昔好きだった友達の三十歳のお姉さんが不倫されたので、高校生の俺が心を癒しながら落としにいったら、後輩からも好かれていた件

九戸政景

第1話

『この、このーっ!』

『はは、そう簡単にはやられないっての!』



 小学生らしい男の子二人がテレビゲームに熱中している。これは俺達がまだ小学三年生だった頃だ。俺こと柴代しばしろ大和やまと秋田あきた泰希たいきは小学一年生からの仲で、この日のように一緒にゲームをしたり外で遊んだり、とお互いに親友と呼べる間柄だった。


 お互いの家こそ少し離れていて、行き来するには十分ほどあったけれど、俺達は一緒に遊ぶのが楽しかったし、今後もこの関係は続けていきたかった。もっとも、泰希の家での楽しみはそれだけじゃなかったけれど。



『おーい、おやつ持ってきたよー』



 ノックをしてから一人の女性が入ってくる。入ってきたのは、泰希のお姉さんで俺達とは十二歳も歳が離れている夕希ゆうきさんだ。


 夕という字が名前に入ってるからというわけでもないが、その髪の色は夕焼けのような明るいオレンジで目がくりくりとしていて唇は少し薄め、出るとこは出て引っ込むところは引っ込んでいるスタイルの良さを誇っている。


 そして俺はそんな夕希さんの事が女性として好きだった。まだガキの俺が成人である夕希さんからそういう目で見られるわけがないのはわかっていたけれど、大人っぽい中で時々見せるお茶目な一面、そして小学生男子には少し刺激が強い体型や過剰なスキンシップに俺はいつしかやられてしまったのだ。



『あっ、しば君じゃん! いらっしゃーい』

『ど、どうも……』



 照れから少し素っ気ない感じの返事をしてしまう。俺は夕希さんや泰希のお母さんからは名字の柴代を縮めてしば君と呼ばれていて、夕希さんからはたまに愛玩犬のような扱いをされる。過剰なスキンシップもたぶんそれが理由なのだろう。


 その後、夕希さんはにこりと笑うと、俺の隣に座り、俺達のゲームの様子を楽しそうに見ていた。そうして俺達と一緒に楽しむ夕希さんの姿はとても可愛らしかったし、ますます好きになっていった。



「……あ」



 いつの間にか夢は終わり、目が覚めていた。



「懐かしい夢だったな。二十歳の頃の夕希さん、本当に綺麗だったなあ」



 ベッドの中で呟きながら俺の中でまだ燻っている恋心があるのに気づく。けれど、もうその恋は実らない。何故なら、夕希さんは俺はと泰希が中学三年生になった時に結婚してしまったのだから。



「まあたとえ結婚してなくても高三の子供なんかの告白に応えてくれるとは思えないけどさ。はあ……」



 俺はため息をつく。すると、枕元に置いていた携帯が震え出す。見るとそれは泰希からで、祝日である今日の予定についての確認だった。



「そういえば、朝から一緒にファミレスで飯食いながら話す約束してたな。さて、そろそろ準備するかな」



 俺はベッドから体を出すと、着替えてから姿見を使って軽く身だしなみを整え、リビングにいた家族に声をかけてから俺は家を出た。そしてファミレスの前で泰希と合流し、中に入って注文を済ませたのだが、泰希の表情はどこか暗かった。



「どうしたんだよ、泰希?」

「あー……うん、ちょっとな」

「体調が悪いとかではないんだよな?」

「うん、違う。ちょっと姉ちゃんの事でさ」

「夕希さんの事?」

「うん、実はさ……」



 そして泰希の口から出てきた言葉に俺は驚く事となった。

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