無能扱いの次男に転生した ~役立たずと呼ばれた魔法に秘められた本当の力で成り上がり、自分を捨てた家族に報復するまで~
silve
序章 最悪の目覚め
「このっ……!! 魔法ですらこの有様か!! このゴミめがぁ!!」
「……」
「うーわ、マジで終わってんじゃん。せめて魔法だけでもまともなら使い道はあっただろうにねぇ」
「やっぱり無能はどこまでいっても無能ってわけですねぇ。下手に媚び売ったりしなくてよかったわぁ」
『俺』が表に出てきた時はそりゃもう最悪の目覚めだったね。
父も兄も姉も専属の侍女すらも俺を……『ラインハルト』をゴミとしか見ていない。
周りの人間から向けられる視線に込められているのは、嘲り侮蔑怒り哀れみその他悪感情のフルコースだった。
こんなもん6歳になったばっかのガキが飲み込めるもんじゃない。腹いっぱい通り越して胃もたれ起こすわ。
俺は40過ぎの社畜だった。なんの変哲もない、どこにでもいるサラリーマンだ。
激務に耐えかね脱サラして、その後にバカやって病院に運ばれた挙句結局死んだ。
いや説明が短すぎる気もするがマジでそれだけだから困る。語る価値ゼロ。
病室のベッドに横たわりながら、今際の際に深く後悔していた。
『もっと若いうちから自分のやりたいように生きていればよかった』ってな。
ひどい耳鳴りと金縛りにも似た不快感が全身を襲い、徐々に意識が希薄になっていく。
周りの景色がどんな風になっているのか、暗いのか明るいのかもよく分からない中で―――
『ああ、やっぱり僕に生きる資格なんてなかったんだ』
なんて声が聞こえた。
俺の声じゃない。もっと幼い子供の声だ。
『いきなりなにを言ってるんだ』とか『可哀そうだ』とか思う前にムカついたね。
そんな若い身空で悟ったように人生を諦めてるガキにも、そんなことを言わせちまうような奴らがいることに対しても。
あんまりにも腹が立ったもんだから、文句の一つでも言ってやろうとその声が聞こえたほうへと意識を近づけた。
どうやって近付いたかはよく覚えてない。多分魂的ななにかが人魂みたいにフヨフヨと動いてたんじゃないかな。
それでそのガキの目の前まで辿り着いたと思ったら、急に視界が鮮明になった。
ついさっきまでどこにいるのか、立っているのか座っているのかも分からず自分の輪郭すら曖昧だったのに、急に体の感覚が戻っていた。
気が付いた時、俺が居たのはどこかの庭だった。
なぜか、びしょ濡れの体で。
雨が降る中、俺は地面に蹲っていたようだ。
顔を上げて周囲を見渡すと、数人のやたらデカい男女たちがこちらを見ていた。
……いや、マジでデカいなオイ。外国人っぽいけど、随分若そうな少女ですら明らかに俺よりも背が高い。
……いや、違う。こいつらがデカいんじゃない。
俺が小さいんだ。
俺の体が、小さくなっている……!?
「……は?」
思わず呆けた声が漏れた直後、周りの人間たちが一斉に侮蔑の言葉を投げかけてきた。
「このっ……!! 魔法ですらこの有様か!! このゴミめがぁ!!」
そう怒鳴ってきたのは、赤い髪の中年オヤジだった。
そいつのことを、俺はなぜか『自分の父親』と思い込んでいた。
「うーわ、マジで終わってんじゃん。せめて魔法だけでもまともなら使い道はあっただろうにねぇ」
次に嘲笑いながらそんな言葉を口にしたのは、同じく赤い髪を腰まで伸ばしている少女だった。
見覚えがない年下の女の子のはずだが、どういうわけかその子のことを俺は『姉』だと思っている。
「……」
その隣ではやはり赤髪。オールバックので白い軍服を着た青年が、黙ったままただ俺のことを睨んでいた。
罵り声こそ上げていないが、露骨に俺のことを見下しているのが一目で分かる。
その青年のことは『兄』と認識していた。
「やっぱり無能はどこまでいっても無能ってわけですね。下手に媚び売らなくてよかったわ」
後ろからボソリとそう呟いた黒髪黒目の若い女性は、どうやら俺専属のメイドのようだ。
いやお前それ主人に対する態度じゃないだろ。どういうつもりだ。
……いや待て待て待て。
おかしいだろ、俺はこんな奴ら知らねぇぞ。
なんでこいつらのことを俺は『家族』だなんて認識しているんだ……?
自分のおかれている状況がなに一つ理解できないで混乱していると
――――――ッ!!
不意に、激痛。
痛い、頭が割れるように痛い!
こんなに痛いのは20連勤後に襲い掛かってきた片頭痛以来だ!
……あれ、そう考えると割と耐えられるか?
いややっぱ無理! 超いてぇ! 吐きそう!!
あっ、ダメだ、意識が……。
そんな最悪な光景が、第二の人生の始まりだった。
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