第36話 天誅



アカマツ「ひっく・・・・ひっく・・・・。あぁ・・・・うっぷ・・・・」




 大男のアカマツは、にしまの地元の近くでお酒を飲んでいたようです。島から逃げ出したノブハラとハクの捜索はどうしたのでしょうか・・・・。




 ハイバラの部下のアカマツはお酒が大好きで、各地で好きな飲み屋を作り、飲み歩いていました。



 ・・・傍から見ても、かなり酔っているようでした。




 店が閉まっている昔からある寂れた横丁でいつものスーツ姿で歩いていました。




 ・・・・・・・・・・・




 ・・・・・・・・・・



 ・・・・・・・・・・・





ノブハラ「・・・・・・・・・・・」





 ノブハラは看板の上から飛び降りながら、金属バットを振り下ろしました!!




 ガコッ!!!!




アカマツ「・・・・っ!!!????」




 アカマツはバットのクリーンヒットをモロに受けますが、お酒で痛みが無くなっているようで、血を流しながらこちらに向かってきます。





ノブハラ「・・・おいデカブツ!!久しぶりだなぁ!!」







アカマツ「あ??・・・・・・お前あの時の・・・・




・・・小僧じゃねぇかぁああああああ!!!!!!」





 向かってくるアカマツを更にバットで殴り、素早さを活かしてヒット&アウェイで攻撃を繰り返します。




ノブハラ「尻尾を出すこの時を待ってたんだぜ俺はよぉ!!」




 いよいよ出血具合も酷くなってきて、その場で座り込んでしまうアカマツ・・・・。




ノブハラ「おい、ハイバラとイツキはどこ行った?!」





アカマツ「はぁ?・・・・・なんでてめぇに・・・そんなこと教えないといけねぇんだ馬鹿野郎・・・・。」




ノブハラ「・・・・・・・・」




 ノブハラにとってこいつは・・・・もう憎しみしかありません・・・・。酔って無防備状態を狙っていましたので・・・いつでも殺せます・・・・。




 ドンッ!!




 ノブハラは後ろから来た人間から横に突き飛ばされます。





フウロ「・・・聞く必要があるからに決まってんだろうがぁ!!!」




 ハクの兄のフウロが後ろから突如現れてドリルでアカマツの耳を突き刺しました。





 ウィィィイイイイーン!!!!!!!!!!!!





アカマツ「あああああああああああああああ!!!!!!!!!」





 耳を守ろうと手で覆いました。





 左手でアカマツの頭を掴み、その覆う手の上から更にドリルで大きなビスを打ち付けました。




 ウィィィイイイイーン!!!!!!!!!!!!ガガガガッガ!!!





フウロ「お前、うちの妹えらい目に遭わせてくれたらしいじゃねぇか!!!!どうだったんだ?!俺の妹はどうだったんだ!?」




 寂れた横丁に断末魔の叫びが響き渡ります。




ノブハラ「・・・・・・・・・・・」




トビシマ「・・・親父、こいつも絡んでます。こいつに任せている店でアカマツと結託して、アガリを大胆にちょろまかしてました。店と事務所詳しく調べさせてます。」





 ドサッ!




 顔を殴られて血だらけになっている男をアカマツの真横に投げました。




トビシマ「やったこと分かってんだろうな!・・・お前らこれから、性根入れろ!なぁ!意味わかっとるだろう?!」




 暫くしてフウロは口を開きました。




フウロ「ほぉ・・・・・・。おいアカマツ、こんなうちのガキまで使って・・・・お前本当に俺に対して恨みがあったんか?チンピラの分際で俺に弓引くなんていい度胸してるじゃねぇかこの野郎。・・・それにこの辺りはお前んとこのソウマのシマだよな。自分らのとこの店だと思わなかったのか?どうせソウマから行けと言われたんだろ?ちゃんと調べたんか?取り交わした治外法権の内容の事を。そういう部分だぞ。お前はソウマにハメられてんだよ。そういう本質的な部分を毎回毎回お前は分かってない状態でやるから、お前は何年経っても上からどこも任されずに一人でプラプラ。いつも上から上手く使われて挙句の果てにハメられる体力だけの本当の馬鹿だから、ハイバラの上には行かれねぇんだ。下剋上キメるくらいのしたたかな気持ちでいつも居ないとさ。駄目だぜホントに・・・・。」




