第7話

「なん、で…」


「知りたきゃついて来い。教えてやる。但しタダでとは言わねぇ。」


そう前置きし、男は私の顎に手をかけた。










「俺の妻となって復讐するか、今此処で死ぬか…どちらか選べ。今すぐにな。」







此処で死ねば、母と同じところに行けるかもしれない。

だが、殺されたとなれば話は別だ。



しかし、この男は狼月組。

キャバ嬢をしていれば、客として関わることも0ではない極道は、私にとって嫌いな部類であり、関わりたくもなかった。たとえ街を守っているとしても。


極道の男の妻になる。

それは、自分からその世界に足を踏み入れると言うこと。

だが、嫌いな世界に住む男の妻にならなくては母の無念は晴らせない。






少し考えた後、決めた答えを呟く。

「ふく、しゅう。」



目の前の男は満足したように笑みを浮かべると、私の唇に自分のそれを重ね合わせた。


「俺は夜白 豹牙だ。妻になるって決めたんなら……お前の味方になってやる。」










男…もとい豹牙に連れられ、車に乗せられた。

このまま連れ去られるのかもしれない。

ぼんやりとそんな事も考えたが、その考えは打ち消した。



目的ができた今、霧がかっていた頭が冴えていくような気がした。



—————お母さんの仇は私がとる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る