第11話 深まる知見

「「はあああ!?」」




(゜o゜)




大きな声が指導室で鳴った。




「え?!あのクラブやめてきたんですか?めちゃくちゃ相性よかったじゃないですか!」


「お前がこのクラブ来んの?!マジ?」


(゜o゜)




上からものをいうように提案してくるリオン




「どうするの?参加許可するの?しないの?してくれないと神器について何も教えないぞ~」




いやらしい提案に顔面を引きつるカイリと朱莉。




「い、いやいや、参加していただいたら百人力だし、楽しくなることはわかってるんだけど、、、」




カイリはゆっくりと横を見る。予想通り朱莉はすごい顔をしていた。




「どう?朱莉は」




「、、、なんかすっげー嫌」




えぇー、っという顔をするリオン。なんだかんだ認めてくれると思っていたようだ。




「違うクラブだったからまだしも、おんなじクラブ入ったらすっげーめんどくさそう。めっちゃ腹立ちそう!」




大切なことだからか二度ぶった。言葉で。




パンチが強烈だったのか見せたことのない表情をするリオン。




「朱莉、、、私のことそう考えてたのか、、、じゃあ私は帰るね?元のクラブに。そしてそのまま能力に


ついても神器についても知らずに何か問題起こしてめちゃくちゃ怒られ」




希望書を回収し、グダグダ言いながらカタツムリの速度で出ていこうとするリオンの上着を本当に弱くつかもうとする朱莉。




「え?なに!?止めてくれるの!?」




その一瞬のスキを見逃さず、目を輝かせて無理やりな展開に持って行った。




「カイリ君!朱莉もどうやら私をこのクラブに入れたいみたい!!OKだよね!」




いつの間にか遊里はすでに許可を出しているようにそう話し参加希望書をもう一度カイリに突き付けた。




遊里はこの寸劇のような光景をご満悦にニヤニヤと眺めていた。




リオンはカイリに手を差し出しもう一度言った。




「よろしくね?」






少し迷った末に選択は一つしかないと決心をした。




「よろしくお願いします」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


クラブ参加希望書にサインしている一瞬にもう取っ組み合いが始まっていた。




「お前のその服ダサくね?もうちょっと派手なの着ろよ」




「はあぁ?和洋折衷よ!折衷!そっちこそ赤い服ばっか。クスクス、おこちゃまでしゅかね~」




「んだとコラー!」




「キャァー、赤ちゃんが立ったー!!」




リオンが思っていたキャラとギャップがありすぎるのか本当に同一人物なのか困惑するカイリ。そんなことを考えているうちにも二人はお互いの顔を引っ張り合っていた。




(ちゃんと服引っ張らないのえらいな、、、)


 ( *´艸`)




二人の争いを止めるように手を叩いて席から立った。




「はい、手続き終わり!それで、神器について詳しく教えてくれませんか?リオン、、、さん?」




朱莉の顔から手を放し、カイリのほうを向いた。




「リオンでいいよ。それか東日本名の理央か。まあ、何でもいいよ呼び方は。それじゃ改めて神器について説明しようかな。」




椅子を上座の場所へ移動させ、足を組んで説明しだした。




「元素族だから少し知ってるってだけで、そんなに奥深くに眠る話は知らないし、今から話すことも所説ありって感じだから。そこんとこよろしく。」




残りの三人も席に着き、上の話に了承して真剣に聞き始めた。




「そもそも神器ってのはエネルギーが固まって作られた武器のことで、作ったのは結晶人。ユナさんは携わってないらしいけどそこらへんは不明。神器の特徴は何より一つ一つ能力があって、それは所持者のエネルギーを使わないってこと。一番有名なのはもちろん西桜さいおうの白神しらかみ 観唖かんあの持つ鎌白れんぱ。あれは所有者に高速移動と好きなとこに斬撃を出せる能力がある。だから多分、カイリ君の短剣にも何かしら能力があるんだろうね。武器が勝手に浮くこと自体あり得ないからそれも能力のうちかも。そんな感じの神器が今世界には五つあるといわれてる。それが作られた理由は色々語られてるけど一番は均衡を保つためだとかなんとか。




多分みんなが知りたい一番の謎。神器の危険性について。神器は人間に仕えてる場合そんなに危険じゃない、、、らしい。まあ、つまり器が保管してるか、観唖みたいに神器と契約を結んでるときは安全ってわけ。でもそうじゃないとき、神器が統治下にないときは勝手に暴走しだすんだってさ。それで過去にとんでもない事故が数件起きてるとか起きてないとか。さっき器がカイリ君に死なないでねって言ったのはカイリ君が死ねば体の内にある神器が居場所を失って暴走する可能性があるからってことだと思う。まあ、コピーが完璧なのかもわからないし、死んだらどうなるかもわからないから多分憶測ってことなんだろうけど」