 タバコに火をつけるフウロ・・・・・。



ノブハラ「フウロさん・・・・・・。もう死んじまいそうな奴に、そこまで言う必要ないだろ・・・・。」



フウロ「おめぇは黙ってろ。どうせ大して聞こえてないんだから。」




 フウロは全て分かっていました。ハクの島の件と、自分の仕事の件でアカマツが同時に絡んでいたとこが判明し、行動に移しました。



 部下のトビシマからはアカマツが最近この辺りを度々訪れている事を聞いていたのです。影にはソウマの存在がありました。遠くから虎視眈々と、フウロの首を狙っていました。その為に普段から単独行動をしているアカマツを利用しました。その完全な証拠はありませんが、流れを考えるとしっくりきてしまいます。あまりにも落ち着いてしまうのです。




アカマツ「・・・う・・・・あんた・・・こんな事して・・・・・・。」




フウロ「・・・・・・」




 アカマツが何か話し始めた所で、フウロのトーキックで鼻を思い切り潰されました。




ノブハラ「・・・・・・・・・・・・・・」



 この地獄のような状況・・・・・もうさっさと楽にしてほしいだろう・・・・。なのにこのフウロは、罪を噛みしめさせようとしています。最後の最後まで、罪を噛みしめさせようとしています。




トビシマ「用意が出来ました。」




フウロ「ノブハラ、ちょっとお前・・・・ついて来い。」




 寂れた横丁から少し歩き、大きな通りに出ると、そこには黒光りしたフウロのレクサス2台と古いセダンの車が1台停まっており、その付近にジャージ姿の男3人と、スーツ姿の男性が2名立っていました。




全員「ご苦労様です!!」




 全員深々とこちらに向かって一礼するとジャージ姿の男達がさっきまで居た横丁に入っていきます。



 フウロは何も言わず開けられたレクサスの後部座席に乗り込みました。



フウロ「お前も乗れ。」



ノブハラ「え?・・・・いや、いいよ別に歩いて帰るし。」



 顔を歪めるフウロ。




フウロ「帰る?・・・何言ってんだお前は・・・。・・・乗れっつってんだろうが。」




 真後ろにトビシマが立っており、絶対に帰れそうにありませんでした・・・・。



 言われるがまま、仕方なくフウロの横の席に座りました。




 動き出す車・・・・・。




 助手席にはトビシマが乗り、先程のスーツの男性が運転をしていました。




 暫く無言でした・・・・・・・。




 少し時間が経った時にトビシマが小声で運転手と言葉を交わしました。



運転手「・・・はい、わかりました。」




 このまま俺は・・・・用が済んだ俺は殺されてしまうのでしょうか・・・・・・。でもまだ、ハイバラとイツキが生き残っています。まだまだやる事はあるのに・・・・・。




 繁華街を通った際、何人かこちらに一礼する人間達が居ました。恐らくフウロの部下達でしょう・・・・。助手席のトビシマが周りを確認していました。



 繁華街を抜けて、そのまま俺達を乗せる車は山の方に向かいました。



 車内が静かになり、そこでようやくフウロは口を開きました。



フウロ「おい、ノブハラ」



ノブハラ「・・・・・・」



フウロ「妹の件だけどな・・・・・。」



ノブハラ「・・・・・・・」



フウロ「ぁりがとな」




ノブハラ「は?・・・・・・」




 小さい声で殆ど聞こえませんでしたが、確かにそのように聞こえました。




ノブハラ「・・・ああ・・・・・」




フウロ「なぁ・・・ハクは俺が生きている事を知ってんだよな?」




ノブハラ「・・・手紙を一緒に読んだから、知ってるよ・・・。」



 そこから一言も車内で会話は無くなり・・・・・山の麓に差し掛かりました。この辺りは河川が流れているのですが、更にその河川を走って行きます。


 結構な距離を走っていました。


 気がつけば前にレクサスと古いセダンが走っていました。




 そのまま、河川付近の廃車場に到着しました。



 車を降りると、老人が門の前に居て鍵を開けてくれました。



トビシマ「・・・おう、いつもすまんな。」



老人「・・・いえいえ・・・・とんでもございませんトビシマ様・・・。」




 老人はトビシマから封筒を受け取り、車が全て入った後に再び門の鍵を閉めました。



ノブハラ(なんなんだよあの老人・・・・・。門番?)




