HIV検査で陽性になった話
ふがふが
第1話
それは、喉から始まった。
東京への出張から帰宅して数日、喉の左側だけが痛みだした。あと何故か鼻水に少し血が混じる。喉全体ならともかく、片方だけ痛むのはちょっと記憶にない。
不審に思ったのも束の間、今度は微熱まで出たため致し方なく会社を病欠。
この時は(出張の疲れか?あるいは東京で風邪でもうつされたかな?)などと吞気に考えていた。
休日に病院へ行き、薬を貰って、少し有給休暇を使って何とか復調。たまに出る鼻水に少し血が混じっているのが気になるが、空気が乾燥しているのかとタオルを吊るしてみたり、ティッシュを濡らして鼻の下に張り付けてみたりしていた。
次の週末、今度は喉の右側が大きく腫れて痛みだした。
それこそ喉奥の形が大きく変形するほど腫れあがり、何かを飲み込むたびに激痛が走るようになってしまった。微熱が再発したため、再び致し方なく会社を病欠した。
病院に行くと扁桃炎との診断が下り、抗生剤が処方された。当然ながら一朝一夕で治るわけではない。熱と痛みに布団の中をのたうち回る羽目になった。
水を一口飲むたび、手近なものを強く握り込まないと痛みに耐えられない。最終的に、飲食中常にハンドグリップを握る形に落ち着いた。
再び有給休暇を消費したが、これも何とか復調した。別に握力が強くなったりはしなかったけど、とりあえず落ち着いた……と、この時は思っていた。
次の週末、微熱が出た。
どこも痛くない、休息が足りないことも無いはずなのに、なぜか3週連続で体調を崩したのだ。今までこんな事はなかった。
(もしかして、御土産を貰っちゃったか?)
布団の中で考えるが、当然答えは出なかった。幸い微熱だけでそれ以外の症状は無い、どうせ病院に行っても風邪薬が出されるだけなのは目に見えている。
というわけで不安を抱えつつ大人しく寝ていると、また有給休暇を消費したが解熱した。解熱はしたのだが。
なんだか調子が悪い。体温が平熱高めから下がらない。1日に2~3回、一瞬意識が遠くなるような感覚がある。なんか体の中が熱い気がする。
何回も体温を測るが、37.0度には届かない程度。微熱とも言えないが、しかし俺にとっては平熱ではない。この状態が1週間続き、やっぱりただの風邪じゃないかもしれないと思い始めたころ。
体に謎の赤い斑点が出現していることに気づいた。
愕然とした。いつの間にか胸部と背中の広い範囲が点々と赤くなっていた。自分の体をマジマジと見ることがなかったから、気づくのが遅れたのかもしれない。それとも1日でこうなったのか?
見た目に反して特に痒かったり痛かったりはしないのが逆に怖い。原因を特定しなければ、という恐怖感に背中を押され、性病検査を受けることを決意した。これ以外に心当たりがない。
「受けることを決意した」といっても、受けられる場所を探すのは意外と難航した。分かりやすいのは自治体が行っている検査だが、希望者が多いのか、受けられそうなのは最速でも2か月後。そんなに待ちたくない。
色々と探していると、直近2回お世話になった病院が性病検査を行っていることが分かった。しかも通常より安いらしい。検査対象は2種類しかないが、今の俺にとっては可能性を潰せることが重要だった。
このような経緯で、次の週明け、HIVおよび梅毒の検査を行うことにした訳である。
この時点では、性病だとすれば梅毒かクラミジアあたりだろう、という目星を付けていた。上半身に出ている赤い点々、これがいわゆるバラ疹であれば梅毒だろうし、ここ数週間の風邪に似た症状は咽頭クラミジアの症状に類似する。
当然素人の考えなので見当外れかもしれないが、何もしないよりはマシだろう。今回の検査で陰性なら、後日別の検査をすれば良いのだから。
……股間の息子のご様子を伺ってみても、何かに
検査可能な日程は平日午前が最速だったため、再び事前に有給休暇を取得した。今までにない勢いで残日数が減っていくが、背に腹は代えられない。これも健康のためだ。
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