朝には零れるくらいの愛を

苺桃 栃銘

第1話 現実が壊れる前に、

 『生きづらい』最初にそう思ったのはいつだろうか。学校にも行かなくなり、退屈を埋めるようにSNSやゲームに浸かる。きっと私は理想を上書きしていくリアルに飽きたんだ。ネットは楽しい、何よりもリアルからログアウトできる感覚に陥るところが良い。

 そういえば最近聞いた言葉がある。「自殺する人は天国に行きたかったわけではない、ただ今ある地獄から逃げ出したかったんだ」

 死んだ事も無い奴がテキトーに語ったような薄い言葉に死んだ事もない奴が共感する。そんな言葉でも共感してしまうのは、私自身がテキトーでペラッペラな人間だからだだろう。

 決して今が辛いわけではない。辛かったのは今までだ。それでも、『死にたい』そう思ってしまうのは、また失ってしまうのが怖いから。

 ベランダで雀の鳴き声が聞こえる。それと同時につまらない思考のミルフィーユがカーテンから零れた朝日に溶かされていく。

 『ああ、また朝がきたのか。』

 べったりと張り付いたクマを擦りながら、私は支度する。今日こそは学校に行くためだ、部屋のドアノブに手を掛けてただ扉を開けて外に出るだけ。なんてことはない簡単な事だ。

 なのに、ドアノブを握ると震えと涙が止まらないのだ。体が熱い。真冬の布団の様に倦怠感が纏わりついて離さない。

 『今日も今日もだめだった。』

 明日には抜け出せるのだろうか。つまらない、この狭い世界から。そんな考えを巡らせて、そしてまた目を閉じる。

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