『地の文の練習してみるね。…ところで地の文って…?…』

@take-radio

第1話『地の文の練習してみるね。…ところで地の文って…?…』

『地の文の練習してみるね。…ところで地の文って…?…』


よくあるチェーン店の喫茶店で、私は”彼”を見かけるようになった。


地下鉄への連絡通路の途中にあるためか、電車待ちの乗客が多いため、程良く席もまばらに空いている店だ。


平日の昼間なので、サラリーマン、大学生など個人で勉強や作業に打ち込んでいる姿が多い。


その中で、”彼”は至って目立った存在ではなかった。


でも、私は彼が毎週同じ時刻で同じ席で同じ飲み物を飲みながらパソコンに向かっている姿が忘れられなかった。妙に記憶に残っている。


私はスマホで小説を書く練習をしていたが、ふと疲労で霞む目を癒すために遠くを見ている…、ふりをしながら彼を鑑賞していた。


だいぶ前屈みになって、長く愛用して使い込んでいるであろうノートパソコンに向かって集中している”彼”。


被っている帽子の先端が何故かノートパソコンにぶつかって、その度に帽子が上下に小気味良く揺れている…いや、揺らしている。


私は、そのリズムに合わせて、軽く机を叩いてみた。もちろん音は出さずに。


不思議な事に、”彼”も軽く机を指で弾きリズムを取り始めた。もちろん音は出さずに。慣れた手つきだった。


団栗コーヒーの香りが立ち込める店内。


ガラスの向こうには、年末の予定に追われ通常より足早に進む乗客達の波。


有線から流れるのか、雑多なBGM。


客達や店員とのスロー気味な会話。


私は、連日の仕事の疲れも相まって、船を漕ぎ始めていた。


”彼”が…


”彼”が、目の前に立っていた。


”彼”と何故か視線が重なり合う。


私は慌てて、スマホに視線を落とす。


”彼”は、少し立ち止まっていたが、そのまま私の前を素通りし、そのままトイレへと入っていった。


私は、何故か目を擦るふりをしながら、しきりに高鳴る胸の鼓動を鎮めようと頑張っていた。

そう、頑張っていたのだ。

いちいち異性に照れてなどいられる年齢じゃないのだ、と自分に言い聞かせて。


しばらく自己嫌悪に陥っていた。


だが、その時…、団栗コーヒーカフェラテの入ったカップを思い切り良く肘で押してしまった。


そう、思い切りよく!


「あっ!とうっ、…僕…」


「しゅ、しみません!私、コーがーが!」


日本語でない、いや、崩れ落ちそうな日本語が行き交う。


”彼”、だった。


”彼”は…













p.s.雪の日の男女の方は、続き書くよ!…たぶん。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

『地の文の練習してみるね。…ところで地の文って…?…』 @take-radio

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る