10 香りが紡ぐ未来

調香室の扉を叩く音が響いた。

それは、涼音の香りを狙う吸血鬼たちの来訪だった。


「涼音、開けろ。その香りはお前だけのものじゃない。」

冷たい声が扉の向こうから響く。


涼音は完成した香水瓶を手に取り、静かに扉を見つめた。

「この香りは、誰かを支配するためのものじゃない……。」

そう呟き、彼女は扉を開けた。


外に立っていたのは数人の吸血鬼たちだった。

彼らの目は欲望に輝き、その手には武器が握られている。


「その香りを差し出せ。さもなければ、お前をここで葬る。」

彼らの脅迫にも、涼音は一歩も引かなかった。


「この香りを渡すわけにはいかない。これは、吸血衝動に苦しむ者の救いのためにあるものだから。」


彼女は香りを纏い、その力を全身で感じながら、彼らに一歩近づく。


香りが空気を満たし、吸血鬼たちの目に動揺が広がる。

その香りは彼らの衝動を抑え、心を静める効果をもたらしていた。


「これは……。」

吸血鬼の一人が呟く。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る