上杉さんは女装の才能がありすぎる①げっそり月曜日編

0-1 ひきこもり、部屋を出る

「まる〜、起きてるんでしょ、ちょっと居間におりてらっしゃい〜」


 母が一階から呼んでいる。


 上杉 丸うえすぎ まるは、布団の中から顔を出し、目をこすった。



 最後に前髪を切ったのは二年前。


 すっかり伸びて貞子のようになっている。


 ひげはもともと無く、中二のときブロンソンに憧れて伸ばしてみたところ、左右頬に三本ずつ生えることが分かった。


 外出をしたのは一年前。


 肌のきめも、もとから細かく、色も白いほうだったが、引きこもり生活がこれをさらに白くした。


 胸まで伸びた黒髪と白い肌のコントラストに、母などは今の彼をして、日本人形(髪が伸びるほう)などと呼ぶ。



「まる〜! 起きてこないならハンバーグに野菜刻んで入れるわよ〜!」


 母の声が苛立ち始めている。


 上杉丸は、慌てて布団から飛び出した。




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