声劇台本『Soul Grave Keeper』
@hanato47
第1話
〈山奥の獣道に1人の男が倒れている、そこに角の生えた2人の子供が近寄る。話し声に男が目を覚ます〉
クロウ「ねぇ〜!マオリ!なんか落ちてる!!」
マオリ「なんかってなに?」
クロウ「なんだろう〜?」
マオリ「…これって、ニンゲンじゃない?」
クロウ「ニンゲン…?」
弘「うぅ…、ん…?ここは…」
クロウ「えっ?!動いた!!」
マオリ「動くよ、イキモノなんだから」
弘「…なんだ、おま…、ひぇ?!つ、角…?!」
マオリ「やっぱりニンゲンだ」
クロウ「持って帰る!」
マオリ「また、アゴラに怒られるよ?持って帰って来すぎだ!!って」
弘「…な、なんの話をしてんだ…?」
マオリ「あっ、えっと…」
クロウ「ねぇねぇ、ニンゲンさん。僕達の家に来ませんかっ?!」
弘「えっ…」
クロウ「ねっ?!マオリ!」
マオリ「…別に私はどっちでもいい」
クロウ「ほら、ニンゲンさん!一緒に行こ!」
弘「…へっ?!ど、どういうことだ…??」
クロウ「いいから、いいから!」
〈弘の手を引いてとことこ歩き出すクロウ〉
1★シーン切替
〈家に戻ってきたクロウとマオリ〉
アゴラ「おぉ、おかえり。今日は長めの散歩だっ…、ん?誰だそいつ」
弘「…?!また人間じゃなーーーー」
クロウ「道に落ちてた!」
アゴラ「…落ちてた??いや…、は??」
クロウ「道に落ちてたから、拾ってきたの!」
アゴラ「もっと分かりやすい説明ねぇのか。おい、マオリ」
マオリ「知らないよ」
アゴラ「一緒に居たんだろ」
マオリ「知らないったら、知らない」
〈扉を開けて人外の青年が入ってくる。駆け寄るクロウ。再びびっくりする弘〉
フォード「ただいま戻りました」
アゴラ「ご苦労」
クロウ「フォード!おかえり!」
フォード「ただいま、いつもお出迎えありがとう」
クロウ「うん!!」
弘「ひぃっ…?!お、お前も…人間じゃ…」
フォード「おや??これは珍しいお客様がいるじゃないですか。…もしかして誰かの餌だったり?」
弘「え、餌…?!」
アゴラ「ちげぇよ、散歩でチビ共が拾ってきた」
フォード「ふむ」
マオリ「クロウが持って帰るっていうから」
クロウ「道に落ちてたんだもん!」
アゴラ「捨て犬か」
フォード「先日持って帰ってきた餌、ようやく捌き終わったところなのに」
弘「さば…、えっ?!?!」
アゴラ「やめてやれ、怖がらせるのは」
フォード「ふふっ、失礼いたしました。冗談ですよ。それで、貴方はどうしてこちらへ?」
弘「…えっと」
フォード「この子達の話を聞く限り道端に倒れていたようですが」
弘「あ、あぁ。…気がついたら道端にいて、その子供達に話しかけられて目を覚ました」
フォード「そう…、ですか。他になにか覚えていることは?」
弘「…」
フォード「あなたの名前は?」
弘「須藤弘」
フォード「ここに来る直前の記憶は?」
弘「…わからない」
マオリ「あのね、私はほっとこうって言ったけどクロウが持って帰るってうるさいから持って帰ってきたの」
アゴラ「ここは迷子センターか」
弘「あっ…あの」
アゴラ「んあ?」
弘「…ひぃっ…!!」
フォード「彼、口は悪いですが怖くないので大丈夫ですよ。どうしましたか?」
弘「えっと…、その、ここはどこ、なんだ??」
フォード「…どこ、と言われると難しいですね」
クロウ「カラダから離れたタマシイが迷い込むところ、だよ」
弘「体から…?どういうことだ?」
マオリ「そのままの意味」
弘「俺は、生きてない…のか?」
フォード「そういうわけではありませんが、魂だけが彷徨ってしまっているといいますか…」
弘「でも、ほら!体!」
アゴラ「魂が記憶してる形を再現してるだけだからな、実体はないのと同じだ」
弘「…なに言ってんだ…?」
