第3話 月光
私は自分の会社の事務所で恐れおののいていました。
激怒している父に私は完全におびえてしまったのでした。
今までこんな表情で父に怒られた事など無かったのです・・・。
動悸が激しく、止みません。
ドクンドクン・・・・ドクンドクン・・・・・。
・・・・・・・・
急に冷や汗もかいてきました。
涙も出てきました・・・・。
精神に異常をきたしてしまったようです・・・・・。
ハク「・・・・お父ちゃん?・・」
父「ハク、お前は兄貴分のダマテの言う事が聞けないんだな?」
ハク「・・・・・・だって・・・・」
父「俺はそんなぬるい序列の会社にした覚えはないぞ!!」
ハク「ご・・・ごめ・・・」
父「クビだ!出ていけお前は!!・・・そこにお前のリュックを用意した、それ持ってさっさと出ていけ!!」
あれだけ私に優しかった父は、今日だけは全くの別人でした・・・。
勝手に涙がボロボロと出てきます・・・・。
まさかこんな日が来るなんて・・・思ってもいませんでした。
ダマテ「ハク・・・・あのな・・・・。」
ハク「・・・おとう・・・・・・」
父「黙れ!!いいから出ていけ!・・・・・ダマテ、任せたぞ。」
・・・・私が最後に見た父の姿は・・・・
・・・・背中でした・・・・。
背中・・・・・。
ダマテと私は事務所の裏口から外に出ました・・・・。
どうしてこのような事になってしまったのでしょうか・・・・。ダマテの言う事を素直に聞いていれば父から怒られることはなかったのでしょうか・・・・。
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
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事務所前の通りに、5名のスーツ姿の男達が歩いていました。どうやら私の会社に向かっている様子でした。
カツカツカツ・・・・・
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裏路地からペンが出てきました。
ペン「おい・・・・お前らこれからどこに向かおうとしてるんだ??」
ピタッと止まります。
タバコを吸っている先頭の男が、口を開きました。
男「・・・おっ辺見か。・・・・出て来たな。・・・あんた・・・部下をどこに隠してるんだ。隠してるとロクな事ねぇぞこの野郎・・・。」
目つきは鋭いですが、なんだか不気味に笑っているように見えます・・・・。
いや、・・・それは気のせいだったのでしょうか・・・・。一切笑っていません・・・・・。どっちなのでしょうか・・・・。
ペン「俺に部下は居ない。全員クビにした。無関係だ。」
男「無関係ね・・・・。イツキ、お前らにここ任したわ。俺は叔父貴に用事が有る。あくまでも叔父貴に用事があるんだ。いいか、わかったな?」
イツキ「はい、わかりました。」
ペンの前にイツキ達が立ちふさがります。
ペン「・・・おいイツキ、どけ。」
イツキ「はぁ?・・・この野郎・・・・誰に向かって命令してんだ?もうあんたの言う事を聞く必要は俺達にはねぇだろ。」
イツキはそう言いながら、無表情でペンに詰め寄ります。
ペン「ここで俺とやり合うか?」
イツキ「やり合う??・・・合うってなんだよ・・・。あんたが一方的にやられるだけだろ。」
イツキの後ろに居た大柄な男が、大きな腕でペンの肩を掴みました。
ガシッ!!
ペン「・・・・なんだこの木偶の坊は・・・・。」
・・・・・
ペンは一回転し、大柄な男の顎めがけて拳を突き出しました。
バキィィ!!!!!・・・・・・
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・・・・・・・
・・・・・・・・
その場で膝をつくペン・・・・・。
ペン「かはっ!!!!・・・・」
しゃがんだ体制のイツキの拳が完全にペンのミゾオチに入っていました・・・・。
イツキ「立てコラ・・・。」
イツキはそのまま・・・・・
背負い投げでペンを地面に思い切り叩きつけました。
・・ドンッ!!!!
ペン「・・・・・・あっ・・・あっ・・・・兄貴・・・・・・。」
イツキ「一体・・・・・・どんだけなまってんスカ。拍子抜けしましたよ、親分。」
後ろにいた他の人間がイツキにナタを渡しました。
ペン「は・・・ハク・・・・・・。逃げろ・・・・。」
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イツキ「・・・・・地獄で会えるだろ。」
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月光が、ペンと彼らを照らしていました。
戦いが始まりました。いよいよ、私達の敵である不気味な集団は火蓋を切りました。
日本の片隅、こんな小さな島に、戦いの狼煙が上がったのでした。
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ガチャ・・・・・。
ゆっくりと事務所の入り口が開きました。
目つきの鋭い、少し髪の長いスーツ姿の男が事務所にゆっくりと入ってきました。
男「・・・・・・・・」
父「・・・・・・・・」
男「・・・・叔父貴、お久しぶりです。」
一礼するそのスーツ姿の男・・・・。
父「・・・お前にその呼び方で呼ばれる筋合いはない。俺はもう足を洗ったんだぞ。」
男「・・・そうでしたね。」
事務所にやってきた男は微動だにしません。ピクリとも動かず、気づけば瞬き1つせず真っすぐ父の方を向いていました。
父「・・・・ハイバラ(牌原)、いつからこの件に関わってたんだ?・・・・」
・・・・・・・・・・・・・・・
ハイバラ「・・・そんな事を・・・・叔父貴に言った所で、俺になんの得があるんですか?」
父「手を引け。この島を乗っ取るつもりなんだろう??だれが裏で関わってる?・・・」
ハイバラは煙草に火を付けました。
ハイバラ「叔父貴・・・・すいませんが俺にも立場ってもんがあるんですよ。何故昔は俺達と同じことをやっていたのに、いざ立場が変われば、俺達の邪魔をするんでしょうか?なんだったら俺達よりも酷いことをやっていたのに、・・・道理に合ってないでしょう?手のひら返しなんていう都合のいい綺麗な日本語を並べて綺麗に纏めて貰ったら困るって言ってるんですよ。素直に降伏をして下されば、辺見もダマテや小僧たちも地獄に行くことはなかったのに。」
暫く静寂が続きました・・・・・・。
この島で会社を立ち上げて、島民から感謝をされてきました。社会貢献を少なからずしてきたのです。奪う者と奪われる者の2種類があって、たとえ現状が後者でも簡単に引き下がる事など父には到底出来なかったのです。この父の思いは何かの拍子で、反故にされてしまいますが、この島の島民が暖かく迎えてくれた事に対しての恩義だけは忘れてはいけないと思ったのでした。
父「・・・・あのなハイバラ、うちの社員達は覚悟が出来てる。そんなくだらない事で俺が悲しむとでも思ってんのか?・・・お前もわかってんだろ?」
・・・・・・・
ハイバラ「当然分かってますよ、・・・でも、娘もですか???」
父「・・・・・!!!・・・・・・・」
ハイバラ「叔父貴、聞こえていますか?・・・・・娘もですか?と聞いているんです・・・。この俺に説教して貰ったら困りますよ。・・・それはあんたが昔、・・・もう随分前に俺に教えたんだろう。もう俺に教えた事も忘れたんですか?・・・・ボケがはじまってるんじゃないです?平和ボケからのボケが。」
父は昔、とある会社の一角を任されていたリーダーでした。一緒に島で仕事をしていたペンちゃん(辺見)もダマテも父の部下でした。
このハイバラという男・・・・・。若い頃、父に教えを乞いて、暫くの間一緒に居た事があったそうです。私もほんの少しですが昔、父から彼の話を聞いたことがありました。
虎視眈々と下剋上を目指していました。相手が一番困る瞬間、一番頭を悩ます瞬間・・・・この日が来るのを待っていたのです。仲間のふりをして潜伏し、狙っていたのでした。父が会社を辞めた後も、その思いは何一つ変わっていませんでした。
父「・・・・おい・・・。」
ハイバラ「はい。なんでしょう。」
ハイバラは煙草を消しました。
父「俺達がお互いの目標を果たす為に、ぶつかるのならそれでいい。そういうもんだから・・・・。」
ハイバラ「・・・・・・・・・・・・」
父「俺達の正義、そしてお前達が言う正義。一体どちらが正しいと思ってんだ?俺達だけならまだしも、罪のない人間を巻き込んでそれでもお前達の正義は正義と胸を張って言えるのか?!・・・1人の男としてどうなんだハイバラ!!」
ハイバラ「・・・・娘は特別だから、違うって言うんだな・・・・。・・・そうですか・・・。」
父「表出ろハイバラ!!・・・この刀でどちらが正しいか、決着をつけるぞ!!!受け取れ!!」
父は刀を1本ハイバラに投げました。
ハイバラ「・・・・叔父貴・・・・申し訳ないですが、もう・・・そういう時代じゃないんですよ。」
と少し笑いながら言って、懐に手をやりました。
父「・・・・・」
・・・・・
・・・・・パン!!!パンパン!!!パン!!
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