キミの記憶に居続けたい
沙花叉イヌワシ
SCENE1
~4年前~
「春から別々になっちゃうけどあたしの事忘れちゃ嫌だよ?」
「忘れるわけなんか無いよ。この街でまた会えるの待ってるから。だから必ずまた会おうね。」
~現在~
今日は高校の入学式。緊張のせいか眠れないまま朝を迎えてしまった。ベッドから起き上がろうとすると家の階段を駆け上がってくる音が聞こえる。
「遥也今日入学式でしょ?早く準備しなきゃ…ってひどい顔してるよ。早く顔洗って朝ごはん食べなね。」
「あぁ。楓姉さんか。すぐ降りる。ありがとう。」
姉の楓だった。俺とは2つ離れていて高校3年生。両親は朝の仕事が早いのもあって登校前のこの時間は姉と俺の2人だけになる。昔から面倒見のいい姉だ。ベッドから出て顔を洗いリビングへ向かう。姉が朝ご飯の準備をして待っていた。
「遥也も今日から高校生なんだから少しはお姉ちゃん離れしなさいよー。」
「朝起こしてー。なんて言ってないのに楓姉さんが勝手に部屋に来るんじゃんか。」
「だって目覚まし時計何回も鳴ってるのに全く起きないじゃん。ちゃんと起きてたらわざわざ起こしに行かないよ。」
「そ、それはそうだけど…」
「ほら、早く朝ご飯食べて準備しなね。お姉ちゃん先に学校行ってるからね。」
そう言って楓姉さんは家を出て行った。俺も早く準備して向かうとしよう。今日から通い始める高校は地元にある進学校だ。昔からの仲の人は少ないが、正直そちらの方がやりやすい部分もあるから悪くはない。この春から俺の愛車になるクロスバイクにまたがって俺も学校へと向かった。
学校へ着き自転車を停める。受験の時にも来てはいるが、やはり立派な校舎だと思う。中庭があって南館と北館を繋ぐ連絡橋も何ヶ所かある。こりゃしばらく学校で迷子になりそうな広さだ。中庭にクラスの割り振り表が貼り出されていたので自分の名前を確認する。教室へ向かおうと歩き始めたその時こちらへ向かってきた女の子とぶつかった。
「ごめんなさいっ。大丈夫ですか?」
「私は大丈夫です。前ちゃんと見てなくてすいません…」
そう言って女の子は頭を下げながら去って行った。歩き始めようとした時足元に猫のキーホルダーが落ちていた。さっきの女の子がぶつかった時に落とした物だろう。同じ1年生みたいだし会ったタイミングで渡すことにしよう。
教室へ入ると既に何人かの生徒が居た。黒板に書いてある座席表を見て1番後ろの席へ向かう。するとさっきの女の子がいた。
「あっ、同じクラスだったんだ。さっきは本当にごめんなさい。」
「いいよ、気にしなくて。俺も悪かったし。あ、そうださっきこのキーホルダー落としたよね?」
「私のキーホルダーだ。拾ってくれてありがとう。大事なものなんだこれ。」
俺はキーホルダーを彼女へ渡した。大事なものにしては何と言うか年季が入っているようにも思えた。まぁそれだけ昔から大事にしているという事だろう。
このキーホルダーを巡って俺は彼女のことを知ることになっていく。
キミの記憶に居続けたい 沙花叉イヌワシ @sakamata_in
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