メカニカル・ガールズ・ファンタジー ~アーマード・コンフリクト~
藤谷葵
第1話 異世界転生
あたしの名は
何が困っているかというと、気がついたら見知らぬ草原にあたしは立ち尽くしている。
そんなあたしにそよ風で揺れる草木だけが反応してくれる。
あたしは自分の身体に違和感を感じて確認する。いや見た目の違和感なんだが。
なんか下着姿。そしてその上から何かの金属でできたものを装備している。
頭、胸部、腰部両サイド、腕、脚、まるで鎧でも着ているようだ。だがそんなに重くはない。
スカートはあるが風が吹くとパンツが見えている。だが今はそれどころではない。まあ水着と思えばいいか。
(ここどこ? とりあえず誰かを探さないと!)
親友を探す。一緒に居たはずだからどこかにいるかもしれない。いや、親友に限らず誰でもいいからクラスメイトに会いたい。そして現状について相談したい。
場所が分からないだけに途方に暮れつつとりあえず歩く。日差しは強いが暑さは感じない。
(秋なのに日差しが強いな……)
そこまで考えてふと気づく。
(秋? この日差し具合だと夏では?)
だが、その疑問に重要性はないので後回しにする。
「お~い!
叫んでみても反応はない。声が届かない距離にいるのだろうか?
15分くらい彷徨ったであろうか。見えない壁のような物にぶつかった。
「痛っ! 何?」
あたしはそこで足を止めて確かめる。手探りで壁を触ってみると、どうやら四角い形をしているようだ。ただし、それは横に対しての形で、上の方は背が届かないのでどうなっているのかは分からない。
するとその謎の空間に何か人影が映り始める。驚きのあまり少し後ずさる。その人影は段々と実体化していき、親友の
「佳那子ちゃん!」
あたしは透明の壁をどんどんと叩く。だが、佳那子ちゃんには見えない壁を叩く音が聞こえていないのか、反応はない。
しばらくすると、佳那子ちゃんが目を開けた。それと同時に見えない壁が消えたようで、あたしは佳那子ちゃんの方に倒れる勢いのまま抱きついた。
「佳那子ちゃん? 佳那子ちゃんだよね?」
「うん? どしたん花鈴?」
優しく頭を撫でてくれる。でも直ぐに辺りの景色が目についたのか、驚きの声を上げる。
「え? ここどこや?」
「わかんないよ~。クラスの皆もここら辺にいるのかな?」
「探してみるか」
そして再び数分後。誰かがあたしたちの名前を呼んでいるような音が風によって運ばれてくる。
あたしと佳那子ちゃんは顔を見合わせて喜ぶ。そして声と思われる方向に走って行った。
「鷹野さん! 伏見さん! 無事だったんですね」
そう言ったのは学級委員長である
「お~! みんな無事だったんだね? 他の皆はまだ見つからない?」
あたしがそういうと二条さんは目をそっと閉じて、悲し気に首を横に振った。
「見つかりませんでしたわ」
二条さんの隣に居た普段大人しい芹澤さんも口にする。
「ぼ、僕も一時間くらい前からみんなを探していたけど、他の人が現れる様子はなかったです」
話をしていてみんなが押し黙る。そんな時にキュイィィンと音が聞こえた。何かと思い皆で辺りを見渡す。
するとあたしたちがいた中央に人影が見えてきた。佳那子ちゃんを見つけた時と同じだ。
あたしは確認の為に見えない壁をペタペタと触ってみる。うん、同じだ。
次はクラスメイトの誰が来るのだろうと、嬉しさがこみ上げてきた。
「ねえねえ、これって佳那子ちゃんが出て来た時と同じだよ? ひょっとして誰か他のクラスメイトが来るかも!」
そして、完全に実体化する。そこに現れたのは女子小学生のようであった。
「あれ?」
全員が驚く。クラスメイトではないことと、こんな小さな子がこのわけの分からない場所に来たことに。
そして目が開くと同時に壁も消滅する。
「ああ? ここどこだ?」
開口一番。少女はおっさんみたいな言い方をする。
「ここは異世界です。私たちは死んで転生したのです」
有森さんの言葉で、全員がまた押し黙る。
『死んで転生』
つまり私たちは死んだのだと。
押し黙る皆に励ましの言葉と言えるかどうかはわからないが、ポジティブに考える。
「私たちは死んだってこと? じゃあ、他のクラスメイトが来ないってことはここにいる人以外は、生きてるってことだよね? それはそれでいいことだよ」
そのかけた言葉はあたしも動揺していたので適切ではなかったかもしれない。有森さんと芹澤さんが俯いて悲しそうにしている。だが、二条さんと佳那子ちゃんはフォローしてくれた。
「そうですわね。犠牲者が少なかったのはせめてもの救いでしたね。他の人が亡くなるくらいならわたくしが身代わりになれてよかったです」
殊勝なことをいう二条さん。
「そやな。それに死んだと言っても転生やろ? 新たに命を授かったんだからある意味そのまま死んじゃうよりも儲けもんやない?」
ポジティブな佳那子ちゃん。そこに口を挟む少女。
「おいおい、クラスメイトってどういうことだ? あたいはクラスメイトじゃないぞ?」
「あ! そうだね。えーっと? 誰ちゃん?」
「ちゃん付けするな! クラスメイトってことはお前ら学生だろ? あたいはこれでも成人済みだよ!」
「「「ええ~!」」」
全員で驚いた。見た目幼女で中身大人。
「え? 転生してその姿になったのですか?」
とてもがっかりした感じで少女はその問いに答える。
「……あたいは元々友達にも幼女言われてたんだよ。せめて転生したのならナイスバディな大人になりたかったのに見た目そのままなのか……」
がっくりとうな垂れる。だがその少女のおかげか有森さんも芹澤さんも少し落ち着きを取り戻したようだ。
有森さんが提案する。
「じゃあ初めてお会いした方もいますので、自己紹介しましょうか。私の名前は有森真夕。クラスでは学級委員長をしてました」
流石学級委員長。みんなが仲良くなれるように自己紹介をすることにした。確かにクラスが一緒でもあたしたちはそんなに仲良しというわけでもなかった。もちろん嫌っているというわけでもないが。それに乗っかりあたしも続けて自己紹介をする。
「はい! あたしは鷹野花鈴! みんなには天然言われるけどそんなことはないと思う! 元気なだけ!」
みんながくすくすと笑う。次に佳那子ちゃんが自己紹介をした。
「うちは伏見佳那子。スポーツ系は自信あるけど勉強はだめやな」
「わたくしは二条綾乃。元華族の家系でまあお嬢様といったところでしょうか」
自分で自分をお嬢様と言っている。まあお嬢様と言うのは事実ではあるのだが。
「……芹澤梓です。文芸部でした。この世界で役に立てるとは思えませんが……」
自信なさげに芹澤さんは自己紹介をする。最後に幼女もとい大人の女性が自己紹介をした。
「あたいは
恭子さんを除いた全員が『こんな大人にはなりたくない』と考えたであろう瞬間であった。
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