誓いの勇者のハーレムパーティー、魔王討伐後に転生したら学園ラブコメはじまった。

坂神京平

【 1 】

「ねぇけいちゃん。こっちの世界でも、本当に精霊の加護を解く方法はあるのよね?」


 幼馴染の有紗ありさは、俺の顔をジト目で見据えて言った。

 気圧けおされつつも「お、おう。たぶんな……」と返事する。


 有紗は、本当に本当なのかしら、と胡乱うろんそうにつぶやいた。

 ちょっと口元をとがらせ、不機嫌そうだ。しかしそれでも、可愛らしさは損なわれていない。

 大きな瞳と鳶色とびいろっぽいポニーテールの髪。藤凛とうりん学園高等学校の制服を着用した容姿の可憐さは、ほぼアイドル並みだ。



「まあ待て、あせるなよ有紗。だって俺たち一六歳だろ」


 ここは学校の校舎三階、隅の空き教室前の廊下だ。

 俺は、立ち話を続けつつ、窓から校舎の外を見た。

 校門側の前庭にある大時計は、午後三時四〇分を指している。

 五月下旬の放課後は、まだ下校していく生徒の姿もまばらだった。


「まだ高校二年生じゃないか。あわてて将来のことを心配するほどじゃない」


「……いっつも慧ちゃんってそうだよね、無駄に楽観的だから心配なの! 前世で魔王城へ乗り込む直前もそうだった!」


 ひとまずなだめようとする言葉に対し、しかし有紗は反発した。


「あのときも『誓いの精霊』の加護を授かりたい、すぐに魔王を倒せば大した面倒なことはないからって。あっさりと要求された条件をんじゃって! そのせいで私たち、今のままじゃもう一生、幸せになれないかもしれないんだよ!?」


「い、いやいや、何言ってんだよ! 俺だけじゃなく有紗や他の仲間だって、あのときはみんなそれでいいって言ったじゃん! 俺一人の責任かそれ!?」


 一方的に批難され、たまらず俺も反論した。

 すると有紗も、自らの非に思い当たったらしい。気まずそうに横へ目を逸らす。


「うっ、うう~……それはそうなんだけどぉ……。こんなことになるとは思わなくて……」


 そりゃ俺だって、こんなことになるとは思っていなかった。

 いや前世のパーティーメンバー全員がそうだったに違いない。


 だが現実には、予期せぬ事態に遭遇してしまった。

 そうして、少なくとも俺や有紗は困惑したまま、現世を新たな世界で生きている――……

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