知らない情報と神器の恐ろしさを淡々と説明され開いた口がふさがらないカイリと朱莉。遊里は少し驚いていたがすでにいくつか知っているようだった。




「そ、そんなおぞましいものをコピーしちゃったの僕!?こ、こわい」




「思ったよりも深刻な状況だったんだな、、、こえ~」




朱莉が不思議に思ったことをリオンにぶつける。




「ってか、なんでそんな重要な情報オレら知らねえんだよ。事件とかになってたら普通知ってるだろ?オレはバカだからまだしもカイリは知ってていい情報だろ?」




リオンが肘を机に付き説明する。




「どうなんだろ、東日本でもおそらくほとんどの人が知らないんだよね~。西日本では教育が進んでないがゆえにほとんどの人が知らないのはわかるけど、、、まあ、色々と隠す意味ってのがあるんだろうね」




「そんなこと全然知らなかった、、、まだまだ知識が足りないや」




自分の学不足を反省するカイリ、それを慰めるように言った。




「しかたないよ。東日本じゃ西日本について大会くらいでしか知見を深められないもん。東日本もこれ以上、国民を不安にさせたくないんだろうね。最近は天使のニュースで持ち切りだし。みんなが知らないってことは聖教会が頑張ってんるってことにしとこ」




そう言われ、少し安心したのか胸をなでおろす。




「なるほどなー。神器ってのは奥深いし、危険ってことはわかった。」




朱莉がそう発言すると、頭に入ってないんだなー、と三人全員がそう考えた。




「「はあー」」


 ( 一一)




「お前らなんだよその顔!バカって言いてえのか。うぜえー。まあいいや、そんで?結局カイリのコピーの実験はどうするんだ?」




その言葉を聞くや否や、リオンは待ってましたと椅子から立ち、みんなに外に行こうと指さした。




「よ~し!じゃあそろそろ私の能力コピーできてるか見に行こ!」




腕を使い椅子から這い上がる朱莉。




「なんでそんなウキウキなんだよ」




「だーって元素族の能力だよ?コピーできたらめちゃくちゃ面白いじゃん!」




その言葉にカイリと朱莉、遊里までもが足を止めた。




「そ、そうじゃん、、、リオンさん元素族じゃん」




ガチャ 外に出るリオン。




「お前、、、これコピーできたらどうするんだよ」




室内の三人に対し、外にいるリオンはワクワクしていた。




「や、やばいかな、、、」




「あの伝統を重んじる元素族だぞ?もしコピーできたら、、、やべーことになるかもな。にしてもなんであいつあんなワクワクしてんだよ。」




少しずつだが外に出始めた三人。改めてカイリはリオンに聞いた。




「ほ、ほんとに試していいんですか?まだ、コピーできてないってことにできますけど?」




ほんのり既にコピーができていることを察しているカイリ。それに対し、リオンは少し笑顔を崩し、真剣な顔で言う。




「大丈夫。私、伝統とか継承とか、そういうの興味ないから。もちろん出来ても誰にも言わないし。気軽に行こ!実験だよ~実験~」






不安に思いながらも、リオンが普段行う地面に手をつくポーズを取る。地面にエネルギーを流すイメージを呼び起こし、力を込めていく。




パラパラ




周りの砂がゆっくりと空を舞う。案外あっさりとできたからか、カイリ含め、全員の目は点になっていた。




「できちゃった、、、」


「まーじかよ、、、」


「すっごい!家族以外でできる人初めて!」


 (;'∀')




気まずいのか下を向くカイリを腰を曲げて視線を合わせるリオン。




「案外しょぼいものでしょ?伝統なんて」






その夜、自分の部屋でリオンの能力研究を行うカイリ。




(元素族の能力、ほんとに特殊だなー。朱莉の衝撃とかとは使い方が全然違う。動かすだけでも難しいや。)




ある程度ノートにまとめ、ベットに身を放り出す。




「はあーーー。」




(だめだ、器さんの警告が頭から離れない。なんで能力なんて使えるんだ?そもそも。心当たりがあるとするなら、、、)




そのまま目を閉じた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


暗い部屋の中、デスクにおいてある画面が光を放つ。




和服の少女と、仮面を付けた研究者のような白い服を身にまとう人物が、その画面から二日前の大会の様


子を見ていた。カイリの競技だ。




仮面を付けた人物が口を開く。




「素晴らしいと思わないかい?、、、ようやく完成した。ここまで実に長かったが、、、終わらせよう、この物語を。」




椅子を回し、立ち上がっては暗闇の中に一人歩いていく。




和服の少女はそれについていき、目を見開く。




「もう少しですね。ミル様。」

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