義姉が悪役令嬢予定!? 没落阻止の為に義妹はがんばりたい
餡子
義姉が悪役令嬢予定!? 没落阻止の為に義妹はがんばりたい
初めて義理の姉に出会った時の衝撃は忘れられない。
「マルガレータ。この子の名前はエマ。君の一つ年下で、今日から妹になるんだよ。仲良くしてあげなさい」
母の再婚相手のハーバー伯爵である義父に背を促され、一歩前に踏み出した。
マルガレータと呼ばれた義姉は、腰まで伸びた癖の強い黒髪と吊り上がり気味の緑の瞳が印象的な美しい少女だった。
あまりの美しさに緊張する。
……などと思う間は一切なかった。不意に頭の中に前世の記憶が一気に押し寄せてきたせいだ。
(えっ、ちょっと、なんなの!? このマルガレータって、なんか見たことがあるんだけど!)
痛い。痛い。頭が割れるように痛い。パズルのピースみたいな欠片が豪雨の如く脳に降り注いでくる。
毎日変わらない社畜生活。
疲労からか日々激しくなっていく頭痛。
そんな中、浮気をしていた屑彼氏。
別れた後のストレス発散で読みまくった恋愛漫画。
最後の記憶は、いつもより一際強く吐くほどの頭痛が来る直前に読んでいた漫画。
その悪役令嬢がマルガレータ。
(それが、私の義姉なの!?)
記憶の波に攫われていたのは数秒だったのか、茫然としていた私の前でマルガレータは強張った顔を微かに笑顔にした。
「はじめまして、エマ。お姉様と呼んでくれてよくってよ」
向けられた笑顔がすごい引き攣ってる。そのせいか邪悪な笑い方に見える。私に前世の記憶がなかったら、絶対に怯えて近づけなかった。
(10歳の頃からもう悪役令嬢の片鱗が!)
マルガレータはヒーローである公爵令息の婚約者候補で、芽吹きの力を持つヒロインの邪魔をしていた悪役だ。
……まあ、だいたいヒロインにやり返されていたわけだけど。
憎まれ役だけど少し抜けてる設定で、完全には憎めない悪役だった。
だから私はマルガレータとそのお付きの従者との恋路を応援していたのに、結局マルガレータはヒーローを諦めきれなくて暴走した結果、負の感情を喰らう魔物に同化して王都を破壊する化け物になってしまった。
最後のマルガレータはヒーローとヒロイン、そしてマルガレータの従者の尽力でなんとか人の姿に戻ったけど、既に虫の息だった。駆け寄った従者に手を取られて、切なげに笑って死んでいくのだ。
『私……あなたを好きになれば、よかったわ……』
ひどい! 作者はマルガレータになんの恨みがあるの!?
確かに毎回ヒロインの邪魔をしていたけど、そこまで悲しい結末にしなくたってよかったでしょ。それなら従者は何のために出してたんですかっ。彼は私の推しだったんですよ!? マルガレータとの仲を思わせぶりにしておいて空振りで終わるなんて、そんなにマルガレータは読者人気がなかったんですかっ。
彼女を結構好きだった人間もここにいるんですよ!
「マルガレータ……おねえさま」
そんな悔いしか残っていないキャラの幼少期が、すぐ目の前にある。
しかも私の義姉として。
「ええ、仲よくしましょうね」
ニタリと笑うマルガレータ。
この笑顔は生母を亡くされてから笑うのを忘れてしまったせいである。
だから笑顔を見て泣きそうになってしまったのは同情心からであって、怯えたせいではないので義父とお母様は心配しないでほしい。
「はい! なかよくしてください、おねえさま!」
力いっぱい頷いた私を見てマルガレータは大きく目を瞠った。そして困惑した後、微かに頬を赤らめる。ちょっとだけ緩んだ口元には今度は邪悪さはなかった。
必死に背伸びしてみせていた少女の年相応の反応に、心の中でも強く拳を握る。
(守りたい、この笑顔!)