フォード「怖がらせるわけではないですが、私達も元々は貴方のような普通の人間だったのです。そこに居る口の悪い彼は違いますけど」
弘「…へっ!?じゃ…じゃぁ、なんで…」
フォード「体から離れた魂がそのままの状態で長期間この世界にいると周りの良くない気を吸い込んでしまいます。その影響で見た目も人間とはかけ離れたものになってしまうんですよ」
弘「…そんな」
フォード「でも貴方はまだ人間の姿ですから、ここにいれば安全です」
アゴラ「チッ…、面倒事増やしやがって」
フォード「今後のことはまた明日にでも相談しましょう。とりあえず日が昇るまではここに居たらいかがですか?このあたりは日没の後の時間帯が1番危ないので」
弘「危ないって…どういうことだ??」
マオリ「カゲロウが動き出すの」
弘「カゲロウ…、なんだそれ…??」
クロウ「真っ黒いオバケだよ。タマシイを食べるの。もしも会ったら僕達食べられちゃう」
弘「食べっられる?!」
アゴラ「あいつらは綺麗な人間の魂がいっちゃん好物だからな」
弘「食べられたら…、どうなる…?」
アゴラ「魂ごと消える。まぁ、それが正しいっちゃ正しいんだがな」
弘「食べられるなんて!絶対…、嫌だ!!」
クロウ「だったらここにいよ!アゴラが守ってくれる!」
アゴラ「んどくせぇ、寝る」
マオリ「あっ、おやすみ!」
クロウ「ねえ、フォード、空き部屋あったよね!」
フォード「そうだね。そしたら、部屋に案内しますのでついてきてください」
2★シーン切替
〈夜になり用意された部屋にひとりでいる弘〉
弘「ど、どうしよう…、とりあえずはあの子供みたいなのに付いてきてしまったけど…。なんとかここを抜け出さなきゃ…!!」
3★シーン切替
〈翌日の日没前に2人で散歩に来てるクロウとフォード〉
クロウ「ねぇ、フォード」
フォード「…ん?」
クロウ「えっと…、昨日来たニンゲン…。僕もフォードも元々はあんな姿だったの?」
フォード「…もしかしたら、そうだったのかもね」
クロウ「覚えてないの…?」
フォード「俺達がニンゲンの姿を保っていたのはかなり昔だから…、あんまり?」
クロウ「そっか」
フォード「クロウ」
クロウ「なーに?」
フォード「もし戻れるのだとしたら元の姿に…、ニンゲンの姿に戻りたいと思う?」
クロウ「思わない。どうして?」
フォード「…何となく、気になっただけ」
クロウ「僕ね、今のスガタ気に入ってるんだよ!角とかフォードとお揃いだもん!」
フォード「…ふふっ、そうだね」
4★シーン切替
〈家に帰ってきたクロウとフォード、ピリついた空気が流れている。そして弘の姿が無い〉
フォード「ただいま戻りました」
クロウ「あれ、ニンゲンさんは…?」
マオリ「逃げちゃったよ」
クロウ「えっ…」
アゴラ「あんだけビビってたからな、そりゃそうだろう」
クロウ「今ならまだ、そんな遠くには…行ってないはず…」
フォード「聞こえる…?」
クロウ「…うん、聞こえる。助けてって…、言ってる」
アゴラ「ほっとけ、あんなただの人間」
クロウ「アゴラのいじわる!」
アゴラ「んだと、ゴラァ」
クロウ「僕だけで助けに行くからいいっ!」
フォード「あっ、クロウ!」
アゴラ「行かんでいい」
フォード「なんで止めるんですか!クロウ1人じゃカゲロウには勝てっこないのに!」
アゴラ「追っかけてどうする。カゲロウに鉢合わせたらお前も喰われて死ぬ可能性の方が高いぞ」
フォード「…っ!!」
マオリ「あっ、フォード!!危ないよ!!」
〈真っ暗な夜の闇の中に響くわずかな叫び声につられて走っていくクロウ、後を追いかけて走っていくフォード。2人を追いかけようとするマオリをアゴラが引き止める〉
マオリ「ねぇ、クロウ!!フォード!!」
アゴラ「…やめとけ」
マオリ「でもっ…、2人が…!」
