元カノを殺した過去があっても青春ラブコメは送れますか?
桐山一茶
プロローグ
招待状
桃色の花びらが舞い散る桜並木を賑わせているのは、汚れ一つない紺色の制服を着た男女。
その皆が希望に満ちたような、どこか不安げな表情をしている。
それは俺も例外ではなく、朝起きた時から今までずっと胸がトクトクと高鳴っている。
同じ制服を着た俺たちが、そのような複雑な感情になっている理由は明白で……
「ここか……」
目線を上げると、そこには現代的な四階建ての校舎がそびえていた。
校舎の近くには大きなグラウンド、二十五メートルプール、緑の芝生が風に揺れる中庭があった。
ザ・青春の舞台。そう言った感想を覚えるこの高校の名前は、私立縁結高校(しりつえんむすびこうこう)。今日から俺が入学することになる高校だ。
一見するとごくごく普通の私立高校だが、ここの学校には特別な人間しか入学することが許されない。
勉強が出来る人? スポーツが出来る人? 芸術的なセンスがある人?
残念だが、それらのスキルがあってもこの縁結高校には入学することが出来ない。
じゃあどういう人物が入学することを許されるのか。
それは『面白い恋愛歴を持った人』ということ。ただそれだけ。
「面白い恋愛歴……ねぇ……」
俺は誰にも聞こえないような声でひとりごちてから、ポケットに入っていた封筒を取り出した。
その封筒の中から、一枚の紙を取り出して開く。
その上部には、私立縁結高校の名前と共に、大きな文字で『招待状』と書かれていた。
この招待状が中学三年生の冬に送られて来た生徒は、縁結高校に入学する権利を得られる。
しかも縁結高校は一切の学費が掛からない。
特殊な高校ではあるものの、学費がかからないという理由で縁結高校に入学する生徒は多いらしい。そして俺もその中の一人だ。
俺の家は裕福な家庭とは程遠いので、ちょっとした親孝行のつもりで縁結高校に入学することになった。
そういった面では、中学の時に恋愛をしておいてよかったと思う。
「まあ、俺の恋愛歴が縁結高校の誰かさんに知られてるってのは気持ち悪いけどな」
そう独り言を吐いて、俺は招待状の真ん中あたりに視線をやる。
そこには俺が縁結高校に招待された理由が書かれていた。
・招待理由 当時付き合っていた彼女を殺したから。
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