こんなに可愛い子が悪役になるだなんて認められない。
そういえば漫画ではマルガレータの責任を取る形で、実家は爵位を返上して没落したことまで思い出してしまった。
つまり、それはこれからの私の実家でもある。漫画の通りに話が進んだらお先真っ暗。
(私がなんとかしないと……!)
物語をよく思い出そう。
マルガレータがやたらとヒロインに突っかかっていたのは、ヒーローと結婚したかったからだ。
優しくしてくれたヒーローが好きだったのは勿論だけど、後妻の義母と連れ子の義妹との折り合いが悪くて家に居場所がないと感じていたからでもある。ヒロインへの過剰な嫉妬も、きっと満足に愛されない環境だからだった。
(つまりこれから私がやることは、マルガレータを慕いまくって、従者との仲を取りもち、かつヒーローを好きにならないように洗脳する!)
目指せ、没落阻止!
マルガレータを救い、私もせっかく伯爵家の娘になれたのだから貴族令嬢人生を謳歌してみせるッ。
***
そんなわけで、私がマルガレータと家族になってから6年。義姉を慕いまくった。
ちなみにこの間に推しだった従者も確保済みである。
従者はマルガレータが孤児院の慰問に向かった先で、魔法の才があるのに目をつけたマルガレータが拾い上げてきた逸材である。
彼はマルガレータより一つ年上の孤児だったので、ハーバー伯爵家の後見を得たことで魔法学園にも一緒に通うことになる。
名前はイグナーツ。
襟足にかかる長さの銀髪に切れ長の紫紺の瞳。マルガレータに恩を感じている彼は、彼女の忠実な番犬。
(……だったはずなんだけどな?)
「エマ様。またマルガレータ様に変なことを刷り込もうとしているのですか?」
彼は魔法学園への入学準備をしていたマルガレータに近寄ろうとしていた私の首根っこを掴み、呆れた顔で嘆息を吐き出す。
おかしい。
彼はマルガレータに忠実な従者で、妹には欠片も興味はないはずだったのに。というか、漫画でも義妹は数コマしか出ていない。顔も黒く塗り潰されたモブだった。
しかし現実のイグナーツはやたらと私の面倒を見てくれる。漫画とは違って、彼を引き抜く時は私も一緒にいたせいだろうか。
(魔法を使ってるイグナーツを見た途端なんとか確保しなきゃって焦っちゃって、お姉様にちょっと強引におすすめしちゃったからなぁ)
従者を逃すわけにはいかないと思い、
『お姉様! 彼を見てください! すごい魔法を使ってますよ! 洗濯物を一瞬で乾かしたんです! 風でビューっと、たったの一吹き! これは世紀の逸材では!? 今ここで押さえておけば将来有望、間違いなし! これを逃したら次はありませんよ!』
我ながら深夜のTVショッピングのごとき迫力で義姉に迫ってしまった。
ズルするために魔法を使っていたイグナーツは焦った様子を見せたが、
『ささっ、そこのあなた! もう一度お姉様に先程の魔法を見せて! 悪いようにはしません、きっとあなたにとっても素敵な未来が待ってます!』
畳み掛けて魔法を強要した結果、イグナーツはハーバー伯爵家の後見を得ることとなった。ちなみに私は二人を引き合わせただけであり、実際に義父に話をつけてくれたのはマルガレータである。
つまり、イグナーツはマルガレータに恩があるという結果は変わらないはずなのである。
が、引き取られたイグナーツはマルガレータよりも私を構いがちな気がする。私がマルガレータに張り付いてばかりいるから、邪魔だと思って引き剥がしたいのだろうか。
確かに私は邪魔かもしれないけどっ。推しと推しの仲が深まるのを見れるチャンスがあるなら見たいでしょ!?
(今の私はお姉様が大好きですし!)
