探しもの

苺桃 栃銘

第1話いつも

確かに好きだった。容姿はまぁまぁかっこよかったし。性格も悪くはない。

 だけど、内側が合わなかった。

 付き合って一週間で初めてケンカした。

 そこから少しずつ増えていって、多い時で一日に三回もケンカした。その度にどっちかが折れて、結局何も解決しないで仲直りする。 そんな感じの交際が半年続いた。

よく続いたと思う。続いていたのは、本当に好きだったからだろう。

 そう、〝好きだった〟今はもう冷めてしまったんだ。

 理由なんて分からない。けど彼と居ても何も感じなくなってしまった。それだけなんだ。最初は迷った、また好きになりたかったから。彼のことをよく見るようにして、好きなところを必死に探した。

 でも嫌いなところばかり気になるようになって、また好きになることはなかった。今日もまたケンカした。原因はいつもの通りしょうもなくて、どっちが先にこの曲を聴いたかとか、冷静に考えればどうでもいいことだった。 

 私はもう彼を好きではない。そう考えるとケンカしてるのもバカバカしくなって。このケンカは私が折れた。そして決めた。別かれることを。 

 今日、彼はバイトだった。いつもの道で待っていよう。そして、伝えよう。彼と歩いたいつものあの道で。




 バイトが終わった。いつもの道で帰る。

そういえば、今日もケンカした。いつも、しょうもない事でケンカしてしまう。入り混じった感情は濁った水のようで、シンプルなのにぐちゃぐちゃで離れられない。

 こうやって上手く行かないときに、いつまでも過去の君に縋ってってしまう。その感情は何だったのだろう。表せない感情がぐるぐるとめぐりる。僕は、その感情も愛したいから。君と歩いた道を踏みしめるように一歩ずつ歩く。隣に君がいなくても、僕は確かに君を感じていた。

だから歩けていたんだ。

 しばらく歩きいいて、ちょうど交差点に差し掛かった頃だった。そこは人通りも多く、22時だというのに未だに明るい。

 その人混みのなかで君は僕を待っていた。僕は嬉しくなって、早足で君のもとへ行く。その瞬間に全部終わったんだ。

 君はゆっくりと口を開いた。言葉一つひとつをはじめは理解できなかった。思考が現実に追いついたときには、僕の中の時間が止まり、頭が真っ白になる。

 投げかけられた言葉は、誤解のしようもないほどに真っ直ぐで、冷たかった。 

 『別れよう』

 好きでいてくれてると思っていた。いつものケンカだと割り切っていた。でも君は、僕を手放した。 もう、二度とその手を繋ぐことはできないのだろうか? 





『え……。何でだよ。何で急に……ねぇ、何で…っ答えろよ!」僕は真っ白な頭を今日1で回転させながら必死になって喋った。いい言葉なんて見つからずに、また君を攻めてしまう。伝えないのはそんなことじゃないのに……ありがとうって大好きだよって、言いたいのに……。

 けれどやっぱり、言葉を間違えしまって。また、傷つけちゃたよ。だから、

 「チッ……………そういうとこ。そうやって、いつもいつもあたしを攻めて。自分で考えようともしないし、ちょと褒めるとすぐに調子のって、失敗したら泣きついて来るし。……最初は、それが好きだったよ。頼られてるんだって思ってた。期待されてるって信じてた。でも…………それはあたしには重かったの…………。ごめんね、貴方の理想にはなれない。だから…………別れよう?」

 突き刺す様な言葉に胸の奥がじわりと充血していく。こうやってまた、大切なものを失っていくんだ。最後は……最後くらいは、言わないと……そう考えているうちに。

 「……なに?いつまで黙ってんの、いつもみたいにはっきりいえばいいじゃん。どうせ最後なんだから」 

 言葉の刃向けられて、ついカッとなってしまう。そしてまた……

 「じゃあ……じゃあ、言ってやるよ!好きだって言って来たのはお前じゃん、いまさらなんだよ…かってすぎるだろ…」


 「だから別れようって言ってんの。あたしはもう、貴方といる時間が楽しくない。貴方だっていつも、あたしとケンカして内心ではあたしのことなんか好きじゃなかったんでしょ?」 

 『……違うよ、好きだよ……今も、いままでも、これからもずっと…好きでいたいよ。その言葉は、鉛よりも重くて僕の口から、君に届くことはなかった。

 結局、最後までこうやってケンカして、最後なのに本心を伝えられなくて、最後だったのに、さよならもありがとうも言えなかった。

 そして最後だからか、それがとてもつらくて君の目すら見れなかった。最低だな、僕って。

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