義妹とその母によるNTRのエチュード

水鏡月 聖

序文

――お願い、蒼君。茉莉を寝とってほしいの。


 芹香さんはそう言った。


――寝取る。ネトリ。NTR。


「それは倫理に反する行為ではないとあたしは思うわ」


 と芹香さんは言う。


「これは非難することはできない。純粋な愛、純愛だと思うわ。だけどそれを、好ましいと思っていない人間もいるわ。あたしと、蒼君。そしてその二人が手を取り合ってその愛を勝ち取ることも誰からも非難されるようなことじゃない。それもまた純愛よ。

 要するに茉莉がこの世で誰よりも好きな人が蒼君になればいい事なの。

すべては倫理に反しない、純粋な愛の結末」


 ――純粋な愛。純愛。


 そうだ。それこそが純愛なのだ。愛する人がいて、その人を振り向かせるための努力をする過程。それもまた純愛。


「俺に、できますかね」


 そんな言葉の裏には、当然君ならできるというような励ましの言葉を期待していたし、当然もらえると思っていた。だけど……


「たぶん、今の蒼君には無理ね」


 芹香さんは厳しい言葉を言い放つ。


「あ、ええっと」


「じゃああえて聞くわね。蒼君は何だったら勝てるの? 包容力だって経済力だって足元にも及ばないわ。強いて言えば若さかしらね。でも若さっていうのは強みかな? 経験の低さを物語っているだけじゃないの? それに茉莉はそれなりに経験を積んでいるわ。蒼君はどうかしら? 茉莉を寝取ろうとしたところで、蒼君のテクニックで満足できるかしら? ふふふ、厳しいことを言ってごめんなさいんね。でも、寝取るということはそういうことなのよ。蒼君、そういう経験はあるの?」


 立て続けに浴びせられる辛辣な言葉に心はすでに折れそうになっていた。俺に勝てる要素なんてない。それに俺は童貞だ。壁に耳をあてて遠くの茉莉の声に一人自慰をすることが関の山の情けない人間だ。


「俺には……」


 自信を無くしかけてうつむく俺を芹香さんは優しく抱きしめてくれた。


「だいじょうぶよ。だいじょうぶ。誰だって初めから上手にできるわけじゃないわ。安心して、あたしがちゃんと教えてあげるから」


 言っている意味が解らなかった。いや、それは嘘だ。言っている意味が解らないことにした。わからないから、不可抗力としてそうなってしまったのだと自分自身に言い訳をするためだ。俺の頭の中を占めているちんこがそうささやいたのだ。


 だから俺は、自分のパンツの中に滑り込んでくる芹香さんの手を振り払おうとはしなかった。『騙された』『そんなつもりはなかった』を言い訳にできるようにあえて遠くを見つめ、されるがままにその手を受け入れた。


 芹香さんは下着の中で俺のものを握り軽く上下に動かす。ものの数分もしないうちに我慢の限界を迎えた俺は下着の中に、芹香さんの手の上に精液を勢いよく放出してしまった。


「あらあら、さすがにこんなじゃあ、茉莉を満足させてあげることはできないわよ」


「す、すいません……」


「いいのよ。誰だって初めからうまくできるわけじゃないんだから」


 芹香さんは俺をベッドの上に押し倒し、精液でべとべとになってしまった下着をずり降ろした。そして枕元のティッシュを数枚抜き取り俺の下半身を拭いた。それは恥ずかしいことではあったものの、どこか安らぎを感じるものでもあった。言い訳をするのであれば、それは母親の愛情だったと言っていい。俺の記憶に母親はほとんど残っておらず、想像上の優しい母親というものはきっとこうであったのではないかと解釈することにした。その安らぎの中で、射精を終えたばかりの俺の下半身は再び反応を起こした。


 芹香さんは、それをやさしく口に含む。ベッドの上で頭を上下に動かしながら、芹香さんは器用に衣服を一枚ずつ脱いでいった。すべての衣服を脱ぎ終わるころに俺は

一度芹香さんの口の中に射精し、芹香さんはそれをティッシュの中に出した。


 そうするとまた何事もなかったように芹香さんは口に含む。そして俺もまた、何事もなかったように反応を起こす。


「これくらいやってちょうどいいくらいかもね。でも、さすがにすごいわ。若さ、というものはそれなりに武器にもなるものよ」


 こんなところで終わるはずがない。それを理解している俺は自分だけがまだ着ている上半身の衣服を全部自分の意志で脱ぐ。俺の頭の中は、完全にちんこに支配されてしまっていた。



 何が正しいのか。何が間違っているのか。


 誰を愛しているのか。誰を憎んでいるのか。


 そんなことはどうでもよかった。


 俺の頭の中を占めているその物質がもっと先を、もっと先をと求めている。


 ただ一つ言えることは、これはすべて愛する茉莉を手に入れるための努力の過程なのであり、それは純粋な愛。純愛に他ならないのだ。


 

 芹香さんが俺を根元まですっぽりと飲み込み、なされるがままに成した。

 それが良かったとか、悪かったとか、気持ちよかったとかそうでもなかったとか、そんなことは大した問題などではなく。脳みそが支配するままにそれはなされたに過ぎない。


 一通りの作業。いや、レッスンを終えて裸のままで横たわる彼女を見つめながら手でその体をなでる。すべすべとしてやはりそれが父と同じ年の人間のものとは思えなかった。あるいは、自身の行為を肯定するために、そういうふうに脳が補完してしまっているだけなのかもしれない。

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