アゴラ「ここに居りゃ守ってやれたのに勝手に離れたんだ、俺の知ったことじゃねぇ」
マオリ「でも、でも…2人になんかあったら…」
アゴラ「知るか」
マオリ「…そんな事言わないでよ、お願いだから」
アゴラ「ん、たく仕方ねぇ…、めんどくせぇな…」
5★シーン切替
〈森の奥まで逃げてきた弘〉
弘「くっそ、方向がわかんねぇ…!!どっちに行ったらいい…!…ひぃ?!黒いバケモン?!あっち行きやがれ!?こっち来んな!!」
〈弘を追いかけて森の奥にきたクロウ〉
クロウ「…声…、このへん…!まだ…っ、間に合う!」
〈カゲロウに狙われ立ちすくむ弘を見つけて駆け寄ろうとするクロウをフォードが後ろから捕まえる〉
クロウ「いた…!!お兄さーーーー」
フォード「しっ…、ダメ」
クロウ「んぐっ…、んん…!フォードっ!離してっ!お兄さん助けに行くんだ!」
フォード「あのニンゲンはもう手遅れだよ」
クロウ「そんな!!あの人だけでも!」
フォード「クロウ」
クロウ「お願い!手伝ってよ!なんでニンゲン助けちゃいけないの!!」
フォード「…っ!!」
クロウ「僕達だってニンゲンだったんでしょ!だったら同じじゃん!!」
〈フォードがクロウの言葉に迷いを見せた瞬間、クロウがフォードの腕から抜け出し弘の方に走り出す〉
弘「た、助けて…くれ!!」
クロウ「お兄さん!!こっち!!」
弘「お、お前っ…!昨日の…!」
クロウ「いいから!逃げるよ!!」
弘「…動けないんだよ!!お前っ、人間じゃないんだろ…、なんとかしろよ!!」
〈カゲロウの触手のようなものが弘に巻き付き、暴れる弘もろともクロウを喰おうとする〉
弘「うわぁあぁ、やめろ!離せ…!」
クロウ「このニンゲンから…、離れろ!!!」
フォード「くそ、間に合ないっ…、クロウだけでも…!!…やばいっ?!」
〈そこに駆け寄ったフォードがクロウを弘から引き離す、と同時に弘が喰われ、そして標的はクロウとフォードに向く。その瞬間光の弓矢がカゲロウを撃ち抜く〉
アゴラ「そいつらに触んじゃねぇ、バケモン」
クロウ「アゴラ…!」
フォード「…っ!!」
アゴラ「『闇と共に滅せよ』」
〈アゴラの言葉と共にカゲロウが霧のように消え去る。カゲロウが消え去ると真っ先にクロウに飛びつくと泣き出すマオリ〉
マオリ「クロウのバカぁ!心配したっ!!」
クロウ「…マオリ、ごめんね?」
マオリ「なんで危ないことするのっ!!」
クロウ「だってあのニンゲンが狙われーーーー」
〈直後、2人の後ろでアゴラがフォードの頬をはたく〉
アゴラ「馬鹿野郎、お前が追いかけて一緒になって危険に足突っ込んでどうする。お前はクロウの保護者なんだろ。だったらちゃんと引き止めろ」
フォード「…っ」
アゴラ「危うくお前らも喰われるところだっただろうが」
フォード「…申し訳ありません、ご迷惑をおかけしました」
アゴラ「おめぇもだ、クロウ。俺の言うことは聞かんでもいいが、せめて保護者の言うことは聞け。どうせお前があの人間助けたいとでも言ってゴネたんだろう、死にてぇのかアホ」
クロウ「ごめんなさい…」
マオリ「…」
アゴラ「これでわかっただろ、俺達にしてやれる事は最後をしっかり見守ってやるくらいしかねぇんだ。…死にゆくもんの運命は変えられない」
アゴラN「ここは戻る場所を失ってしまった魂が迷い込む死と生の狭間の世界」
マオリN「今日もまた魂が迷い込んでは葬り去られていく、カゲロウの餌食となって」
クロウN「僕には聞こえる、魂の悲痛な叫び。助けて、という声が闇夜にこだまする」
フォードN「手を伸ばしても助けられはしない、今までもこれからも永遠に」
6★暗転
声劇台本『Soul Grave Keeper』 @hanato47
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