 奥まで行くと車は停まり、暗闇の中全員車から降りました。




フウロ「ノブハラ、ちょうどうちにな、ゴミ積んで捨てる車があったんだよ。・・良かったよ。ちょうどな・・・良かったんだよ・・・・」



ノブハラ「・・・・何?・・・・何しようとしてるんだ・・」




 慣れた手つきで、男達は現場用の照明を点灯させ、目の前にあった見た事も無い機械を動かし始めました。



 古いセダンにアカマツとボコボコに殴られた男を乗せたまま、そのまま思い切りプレスされました。




2人「ぎゃああああ!!!!やめてくれぇ!!!!ああああ!!!・・・・」






 グシャ!!・・・ギリギリギリギリ・・・・・





 2人の断末魔の叫び、先程から何度も聞いている断末魔の叫びを再び聞き、セダンはあっという間に小さい鉄くずになりました。




 それを煙草を吸いながら無表情で見届ける集団・・・・・・。




フウロ「・・・俺達ってのはさ、こういう事しか出来ないんだよ。」




ノブハラ「は?・・何言ってんだ?・・・・・・これって・・・・・」





 ・・・・・・




 ・・・・・・



フウロ「お前・・・俺のとこに来るか?」




 照明が消えて暗闇の中、フウロが問いかけます。




ノブハラ「俺にはおやっさんが居るから・・・。ペンさんも・・・・・。」




フウロ「そうか。」




 フウロは胸元から拳銃を出し、こちらに向けてきました。



フウロ「・・・・・・・・・・」





ノブハラ「・・・・・・・・・・・」




 暫く静寂が流れました・・・・・。拳銃を向けられています・・・。




フウロ「くれてやる」




 覚悟していました・・・・・・俺もここで一緒に殺されるんじゃないかと・・・・心の片隅で思っていました・・・・・。




 もうハクと会えない・・・・・。





 唇を噛みました・・・・・。





フウロ「プレゼントだ。」




 フウロは向けた拳銃をくるりと返して渡してきました。





ノブハラ「な・・・・なんだよ!!・・・・・。ビックリさせんなよ!!・・・・。」





フウロ「もしこれから落ち着いて・・・ハクに会ったら、一度俺に会いに来るように言ってくれ。衣食住の面倒は見るから・・・・。まぁ・・・でも来なくてもいい。よく考えたらもうあいつはいい歳だよな?・・・・大人だ、あいつにはあいつの考えがあるだろうから。人の人生の邪魔をするつもりはない。」




ノブハラ「・・・・わかったよ。」



フウロ「まだやる事があるんだろ?これ(拳銃)はその時の為に持っとけ。」



ノブハラ「ああ、ありがたく使わせてもらうよ。」




 ・・・・・・・・・



 ・・・・・・・・・



フウロ「・・・まぁ頼むぜ。義理の弟!!」




 笑いながらフウロは言います。ここは俺も・・・。




ノブハラ「はぁ?!まだそこまでの関係じゃないってのに(笑)!・・・何言ってんですかお義兄さん!!」



2人「はっはっはっはっはっはっは!!」





 急に肩を組み笑いあう二人・・・・。




 はっはっはっはっは・・・・・・





 はっはっはっはっは・・・・・・





 ・・・・・・・・・・・・・・




 ・・・・・・・・・・・・・・




 ・・・・・・・・・・・・・・




フウロ「・・・お義兄さんて・・ぶっころすぞお前!!!」




 バキッ!!




 うっ!!!





 少し調子に乗った所、かなり汚い言葉で腹を思い切り殴られました・・・・。





 初めてトビシマやその他フウロの部下達の笑顔を見ました。



 というか、普通に笑えるんかいこいつら全員!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る