慕いまくったマルガレータは面倒見が良かった。少々お高く止まって見える時もあるが、ツンデレなだけである。今では随分と柔らかく笑えるようになっていた。
とても可愛い。守りたい、あの笑顔。
「変なことじゃないよ。お姉様の未来のために必要な助言だから。もうすぐ学校生活が始まるから、ちゃんと言い聞かせておかないと!」
「婚約者候補がいるのに身辺整理する前に他の女に目移りする奴はクズだとか、そういう奴は何度でも浮気するとか……何がエマ様をそうさせるんですか?」
「大事なことだよ! お姉様に失敗してほしくないから!」
これまでもことあるごとに姉の恋愛観を聞いては言い聞かせてきた。
私が助言しなければ、マルガレータは「家の為、領地の為になる方とならどなたでも良いわ」と言っていたのだ。貴族の娘としては正解だけど、そんな良い子の答えなんて求めていない。
マルガレータには幸せになってほしい。
だからこそ、何度も何度も恋愛話を掘り下げてみた。
『お姉様は、自分のお尻を拭けない男をどう思います?』
『え、ええ……? よほどご高齢の方なの?』
『いえ、若い男性です。たとえば婚約者候補がいるのに、そちらを整理する前に他の女性を好きになる人をどう思います? 最低ですよね?』
『そんな方は……そうね、困るわね』
『ですよね! じゃあ、お姉様は自分のお尻も拭けない男を好きにならないですよね?』
『もちろんよ』
『やっぱり男性は一途な方が一番ですからね!』
だとか。
『お姉様、婚約者候補がいる男性に好意を寄せる女性をどう思われますか?』
『気持ちはどうにもならないでしょうから難しい問題だけど、個人的にはあまりお近づきにはなりたくないかしら。問題を起こしそうですもの』
『じゃあ、そんな女性を好きになる男性ってどう思います?』
『……趣味を疑ってしまうかもしれないわね』
『ですよね! そんな男には近づかない方がいいですよ! そうそう、恋するなら年上の方が絶対いいと思います。包容力がありそうで!』
などなど。
もしマルガレータがヒーローと関わり合った時に、ふと心の片隅に引っ掛かりを残すべく恋愛観を洗脳してきたつもりだ。
最後の一言は前世で同じ年の彼氏に振り回されて浮気された私の偏見だけど、それを差し引いても長女として気を張り詰めがちなマルガレータには、包容力のある落ち着いた男性が合うと思う。
洗脳はかなりうまくいっているはずだ。
もうすぐ魔法学園に入学するマルガレータだが、つい先日、ヒーローの婚約者候補選びの場だと密かに言われていた茶会に参加した。帰ってきてからのマルガレータがやけに緊張している姿をよく見かけるので心配だけど……
婚約者候補になるということは将来がほぼ決まるってことだから、誰だって不安にはなるよね。
でも漫画みたいにヒーローに依存することはないと思いたい。
(漫画のヒーローとヒロインの関係はじれじれで大好きだったんだけどな)
二人の恋愛は物語としてなら文句はない。
けど、現実に照らし合わせたらダメだ。恋愛するのはかまわないけど、周囲の人間関係を綺麗に清算してからお願いしたい。
(今のお姉様なら、冷静に周囲を見られるはずだから大丈夫だろうけど)
今のマルガレータは家族に満足しているはずだから。
そう思いつつ、私の首から手を離して歪んだ襟元のリボンを直してくれるイグナーツを見上げる。
(ただなぜかイグナーツとお姉様は、漫画ほど仲良しじゃない……)
なぜなの。漫画ではもっと以心伝心だったじゃない。今の二人は正しく令嬢と従者の立ち位置でしかない。いや、現実的に考えれば正しいのだけども。
むしろ私との距離の方が近いような!?
