸かし入ることに。そういえば吸血鬼って流水が苦手だったと聞くけれど。
「アルシュカ、おまえってシャワー大丈夫なの?」
「流水かい? あんなの原初の吸血鬼……それこそ血溜まりオバケぐらいだよ、弱点なのは」
「そんなのもいるんだ」
「僕も見たことないけどね」
吸血鬼って色々いるんだな。
俺たちの世界ってもしかしたら薄氷の上にあるのかもしれない。
「あ、先入るか?」
「うむ」
というわけで先にアルシュカに入ってもらうことに。
こういうのはレディファーストな気がするしな、うん。
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