第9話 お茶会
次の日私は緊張しながら馬車に揺られていた。
結局、あの後私たちはサルネ様のテンサンス家に行くことになった。
あの時、メリーちゃんがダメならきっと私の家になるのだろうと思っていたため本当にあの提案は衝撃的だった。
あまりに畏れ多かったかのだがせっかくの提案を断るわけにもいかずそれを受け入れることにした。家族にはあまりびっくりさせたくないので友達とお茶会をするとだけ伝えている
「わっ、海だ!」
窓の外を見ると大きな海が見える。テンサンス家はうちから大体2時間ぐらいのところにあるらしい。馬車で行くには少し辛い距離ではあるがいつもとは違う景色をたくさん見られるため嫌ではない。
ここはミートルという有名な港らしい。漁業が盛んでうちの国の30%ぐらいを賄っているらしい。
「綺麗だなー、いつか家族で行ってみたいな」
光を反射しながら輝く海を見ながらそう呟く。
見知らぬ景色を1人で見るのも楽しいがやはり家族で見た方がもっと楽しいだろう。
「きっとこの景色を見たらルイちゃんはたくさんはしゃぐんだろうなー、そこにお母様も入って……ふふ、」
楽しい想像をしていると時間はあっという間に過ぎてしまう。あと少しで海が見えなくなる位置まで進んでしまう。
そう思い私はその景色を目に焼き付ける。
見知らぬ景色を覚えてまたその想像をするために。
見知らぬ景色、見知らぬ景色、見知った景色……そうやっていろんなものをメモリに…
…え?見知った景色?なんで?え?
私はすぐにその景色をもう一度見ようとする、ここに私が来たことがある記憶はない。
しかし、時すでに遅くもう馬車は海が見えないところまで来てしまってしまい、再び見ることは叶わない。
「なんで私は知っていたの……?」
もう、疑問の確かめようはない。私は色々考えてみるがやはりなにもわからない。
今はどうしようもないので私はとりあえずそれを諦め帰り道に探すことを決めるのだった。
****
「ようこそいらっしゃいました。マリー様」
テンサンス家に到着した私はマオさんに迎えられた。彼女は学校の制服ではなくきちんとしたメイド服を着ている。元のイメージもあいまり彼女の姿はとても似合っている。
「それでは案内いたします。ついてきてください。」
「はい、ありがとうございます」
私は彼女に案内されてテンサンス家にお邪魔する。やはり四大貴族ということもあり庭の大きさはすごい。転生した当時はうちのにはですらものすごく大きく感じたのにこの大きさはその比ではない。
私はしばらく歩いたあとたくさんのお花が咲いた庭に出た。
「あっ、マリーちゃん!」
少し遠くの花畑の真ん中にお茶会のセットがありそこからメリーちゃんが私を読んで手を振ってきた。
そこにはサルネ様もいた。近くには護衛としてハナちゃんもおり、どうやら私は最後についたようだ。
「あら、マリーさん、いらっしゃい。」
「どうもサルネ様、今回は招待してきただきありがとうございます。」
「ふふ、いいのよ。マオも案内ありがとうね。」
「いえ、これが仕事ですので」
「それではお茶会を始めますわ」
***
「わっ、このお茶美味しい」
「こっちのお菓子も美味しい!」
「ふふ、それはよかったわ」
私たちのお茶会は順調に進んで行った。サルネ様の用意してくれたお茶やお菓子はどれも食べたことのないものばかりでとても美味しい。
私たちはお菓子やお茶を飲みながら日常会話をしていた。
「そうだ、サルネ様。サルネ様は普段学食はなにを食べるんですか?ちなみに私は日替わり一択です。」
「そうですわね……やっぱり普段は日替わりなのですが、たまにかけうどんを食べますわ」
「かけうどんですか」
「ええ、あのダシの効いた味がとても好きで、それに庶民寄りの味がして心が暖かくなるのですわ。それに庶民を理解するのはわたくし達の役目ですからね」
「わぁ、素敵な考えですね」
かけうどんか、確かにこの世界に来てから食べたことがないな。私も今度それを食べてみよう。きっとあの食堂なら絶品間違いなしだろう。
それはそうとして、……あの、うちの食堂バリエーション豊か過ぎません?