毎朝起きられない私を起こしに来るし、機嫌が悪い時は好きなお菓子を差し入れてくれる。落ち込んでる時は綺麗な魔法を見せてくれたりもする。
『エマ様は俺の魔法を見る時、目をキラキラさせますよね。こどもみたいだ』
『こどもだからいいの』
『いつもは淑女扱いしろと仰るのに?』
そんな風にからかいながらも、空に光る小さな花をたくさん散らしてくれたりもする。何の生産性もない、ただ私を慰めるだけの幻想魔法を、難しいはずなのに惜しげもなく見せてくれる。
努力家で、天才で、優しい。漫画の中では見られなかった表情をこれまでにいくつも見てきた。
たぶんなぜかマルガレータより、きっと私の方が。
一緒にマルガレータを見守ってくれてるから、マルガレータ愛の同志ではあるとは思うのだけど。
(距離感が私の知ってる二人じゃない気がする)
思わず首を捻る。
こんなことで大丈夫だろうか。確かに漫画では二人は報われなかったけど……闇堕ちして王都破壊だけはやめてほしい。
「エマ様? 難しい顔をしてどうしました。俺に何かできることはありますか?」
私を雑に扱うことも多いイグナーツだけど、私の表情に気づいてすぐに気にかけてくれる。いつものように。
(お姉様と恋愛して欲しい)
そう考えた途端、胸がチクリと痛んだ。
(……馬鹿だな、私)
そんなの嫌だ、なんて。
マルガレータの未来を考えたら、私がイグナーツを好きになったりしちゃダメなのに。
(だって、推しだったんだもん)
悪役令嬢だったマルガレータを見放さず、いつだってそばに居て、支えて助けてきた姿を見て憧れた。
そんな風に誰かに一途に想われたら、どんなに素敵だろうって。
最初は推しと推しが仲良くする姿を見たかっただけのはずなのに。漫画で読んだものに近いものが現実となって私にも向けられたら、誤解しちゃうじゃない。期待しちゃうじゃない。
もしかしたら、私も今度こそ誰かにちゃんと好きになってもらえるかも、なんて。
いつしかマルガレータとイグナーツに二人だけの世界を作られるのが怖くなって、二人の間に挟まろうとしていた自分がいたことは否定できない。
こんなことじゃダメなのに。
(恋をするのって、なんで思うようにいかないの)
これまでヒーローとヒロインを悪様に言ってきたけど、私だって人のことは言えない。
(だけどお姉様が学園に入学したら、二人の仲は深まるだろうし)
いっそ私が入る隙もないくらい幸せになる姿を見せてもらえたら、諦めもつくはずだから。
だから、この気持ちは今だけ。
ぎゅっと無意識に冷えた指先を握りしめて拳に変える。「お姉様が心配なだけだよ」って、いつもの顔をして言わなきゃ。
私を覗き込む紫紺の瞳を見上げて、口を開こうとした時。
「失礼します、エマお嬢様。マルガレータお嬢様宛にお手紙が届いておりますが、よろしいですか?」
執事が手紙を持ってやってきた。慌ててハッと我に返って扉の前から退く。
ちなみに私はマルガレータの元に突撃するつもりでいたため、私達は義姉の部屋の真ん前に陣取っていたのだ。邪魔なことこの上ない。
「お姉様に手紙?」
「ええ、マルガレータお嬢様お待ちかねのお手紙かと」
執事は目を三日月型に細めて笑い、マルガレータの部屋をノックする。手紙だと言われたマルガレータは慌てて飛び出してきた。
「手紙が届いたの!?」
受け取った手紙を見て、宛名を確認するなり頬を赤らめる。急いで中を取り出して、内容に3回は目を走らせてからギュッと手紙を胸に押し付けて感極まっていた。
まるで、恋する乙女の如く。
「お姉様、そのお手紙はどなたからなんですか?」
マルガレータにそんな顔をさせるなんて!
まさか、先日お茶会で会ったヒーローの公爵令息!? 漫画の強制力には抗えなかったの!?
焦る私を見て、マルガレータは恥ずかしそうに頬を染めたまま小さく笑んだ。
「あのね、フランツ・ルター卿からのお返事なの」
なるほど、フランツ・ルター卿……
って、誰!? 漫画にも出てきてないし、初めて聞く名前なんだけど!
