エイプリルフールなんて大嫌い

桜 花音

第1話

 エイプリルフールって結構残酷だと思う。

 ある程度の柔軟さが求められているよね、あれ。


 ──異星人が地球を侵略するんだって。

 ──月がなくなるらしいよ。

 ──宝くじが一億当たった!


 こんなわかりやすい嘘ばっかりならいいのに。


 微妙にリアルを混ぜて嘘をついてくる。

「遠くへ引っ越すんだ」

「告白されたの」

「両親が離婚するって」


 冗談が苦手な私は、都度本気になってしまい、そのたび。

「もお~、冗談だって。今日、エイプリルフールでしょ」

 なんて言われたりする。


 こっちとしてはたまったもんじゃない。なんで親身になってこっちがダメージ受けなくちゃいけないの?

 どこまでが本当でどこまでが嘘なの?

 なんでエイプリルフールなんてあるのよ。

 どんな本当が混ざっていても、たくさんの嘘が塗りつぶしていく。本当を大事にしたいのに。

 ……大っ嫌いだ、エイプリルフールなんて。 


 せめてもの自衛で、今日は一日中スマホの電源を入れない事にした。

 日付が変わると同時に電源を落としたせいで、朝のアラームも鳴らなかった。でも春休み中だから寝坊してもいいもん。


 春休み中で本当によかった。

 学校がなければ誰にも会わなくていいもんね。

 すべてをシャットダウンして、今日は家に引きこもるって決めてたんだ!

 中学卒業して部活のしがらみもないし、今年は一番自由かも。

 誰もいないリビングで、配信のドラマを観るのもいいかな。

 そんな事を考えていた時……


 コン、コンッ。


 であるこの部屋の窓をノックする音がした。


 そんなことする人間は一人しかいない。

 知らんぷりしていると、さらにしつこく叩かれる。


 コン、コン、コココン、ココココココッ……


「あーっもう、しつこい!」

 たまらずカーテンを開いて窓を開ける。

 その先には向かいのベランダで、幼なじみの春希はるきがニヤッと笑っていた。

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