第2話

「え、何で集まらなきゃいけないの」


 一番初めに、キレイなお姉さん、松山マツヤマさんの部屋に行った。

 優愛が謎が解けたので皆に集まってほしいと伝えると、とても嫌そうな顔をされた。

「警察だってもう呼ベたんでしょう。余計なことしないで、大人しくしといた方がいいんじゃないの?」

「うう、ごもっともなんですが……」

 私は、反論できずに口ごもる。

 しかし、ここで引き下がるわけにはいかないのだ。

「ほら、警察が来る前に、次の殺人が起こるかもしれないじゃないですか。だから、今のうちに犯人を知っておいたほうがいいですよね」

「え、犯人、そんな連続殺人犯なの」

「いや、知らないですけど」

「え、あんた知らないの?」

 松山さんは呆れ顔を向ける。


 そう、私は知らないのだ。優愛は私にも犯人を教えてくれない。私にくらい先に教えておいてくれてもいいじゃないか、と言ったことはあるけど、いつも優愛はとびきりの美しい笑顔ではぐらかしてくるのだ。

 くそ、そんなので騙されるのは面食いと私くらいだからな!!


「とにかく、私は行かないわよ。だいたい今変に集まって、犯人刺激してどうすんのよ」

 きっぱりとそう言い切ると、松山さんは背を向けてしまった。

「そ、そんなぁ。お願いします……」

 私は慌てた。

「嫌よ」

「だって、でも……」

「……って、え?何あんた泣いてんの!?」

 松山さんは、私の顔を見て、ドン引きしたように言ってきた。

「いや!泣いてないです!」

 私は潤んだ目をあえて上目遣いにして首を振ってみせた。

「いや、その……ほら、泣かないでよ」

「うう……」

「ほら、もう。分かった分かった。行くから。食堂でしょ、集まるからさ。泣くんじゃないわよ」

「ありがとうございますー」


 よし、松山さんはこれでオッケーだ。


 私は心の中でガッツポーズする。


 私は、優愛ほどじゃないけど、どうも母性本能をくすぐる顔立ちらしい。


 ぶりっ子が涙を武器にするように、私もたまに、潤んだ瞳を武器にすることがある。

 女には効かないんじゃないかって?ふん、男にしか効果のない涙しか出せない女なんか、私からしたら三流だからね。女の母性本能をもくすぐってこそ一流のぶりっ子よ。


 情けなくなんかない。 優愛の為に、やれる手段はなんだってするだけだ。

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