「どなたですか!?」
「先日、アンブロス公爵家の茶会に参加したでしょう? そこで……実は靴のヒールが折れて転んでしまったの。その時すぐに駆け寄ってきて助け起こしてくださったのが、フランツ・ルター卿」
「そんなことがあったなんて、聞いてないんですけど!」
「転んだなんてエマに知られるのが恥ずかしかったのよ」
「お姉様が抜けてるのは今に始まったことではないですよ!」
「怒るわよ、エマ」
マルガレータはムスッと口を尖らせたけど、すぐに手紙に目を落として目元を染めた。
「今まで恋なんてよくわかってなかったけど、きっとこれがそうなのね。ルター卿のことを考えると胸がそわそわするのよ」
いかにも恋する乙女といった風情でマルガレータがふわふわと微笑む。可愛い。
確かにそんなことがあれば恋に落ちる気持ちはわかるけど!
「いつもエマが言ってくれてたでしょう? 誠実で、包容力のある年上の男性がいいって。ルター卿はルター侯爵家の次男の方で、普段は騎士をなさってるんですって。堅実な方でしょう? 私、きっとこの方に出会うために生まれたんだわ」
そう言い切ると、マルガレータは朗らかに愛らしい笑顔を浮かべた。その姿は天使。
なんて見惚れている場合じゃなかった。目を真ん丸く瞠ってしまう。
「えっ。じゃあアンブロス公爵令息との婚約はどうなるんですか!?」
「アンブロス公爵令息と婚約のお話なんて出ていないわよ? あちらも長男、こちらも長女で後継同士だから、ご挨拶に伺っただけよ」
不思議そうに言われてしまった。
でも漫画じゃ……そうか。
漫画のマルガレータは家から逃げたがっていた。義妹の方が可愛がられていると思い、そちらが家に残って継ぐと思われていたから、ヒーローの婚約者候補に持ち上がったんだ。
ちなみに私の亡くなった実父はハーバー伯爵家の傍系だけど男爵だから、私が公爵家に嫁ぐには血筋的に足らない。そもそも私は茶髪の癖毛で目だけは綺麗な緑だけど、マルガレータほど美人でもない。家族もイグナーツも可愛いと言ってくれてるからいいけど!
それはともかく、マルガレータが家を継ぐなら侯爵家の次男であるフランツ・ルター卿との婚姻は諸手を挙げて歓迎できる。
いえっ、このまま歓迎していいの!? だって!
「お姉様、その、イグナーツのことは……?」
どうするの!?
咄嗟に聞いてしまったら、マルガレータは目を丸くした。
「何を言ってるの。イグナーツを好きなのは、エマでしょう」
心の底から不思議そうな顔をされた。
「えっ!?」
「なぜ驚くのかしら……。初めて会った時から熱烈に家に連れて帰りたがってたじゃないの。イグナーツがいればご機嫌だったし、エマほどわかりやすい子はいないわよ。でしょう?」
マルガレータは呆れ切った声と眼差しになり、その視線が私の背後にいたイグナーツに向けられる。
待って待って。最初はともかく、私の気持ちはバレてたの!? いつから! こわい。イグナーツはどんな顔をしてるんだろう。振り向けない。
だけど私が振り向くより早く、イグナーツが私を守るように前に出てきた。
「まだ正式に交際の申し込みはされておりませんので、どうぞお手柔らかにお願いします」
「まあ、そうだったの。あなたも大変ね。家は私がちゃんと守るから、エマは安心して好きな人を選んでいいのよ」
まだ固まったままの私を見て、マルガレータはいたずらっ子のように微笑んだ。
その言葉を受けて、イグナーツが肩越しに振り返る。
焦ってあわあわする私に前に片膝をつくと、逃げる間もなく片手を取られた。
その手の甲に、まるで誓うみたいにキスが落とされる。
「エマ様に着いていけば、悪いようにはなさらないんですよね? きっと俺にとって素敵な未来が待ってるんだと信じてます」
俺は将来有望ですよ。
と、多分未来の旦那様になる人は私を見上げて笑ったのだった。
義姉が悪役令嬢予定!? 没落阻止の為に義妹はがんばりたい 餡子 @anfeito
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