ただ運が良いだけ2
八幡太郎
運だけで1on1
――――――――――
六村雄太17歳、大吉の高校のバスケ部のエースである。
六村は207センチという恵まれた体格で日本バスケット界のホープとして将来を期待されていた。
「おい福良、白井さんと付き合っているって本当か?」
「えっと六村君だっけ、付き合ってはいないよ。キスはしたけど」
「付き合っていないのにキスをしただと……」
大吉は『白雪姫』の演劇の中で1年の白井ゆきとキスをしたのだが、面倒くさかったので、結論だけ六村に伝えた。
「おい福良! 白井さんを弄ぶのはやめろ! 俺と1on1で勝負して俺が勝ったら、二度と白井さんにちょっかいは出すな!」
六村はゆきに惚れていたのである。
「1on1、なんで勝負しなくちゃいけないの?」
「うるせぇ! いいから昼休みに体育館に来い!」
こうして大吉は六村とバスケで勝負することになった。
大吉と六村が白井ゆきを賭けて1on1で勝負する話は学園中に広まり、昼休みの体育館は多くの聴衆に包まれた。
福良大吉177センチ、六村雄太207センチ。
「二人ともフェアプレイでね! 先に10点取った方が勝ち、先攻は福良君でよいかな」
バスケ部の3年生が審判を行う。
バスケを知らない大吉は野球のような投げ方で適当にリンクにボールを投げるが、それがリンクの中に吸い込まれるように入る。
「こいついきなり3Pかよ」
六村は少し驚くが直ぐにダンクを決めて2点返す。
そして再び大吉が攻めるが大吉はドリブルも滅茶苦茶でゴール下で転びそうになり、倒れざまに適当に投げたボールがリンクの裏からボードを越えてネットに入る。
(なんだコイツのバスケ、型にハマったバスケじゃねぇ! コイツのバスケはストリートバスケだ!)
「おい、福良、お前ストバス出身か?」
「え、通学なら西急バスで通っているよ」
「ふざけんな、てめぇ!」
六村は大吉に挑発されていると勘違いし、再び怒りのダンクを決める。
「おい福良、これで1点差だぜ!」
しかし大吉はまたもや適当に投げて3Pを決める。
この時点で8対4、運だけで大吉はあと1ゴールまで六村を追い詰める。
六村は大吉を警戒しながらも無難にゴールを決めて8対6、次の大吉の攻撃を止めないと負けてしまう。
大吉はまたもや滅茶苦茶なドリブルで突っ込んでくる。
「抜かせるか!」
六村がコースを塞ごうとしたその時、大吉は観客席に白井ゆきを見つけた。
「あ、白井さん!」
大吉が白井の方を見ると釣られて六村も観客席を見てしまった。
「しまったフェイクか!」
六村は直ぐに大吉の方を見るが、大吉はドリブルが下手過ぎて前に進めず、その場でボールをハンドリングするが、抜かれると勘違いした六村はバランスを崩しその場に尻もちをつく。
(こ、こいつ、アンクルブレイクまで使うのか! 黒〇のバスケの奇跡の世代かよ!)
六村は驚くが大吉がシュートモーションに入ったので、直ぐに立ち上がり、体ごと大吉を止めに行く。
大吉は六村の圧力に押されて後ろに倒れそうになるが、倒れざまに適当にシュートを打った。
「フェ、フェイダウェイシュートだと……」
六村は体ごと止めに行ったが、倒れざまに放った大吉のシュートはそのままリンクに吸い込まれる。
「10対6で福良君の勝ち!」
バスケ部の3年が大吉の左手を掲げ、勝利を伝える。
六村はあまりのショックでその場に蹲ってしまった。
「六村君、あきらめたらそこで試合終了だよ!」
気まずくなった大吉は有名なバスケ漫画のセリフをそのままパクった。
これ以降、六村は今まで以上の猛練習を行いインターハイでは大活躍するのだが、それはまた別の話。
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