失った日

第1話

それは雨の日だった。


雷雨に見舞われる中、病院で1人の女性が息を引き取った。

その横で泣き崩れたのは、息を引き取った女性の娘。


雨の中走ってきたのだろう。

全身がずぶ濡れなのにも構わず、ベッドに縋り付くようにして、泣き続けた。








しばらくして、泣き崩れていた娘は徐に立ち上がり、ふらふらとした足取りで扉に向かうと、外で待っていた医師や看護師達に頭を下げた。


「取り乱してすみませんでした。……処置を、お願いします。」


息を引き取った女性の名は、飛槻ひづきかえで


そして残されたその娘、紅葉あげは

たった2人きりの家族だった。



楓の死因は、車に轢かれた事による全身打撲。

そしてその原因を作ったのは、彼女の夫であり、紅葉の父である男だった———。

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