凄過ぎてたまに少し引くんですが。
「そうだ、マリーさん。もう学校には慣れたかしら」
「はい、まだ完全ではないですが毎日楽しいです」
「そう、それは良かったわ」
優しい。サルネ様はこうやって時々私たちを心配してくれる。私は彼女と話しているととても温かい気持ちになる。それはきっと彼女が身分関係なく平等に接してくれるような慈愛に溢れているからだろう。
きっと昨日の違和感は気のせいだったのだろう。
「そういえばそろそろ中間テストが近づいてきましたね。」
「あっそうじゃん。あと1ヶ月半ぐらいだっけ」
「本当?メリーまだなにも勉強してなんだけど」
「ふふ、まぁ、もし心配でしたらわたくし達で勉強会をしましょう」
「!、いいんですか?」
「ええ、友達ですもの、当然ですわ」
勉強会か〜、前世でも何回かやった記憶があって、いつもより勉強が捗った記憶がある。
誰とやっていたかについての記憶はないが、まぁ、きっと学校の友達だったのだろう。もう自分が高校生の時から19年ぐらい経ってるし、思い出せないのも無理はない。
***
「そろそろお開きの時間ですね」
それからも私たちは色んなお話した。気がつくともう空は赤く染まってしまっている。
楽しいことがすぎるのはやはりあっという間である。
「サルネ様、今日はありがとうございました。とても楽しかったです」
「メリーもとても楽しかったです」
「ええ、それは良かったわ。またきてくださいね」
「マオ、ハナあとはよろしく」
「わかりました」
「わかったであります」
そう別れの挨拶をして私たちは家へ帰るために別々の入り口に向かう。
どうやら私とメリーちゃんの馬車は違うところに止めてあるらしい。
聞いた話、マリーちゃんの家は私の道と反対側の山の道を通っていくそうだ。
(今度、マリーちゃんの家にも行ってみたいな)
私がそう思ってマオさんについて歩いていくと何故かテンサンス家の屋敷に着いた。
少し行きと道が違ったと思ったがまさか反対方向に行っているとは思わなかった。
…恐ろしやテンサンス家の庭。
落ち着け私、混乱によって変なことを考えているぞ。まずは彼女に真意を確かめるのが最優先だ。
「マオさん?なんで屋敷に?」
「すみません、マリー様。ー実はお話があるのです」
「お話?一体なんの」
「…着いてきてください」
私はそう言われて素直に着いていくことにした。ここで歯向かってもなにもわからないままたがらだ。
それに、マオさんにがいるということならきっとサルネ様が関わっているはずだ。
彼女なら酷いことにはならないだろう。
私はここ数日で彼女はとても優しく慈愛に溢れている人だということを知った。あのお茶会で会えないということはきっととても大事なことなのだろう。
私は彼女の力になると覚悟を決めた。
そうしてまた、しばらくマオさんに屋敷を案内されある部屋の前についた。
「どうぞ、マリー様。中でサルネ様がお待ちしております」
「わかりました」
「……それと、マリー様。」
「はい?」
「どうか、彼女、サルネ様の…サルちゃんの力になってあげてください。
彼女が見せた表情は懇願する表情だった。彼女の瞳には何処か寂しさや悲しさを感じる。
それにマオさんは今、サルネ様のことを、"サルちゃん"と呼んだ。
サルネ様とマオさんは仲がいいと思っていたがそれは想像以上に親密な関係なのかもしれない。
そんな顔を見た私は彼女の手を握り安心させるように宣言する。
「大丈夫ですマオさん。私にできる範囲のことはなんでもしますから」
そうやっていうと少し彼女は安心した表情をした。それを確認した私は意を固めドアを開けた。
「いらっしゃい。ごめんねマリーさん色々と」
そこには三度目の金髪の令嬢がいた。
しかし彼女からはいつもの優しい雰囲気は感じない。それは彼女に感じていた違和感の正体、そこしれない"寂しさ"を感じた。
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