EPIC
浅野エミイ
Days
クロスワード
1‐1
俺の名前は松山ヒロアキ。
そろそろ就活に力を入れないといけない、崖っぷちの大学4年次だ。
……とは言っても、なんとか単位は取れてしまっているので、
卒論さえ出せば留年の心配はない。
だが、卒業にたりうる単位と卒論を準備すれば就職浪人にはなれず、来年の春にはどこかの会社なり役所なりに就職していないとまずいことになる。
就職浪人……ま、留年っていうのもどうかとは思うけど、今社会に出るのは情勢がよくない。
「やばいな……。でも働くなんて、クソ面倒くせえ」
自慢じゃないが、俺はバイトすらしたことがない。
理由は明瞭簡潔。面倒だからだ。
バイトする時間で、他のことができる。
まぁ、自分の時間を売った対価が給料だと言われれば、それまでだが。
じゃあどうやって金を稼いでいるかって?
その方法がこれ。
『クロスワード』の雑誌だ。
他にも数独やクイズの雑誌も買っている。
俺の自慢できる唯一の特技は、『クロスワードやパズル、クイズが得意』だということだ。
いわゆる懸賞雑誌への投稿。
これで現金はもちろん、ありとあらゆるアイテムが手に入る。
現金はそのまま使えるし、アイテムは中古で売り払う。
賢いやり方だ。
「さて。だけどこのままずっと、クロスワードで生活していくわけにはいかないもんなぁ……。だけど今日はもう夕方だもんな。今から何かできるわけもない。やっぱ今日のところはクロスワードでもやって、明日から本気出すか」
こうして俺はまた、クロスワードの雑誌をぺらっとめくる。
クロスワード……。
どの問題から解こうかな。
とりあえず現金が当たるものか、高額な景品から選ぼう。
「お、これは……『お楽しみ景品』?」
細かい説明を読んでみても景品は何かわからない。
しかし、かなり貴重なものらしいことはわかった。
「『お金では買えない素晴らしいものをプレゼント』か。たまにはこういう懸賞に応募してみるのも悪くないかな」
俺はさっそくこのクロスワードを解くことにした。
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