なんだよこの機械たちは
姉がVtuberを進めてきてから早3日。
Vtuberを見始めたが…これがなかなか面白い。
まだまだにわかだが、多分ハマるだろう。
ピンポン
「どっひぇー!?」
聞き慣れないチャイムの音に変な声を上げた俺は赤くなった耳を冷ますように冷たい手で抑える。
急いで玄関のドアを開ける。
「おはようございます〜!宅配でーす。ここに貴方の名字を書いてください!」
「はい…。」
さらさらと、「陽太」の文字を書く。
「ありがとうございます!それでは!」
ニカッと、白い歯を見せた暑苦しい配達員はトラックの方へと走っていった。
はぁ。
姉さんが送った機材がとうとう届いたのか…ってか本当に送ったんだ…。
パカリ
大きなダンボールを開けてみると、様々な機材が入っていた。
機材に紛れて封筒が入っており、その中には丸っこい字で、
「届いたら教えてね!色々説明するけん!」
と、書いてあった。
「俺から連絡するの嫌なんだけど。」
しかし、どれが何なのかがさっぱりわからない。
いや、流石にゲーミングPCとか、マイクはわかるが…
長方形の形をしていて、ツマミや、ボタンがついている変な機械から、ちっちゃいカメラなど、使い方がわからないものもある。
「すぅ…はぁ…」
小さく深呼吸をし、震える人差し指を気合で抑え、なんとか姉さんに電話をつなげることができた。
「もっしもぉぉぉし!!届いた!?どお!!これ全部で17万もしたんだからね!!まぁ、可愛い弟のためなら安い出費だけどねぇぇぇ?????」
17万!?!?
こんなやつに17万も出してくれる姉の優しさ…泣けてきた。
「あ、ありがとう姉さん…。けど、本当にこんなやつにそんな大金はたいていいの?」
「あたり前田のクラッカー!さっきも言ったけど、昇は可愛い可愛い弟なんだから!まぁ…前までは連絡してなかったけど、それもこれも全部今回のことのためだから!お金稼いでて忙しかっただけだから!だから、絶対に明音ちゃんのこと、嫌いにならないでよねー!!」
あぁ…本当にいい姉だ…。
陽キャ成分を全部奪われて、変に嫉妬していた自分が恥ずかしい…。
「嫌いになんかならないよ…!なれないよ…」
顔良し性格良しおまけにクズみたいな弟にも甘く接してくれる。
こんなの…
惚れてまうやろがーい!!
「さてさて!早速説明と行きましょうかね!あ、そういえば昇の部屋って吸音素材貼ってあったよね?」
「うん。ゲームで負けたときに発狂できるように一応貼っとるけど…。」
「よしよし!じゃあ安心安心!」
前にFPSで見事にヘッドショットを決められ、おまけに煽られ、台パン&発狂をしたところ、近くに住んでいる人から何回もチャイムを押されたことがある。
この出来事以降、すっくない貯金を切り崩し、大好きなゲームができるよう、吸音材を貼ってもらっていた。
自業自得だけど、今後はこんな怖い思いはしたくない。
「んじゃ、早速、メインのゲーミングPC!」
ガサゴソと四角形の黒い物体を取り出す。
「私もよくわかんないけど、あったら超いいらしい!ってかゲームをする上で必需品らしいよ!」
「へ〜」
もともとあった黒を基調とした青いラインがかっこいいゲーミングデスクの奥の右足元に置いておく。
「次はマイク!」
「おう」
またもやガサゴソと卓上マイクを取り出す。
四角っぽいフォルムが特徴的な黒いマイクだ。
「なにこれかっこいい!」
「だよねー!!しかも、それ電源をONにすると、あみあみの部分が光るんだよ!!いまは充電がないから光らないけど、使うときに見てみてね!」
「すげー!!姉さんいいね…!」
「もっと褒めろーって言いたいけど、まだまだあるからどんどん行くよ!」
2時間後…
「…すご」
黒を基調としたかっこいい配信部屋ができた。
「姉さん天才。」
「ふはは!ちょっと部屋の様子を見たいから、ビデオ通話にしていい?」
「いいよー」
一旦電話が切られ、再び着信音がなる。
今回は心の準備ができていたので、変な声を出すことはなかったが、心臓がバクバクとなっている。
「はーいかけ直し完了!久しぶりに昇の顔を見られて超嬉しい!!相変わらず寝不足?ちゃんと寝てよねー!」
「はいはい。寝ますよー。」
「部屋の様子見せて!」
そう言われ、外カメにして、部屋の様子を見せる。
「え、やっばぁ!!!」
大きな目をキラキラさせて、ポニーテールを振り乱している興奮している姉さん。
久しぶりに見られた顔に、少しだけ口元を綻ばせる。
「流石私。センスいい!全体的に黒と青がかっこいい…!ちゃんとマイク光ってる!!ゲーミングPCも動いてるし、なによりトリプルディスプレイがかっこいい…!!一番左の端っこが縦なの超意識高くて好きすぎる♡」
うっとりとディスプレイを見ている。
しばらく楽しんでもらいたいが、俺は1つだけ気になることがあった。
「姉さん、おれのアバターどうすんの?」
「あ…考えてなかった。」
…終わったかもしれない。
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