マリー・グランヒルのリスタート
49話 2度目の初めて
「ルンルン♪」
鼻歌を歌いながら私は学園への道を歩く。
今日は私が学園に入学する初めての日でもあり、念願の日でもある。
本当はみんなと同じ時期に入りたかったのだが、残念なことに入学式の前に病気になってしまい周りより、1いや3か月も遅れて登校することになってしまった。
もう3か月と言ったら友達はできているだろうし、ある程度学校のことも慣れてくるころだ。
先生の提案で転入生ということにしてもらっているが、それでも友達を作れるのか、うまくなじめるのかとても不安である。
―ガラガラ―
緊張を交えながらも私は勇気を出してその教室の扉を開ける。
するとやはり予想通りに、その音に反応するように、周りはこちらを向いて私を見つめてくる。
とはいえ、身構えても怖いものは怖いので、その視線をそらすようにそそくさと教室に入った。
……そして、少し深呼吸して心を落ち着ける。
落ち着いてようやく、私は今の自分の状況の違和感に気づいた。
もし、転校生が入ってきたとき、視線を向けられるとしたらその視線はどういう人かなとか、誰かなとか、そういった興味や好奇心がほとんどなはずだ。
なのに、今私が向けられているの視線は言わば、安心、そして歓喜。または少しの心配。
どう考えても、初めて来る転校生に向けるような視線ではないのだ。
「…なんか私、心配になるような見た目してるのかな?」
「…あ!!マリーさん!」
そうして自分の体にへんなところがないか見ていると、後ろから誰かに声をかけられた。
そして、振り返るとそこにいたのは金髪の綺麗な令嬢さんだった。近くにはメイドらしい人と小さめの子もいた。
その3人ともやはり周りと同じように安心という感情を瞳に浮かべている。
それが不思議であるとともに少し怖くも感じる。
「…あの、なんで私のこと知ってるんですか?初めましてだと思うんですけど。」
「…え?、もしかして……いえ、なんでもないわ。」
私の言葉を聞いて何か思い当たったのか彼女は何かを言いかけた。
しかし、その言葉を声には出さず彼女たちはその代わり、すこし悲しそうな顔をしていた。
「…あの、私何か変なんですか?みんな私を心配そうな目で見てて、…」
「…そうね、でもあなたが気にする必要はないの。…あと自己紹介しておくわね。どうもマリーさん、初めまして、私はサルネ・テンサンスというのもですわ。…以後よろしくお願いしますわ」
「私はマリー・グランヒルです。よろしくお願いします。ちなみにそちらの二人は?」
「…どうも、マオ・テンサンスと申します。よろしくお願いします」
「…私はハナ・カラトルであります。またよろしくであります。」
「マオさんとハナさんよろしくお願いします。」
こうして私はこの3人と自己紹介をした。
とても穏やかな雰囲気で接していて心地が良い人たちだと思った。
…ただ自己紹介するときにやはり一瞬見せる悲しそうな顔だけが気がかりだった。
***
「そういえばサルネさん、私の席ってどこかわかりますか?」
「ああそれなら奥の席のあそこ、前から2番目のところね。」
「ありがとうございます。…ちなみに隣の席が誰か教えてくれませんか?せっかくなら名前先に知っておきたいので」
「…そう、いいわよ。あなたの右隣にいたのはメリー・マーガレット。今はちょっと家庭の事情でいないけれど3ヶ月ぐらいしたら登校してくると思うわ。そして左にいるのがクラメル・テンサンス。…彼女にはいろんな悪い噂があるから、あんまり近づかない方がいいと思うわ。」
「…!?さ、サルネ様!?」
「どうしたのかしら?マオ」
「ど、どうしてそのような…」
「真実はきちんと伝えといたほうがいいでしょ。」
「…しかし…」
「ほら、行くわよ」
「ちょっ…。サルネ様!?次の授業普通にここですよ~!?」
「あ、待ってくださいであります〜!!」
そうして金髪の令嬢率いる三人組の彼女らはどこか行ってしまった。
なんかものすごく賑やかな人たちだなとおもった。人当たりも良くて仲良くなれそうだ。
「…さてと、」
言われた通りの席に行き、先ほどのサルネさんが言っていた悪い噂のある彼女の隣に来た。
そしてー。
「ねぇ、クラメルさん。お話ししませんか?」
まるで歴史を繰り返すように、私は彼女に話しかけたのであった。
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