異世界で栄養士活動、始める。
あかつき らいる
ドラゴン族に仕えるコボルトたちからの相談
ドラゴン族に仕えるコボルトたちからの相談です。
「ご飯の献立を考えるとき、組み合わせる栄養素がよく分からなくて野菜を適当にだしてしまい、あとでご主人様に怒られるのです」
「私どものご主人様は、それはもう健康志向でして、肉食中心ではありますが、野菜も雑穀もきちんとお食べになるのです」
ふむふむ。私は頷きながら、メモを取る。一通りの話を聞いた私は、アドバイスを返す。
「献立(メニュー)は栄養素で考えるのではなく、色で考えてください。ご飯やパンは白っぽい色をしていますよね。だから色は「白」になります。汁物は具材に左右されます。味噌汁は茶色ですね。コーンポタージュスープだったら「黄色」です。グリーンピースの冷製スープ類は「緑色」で、ビシソワーズ (ジャガイモの冷製スープ)は「白」といった具合です」
「はい。栄養士(せんせい)ー。サラダはどうなりますか?」
「サラダも色で考えます。3色から5色のカラフルな色で考えるのが一般的かな。圧倒的に緑色が多かったら、そこへ鮮やかな赤色のトマトを加えてみる。スライスした玉ねぎは白、これで3色ですよね?」
コクコクと頷くコボルトたちを見ていて、モフりたくなってグッと我慢するが、その姿に癒されそうになる。
「では、あと2色はどうしますか? 黄色いスクランブルエッグをサラダとともにお皿に盛り付けてみましょうか。そこへスライスチーズをちぎって、サラダと混ぜ合わせてみましょう」
「味付けはー?」
「味付けはシンプルにしましょうね。ドレッシングの基本でもいいですし、ノンオイルドレッシングでもいいですよ」
「サラダは温サラダの方が栄養が詰まっていていいかな。作り方は、それぞれの野菜をざっくり切ったり、ちぎったら、耐熱容器に入れて蒸すのです。もしくは電子レンジで30秒以上温める。しんなりしたらでき上がりで、食べる直前にドレッシングをかける」
「はい、栄養士(せんせい)-」
一番手前で懸命にメモを取っていたコボルトが手を上げます。
「なんで温めるのー?」
「ああ、それはね。食べやすくするのと、消化にいいからです。野菜は温めるとうまみ成分が甘み成分に変化して甘くなるんですよ。甘いのと、甘くないのとでは、どちらが好きですか?」
「「甘いの!」」
「ぼくもっ」
「あまいほう」
「おいらも、あまいほうっ」
「そうでしょう。甘いのが好きですよね。口から体内に入った食べ物は、第一の消化酵素でもある唾液と混ざり合い、胃に落ちていきます。胃では体温と同じか、もしくは少し熱いぐらいの温度を保っていて、食べ物はそこでドロドロに溶かされるのですが、入ってきた食べ物が冷たいと消化酵素が出にくくて、胃もたれの原因にもなってしまいます。そうならないように、体中の血液を胃に集めて、胃を温めます。それをすると私たちは必然的に眠くなります」
ここでのどが渇いたので、お茶をいれて飲みます。
「胃を温めるだけに集められた血液は、本来だったら、体中へ水分や酸素を運んだりすることに使われていたはずなんです。話がそれ気味ですが、こういう訳で、冷たいものよりも少しでも温かいものを食べましょうね」
コボルトたちにはちょっとしたお土産を持たせて帰らせる。時計の針はもうすぐ四時をさそうとしていた。夕食の準備の時間だった。
ああ、お土産は小さな冊子だ。
その冊子には簡単で美味しいサラダのレシピが書いてある。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます