062 神からの贈り物
俺たちが自衛隊駐屯地へ避難をして数日が経った。
自衛隊と探索者で協力し合い、ダンジョンから溢れ出るモンスターも迎撃が問題なく行えるようになってきた。
総一郎さんや冴子さんのように治療系のスキルなどを保持した人も数名いたため、駐屯地内は落ち着きを取り戻しつつあった。
あの日までは……
そう、またもあの不愉快な声が聞こえたて来たんだ。
『あ~あ~あ~。聞こえますか~。マイクテスト、マイクテスト。ウォッホン!!』
俺たちはこの声の主を忘れたりはしない。
俺たちの地球をこんな世界にした張本人の声だ。
『こ~~~~~んに~~~~~~ちわ~~~~~~~~~!!神です!!』
またもふざけた話し方だ。
周りの人たちも上空を見上げながら、怒りを顕わにしている。
今すぐにでもこいつをぶちのめしたい。
そう言わんばかりの殺気だ。
『さてさて、僕からのプレゼント、受け取ってくれたかな?な~に、お返しはいらないよ?だって僕は神様だもの。』
くそ!!あいつは人をイラつかせる天才なのか?!
ん?待てよ?プレゼント?
まさか……
『いや~、諸君があまりにも慎重すぎて、全然進化が進まないから手を出しちゃった。てへっ!!』
まさか……
まさかまさかまさか!!
『強制進化の為にゲームステージを一段上げちゃいました。おかげでダンジョンスタンピード発生したでしょ?対応できた人は何人いたかな?今まで頑張ってきた人はちゃんと生き残れたと思うんだけどな~。頑張ってこなかった人は……僕の世界にはいらない。』
さっきまでのお茶らけた空気が一変。
自称神からの殺気が大瀑布のように襲い掛かってくる。
俺ですら足が震えたのだから、そうじゃない人たちはひとたまりもなかったと思う。
『それと~。いきなりピ~~~~~~~~ンチ!!じゃあ、可哀想すぎるから、僕から何個かプレゼントをあげるね?♥』
ピロリン
するといたるところから前に聞いた音が鳴り響く。
俺は慌てて、スマホを取り出す。
個人情報▼
インベントリ▼
特に変わったところはない。
いったい何なんだ。
『君たちのステータスを少しいじらせてもらったよ。あとで確認してね~。それともう一つは全員にステータスボーナスポイントを100づつプレゼント。僕って太っ腹~~~~。』
くそ!!
ぶん殴りてぇ~~~~~!!
『最後のプレゼントだよ~。この現状を終わらせる方法を教えま~~~~す!!それは~~~~~!!』
『15人の【魔王】を倒すことです。ただし、魔王もただ手をこまねいているわけではないですよ?魔王だって死にたくないですからね?抵抗してきます。つまり、ダンジョンの成長が今までよりも早くなるってことですね~。頑張って攻略してくださいね~~~。』
そう言うと自称神の姿が上空から霧散して消えていった。
言うことだけ言って帰っていった感じだな。
『あ、言い忘れてましたが、また進化が不甲斐ない場合はもう一度地獄を味わってもらいます。』
これを最後に自称神の気配は感じられなくなった。
俺は家族の元へ行くと、父さんたちが抱きしめ合って泣いていた。
美鈴も泣きはらした目で俺を見つめる。
「お兄ちゃん……佐奈が……茂君が……おじさんたちが……スタンピートに巻き込まれたって……。」
ガン!!!!!!!
俺は無意識に壁を殴りつけていた。
探索者としてレベルやステータスを上げていたせいか、コンクリートの壁がへこんでしまった。
あのイカレタ自称神のせいで……くそが!!!!
「父さん。誰も助からなかったのか?」
「茂君が一命を取り留めたみたいだ。自衛隊員が間に合ったようで、命に別状はないそうだ。ただ……」
「ただ?」
「両足を失ったそうだ。そして、佐奈ちゃんを目の前で……なんでこんなことに……」
俺は怒りを抑えるのに必死だった。
おそらく茂君は立ち直れないかもしれない。
最愛の人を失うだけでなく、穢されたのだから……
俺は無言で家族の元を後にした。
俺が向かった先は……一ノ瀬さんのところだ。
コンコンコン
「はい。」
「中村です。」
「中村さんですか。どうぞ入ってください。」
俺の姿を見た一ノ瀬さんは、一瞬ひるんだが気を取り直して、俺にソファーに座る様に勧めた。
「それで、どんなご用件なんでしょうか。」
「一ノ瀬さん。俺にダンジョン攻略……、魔王討伐を手伝わせてください。」
「それは最前線に出るということですか?」
「はい、でもすぐにではありません。ダンジョンでスキルとレベルを上げます。そして、もう迷うのをやめました。俺の力はおそらくこのためにあるんでしょうね。あの腐れ自称神に俺に力を与えたことを後悔させてやります。」
「そうですか……我々としては歓迎ですが。おそらく狙われますよ?」
「構いません。すべてを蹴散らします。」
「相手が同じ〝人間〟だったとしても?」
「必要ならば躊躇するつもりはありません。俺を邪魔するなら、俺の糧になってもらいます。」
自分で言っていて、かなり過激な発言なのは理解している。
しかし、もうそう言っていられる段階は過ぎてしまった。
この国のトップが魔】であるならば、それに組する者達と争うことになる。
相手は俺を殺すことはいとわないだろう。
躊躇せずに俺を狙ってくるだろう。
俺が覚悟せずに突撃したところで脅威にすらならない。
ならば俺が抑止力になってやる。
邪魔をするなら命をかけろと。
きっと俺はここまでする必要は本当は無いのだと思う。
でも、ここで何もしないでただ流されたのだったら、きっと後悔する。
だから俺は戦うことを選んだのだ。
「中村さん。そこまで気負わなくても大丈夫ですよ。我々もいます。中村さんには仲間もいるでしょう。大丈夫です。」
「すみません。冷静さを失っていました。」
「いえいえ、中村さんの気持ちは伝わりました。共に頑張りましょう!!」
俺と一ノ瀬さんは握手を交わし、今後についての話し合いをした。
まあ、覚悟はできたのだが、レベルが全く持って足りない。
ステータス値はある程度追いついているが、スキルが全く追いついていない。
最前線の探索者たちはスキルレベル20に届かんとしているところらしい。
俺は俺でレベルを犠牲にする必要があるため、なかなか追いつくことができないでいた。
「中村さん。これは自衛隊で集めた情報をですので内密に願いますが、どうやら50レベルを超えたあたりでスキルの習得が加速しているようです。ですので、一度50レベルまで上げてみてはどうでしょうか?もしかしたら有用なスキルが創れるようになるかもしれません。」
おそらく自衛隊員には50レベルを超えた人たちが増えてきているのだる。
もしかしたら100レベル近い人もいるかもしれないな。
この前ネットニュースで見た限りでは、世界最強パーティーのレベルは80オーバーだって話だ。
日本のパーティーの中堅どころで團姉弟率いる「難攻不落の城壁」が頑張っていたそうだ。
ただ、スタンピート以来話を聞かないので、どうなっているのか。
カイリ達とは連絡が付き、後日こちらの駐屯地へと移動してくるそうだ。
カイリ達も家族と一緒にシェルターハウスへ逃げ込んだようだけど、日に日にモンスターの攻撃が増してきたそうだ。
自衛隊・警察で見回りを行い駆逐をしているたけれど、離れた位置の防衛はかなり厳しいものがあるそうだ。
ここの自衛隊駐屯地では、シェルターハウスに逃げることができた4700名を受け入れることにしたらしい。
そのほかにもいくつものシェルターハウスがあったが、移動を拒む人たちもおり、希望者だけを移動させていくそうだ。
残った人たちは……それはあくまで自己責任だ。
そこまで協力することはできないというのが結論らしい。
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