くだらない×ありえないに生きる男子高校生達のお話

椿野れみ

第1話 くだらなすぎる話が始まる

「これから真剣にくだらない事をやっていきたいなって思うんだけれど、どうかな?」

 若月刹わかつきせつの疑問、いや、「答えは良いよかイエスしか受け入れないよ」と言わんばかりの強制参加の始まりに、彼を囲っている他二名はグッと顔を歪めた。


「えーっと、どういう事っつーのは聞いて良いのか?」

 困惑を覚えながらも、早々に従うが吉と白旗をあげたのは、藤井蓮飛ふじいれんとである。


 刹は蓮飛の質問に柔らかく相好を崩して「どういう事もなにも」と、語り出した。

「俺達で、くだらない事をやっていくだけさ。うーん、そうだな。具体的に言うと……ある一定層には受け入れられるけれど、ある一定層には受け入れられない面白さの追求、かな」

 フフッと純真な笑顔で結ばれた答えに、「つまり」ともう一人の困惑者である、鬼塚海里おにづかかいりが口を開く。


「若が言いたいのは、くだらないを忌避するPTAとかには到底受け入れられない面白さをやっていきたいって事か?」

「そういう事だね」

 刹は満足げに頷くと、「どう?」と再びニコリと目を細めた。


 その笑顔に、蓮飛と海里は「どうもこうも……」と弱々しく互いを見合う。


「俺はね、昨今陰鬱な事ばかりが起きるから、嫌な毎日に何か笑いをって思ったんだよ」

 だって、病むより笑える毎日の方が良いだろ? と、刹は軽く手を広げて言った。


「突きつけられた提案が提案だけに、きっかけと志がまともすぎてビックリだわ」

 蓮飛が苦々しく突っ込むと、「立派ではあるがな」と海里が小さく肩を竦めて追随する。


「素人が下手にそういう事をすると、ド滑りして痛くなるだけだ。文字通りの笑い種にしかならないぞ」

「冷笑も、一応、笑いではあるからね。構わないよ」

「……それに、意図的にやっていこうってものでもないだろう? どこかわざとらしくなって、見るに堪えない様にも思えるが」

「そこは上手くバランスをとってやっていくつもりだよ」

 海里の窘めを刹は微笑一つで完封した。


「じゃあ、良いよね?」と確認を入れてくる刹を前に、蓮飛と海里は再びお互い顔を見合わせる。


 ふうと嘆息が、二つの口から零れた。そして

「わーったよ」「賛同しよう」

 と、二つの白旗が同時に天頂に辿り付き、ひらりひらりとはためく。


「ありがとう、嬉しいよ!」

 刹は満足げにパンッと手を打ったのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る