囚われた影
黒い猫
第一章:オカルト研究会
第1話
「ふぁ……」
毎日ほぼ同じ時間に起きてほぼ同じに朝食を食べてニュース番組を見る……。
こういった「日々の積み重ね」が多分「ルーティーン」というヤツだと私自身思っている。でも、もはやここまで来ると「このルーティーンを崩したくない」という気持ちすら出てきてしまうのだから不思議だ。
「はぁ」
ほんの少しの脱力感を覚えるけど、それは決して風邪を引いているという訳ではない。むしろこれも含めて「ルーティーン」になっている。
ただこれが「一般的な朝の過ごし方」なのかは分からない。でも、これが私、
正直、朝食の後の過ごし方は休日と学校がある日とでは多少の違いはなあるのだけれど、朝起きてからの過ごし方は「学生」が始まった年。つまり「小学生」の頃からの話なのでたまにふと「そういえば……これが普通なのかな?」と思う事があるくらいだ。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
『それでは現場を呼んでみましょう。酒井さん』
顔を洗い終えて朝食を食べにリビングへと向かうと、ちょうど点いていたいつも見ているのニュースで「いつもの様に」神妙そうな表情のスーツを着た男性アナウンサーが下の原稿用紙を確認し、現場にいる記者を呼んだ。
『はい、こちら現場の酒井です。現場はこちらの――。被害者は――』
真剣な表情で状況と被害者を伝える記者の声と共に画面には被害者と思われる女性の写真……いや、制服を着ているから学生時代に撮られた卒業式の写真だろう。
「あ」
それにしても、なぜ今の写真を使わないのかな……なんて思ったけど、それ以上に写真を出す必要はどこにあるのかなとすら思う。
「――同い年か。可哀そうに」
なんて思いながらも小さく他人事の様に呟きつつ、私は朝食のトーストを頬張る。
「あら、起きていたの」
朝食を食べていると、ちょうど母が現れた。
「ん?」
何か作業していたのだろう。両手に軍手をはめているのだけど、その軍手の先には土がついている。
「そんな悠長に食べていて大丈夫なの?」
「なんで?」
いつもと同じ時間に起きて朝食を食べているだけなのだけど、どうやら母としては早く食器を洗ってしまいたいらしい。
全く、毎日毎日せかせかと慌ただしい人である。
「食べ終わったら水に付けておいてね」
基本的に私は自分のペースを崩されるのが苦手なタイプらしく、毎日急かしてくる母の様なタイプが実は苦手だ。
しかし、母のああいった部分も私のルーティーンの様なモノだという事も分かっているのであえて喧嘩を売るような真似はしない。
「はーい」
それに、あの様子だとまた何か作業に戻るのだろう。多分、花壇の花の入れ替えでもしているのではないだろうか……なんて予想を立てつつ私はテレビ画面をぼんやりと眺めながらスープを一口飲んだ。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「行ってきまーす」
ぼんやりとテレビを見ながら朝食を食べ終えたら歯磨きと洗顔。忘れ物がないか確認して――とこれまた「いつもと同じ」準備を終え、家を出る。
「――と」
その家を出る前に私はリビングの一角に飾られた小さな写真立てに手を合わせ、小さく「行ってきます」と呟き家を出た。
ちょうど玄関を出てすぐにある花壇で作業をしていた母の「いってらっしゃーい!」の声に軽く返事をしてから電車に乗って学校に向かった――。
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