はじめてのひとごろし

憑弥山イタク

はじめてのひとごろし

 僕は今日、人を殺します。

 生まれて初めての人殺しです。

 殺す理由なんて単純明快、あの人を殺したくなったのです。

 嗚呼……何故こんなにも、殺したくなったのでしょうか……。

 答えは酷く簡単です。


 彼は僕に死ねと言った。しかし死ぬ気は毛頭ない。

 人を呪わば穴二つ、彼も死ぬべきだと思う。

 僕が自害するよりも前、彼をこの手で殺します。

 人に死ねと言う奴には、殺される覚悟が、きっとあるでしょう。

 殺される覚悟が無くば、人に死ねだなんて言うな。さもなくばこの手で僕が、貴様を殺してあげよう。


 出かける前に荷物のチェック。

 ナイフもヤスリも入れています。

 ついでに猿轡なども、念の為に入れています。

 彼に聞いてみよう。

 君は、どんな殺された方がいい?

 ……勿論、僕の一存。


 彼の足の指を落とし、彼のアキレスを切り裂く。

 歩けなくなった彼の顔、猿轡通してしまおう。

 喋れなくなった彼の顔、ヤスリで削ってしまおう。

 彼の命を削ぎ落とし、彼を地獄へ送ってやろう。


 荷物持って彼と出会った。

 彼は僕に眉を顰めた。

 薬盛って、彼を眠らそう。

 おやすみ、痛みを食いながら。


 数時間後、彼は目覚めた。

 猿轡咥えマヌケ顔。

 思わず僕は失笑し、彼の靴を脱がした。


 彼の足の指を切断おとし、彼のアキレスをり裂く。

 歩けなくなった彼の表情かお、酷く不細工で不愉快。

 涙零した彼の顔面かお、ヤスリをかけて削りましょう。

 彼の命を削ぎ落とし、僕は満足してやろう。


 人を呪わば穴二つ。いつか僕も死ぬのだろう。

 その時は神さえ殺し、少しでも長く生きよう。

 人を呪わば穴二つ。僕の墓穴は何処へやら。

 墓穴は僕の一存、探せど、どこにもりゃしない。


 初めての人殺しは、酷く楽しいものでした。

 削った皮膚を蹴り飛ばし、高笑う僕を許して。

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はじめてのひとごろし 憑弥山イタク @Itaku_Tsukimiyama

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