オススメの宿 竜の巣 2
一応元男と女子に分かれて入浴するが、和田さんから
「そろそろ男女とか無しにしない?」
と提案してきた。
それまたどうしてかと聞くと
「女子の体になってるし、男子達が体の変化で悩んでいるでしょ……この体で長期生活する以上、女子の体の洗い方とか髪の洗い方とか色々あるからそういうのを教える意味でも男女の壁を取っ払いたいと思ってるのよ……他の女子達の了承も得ているわ」
「男子達も前の世界では性的な目線とか胸やお尻を見たりとかの視線が気になったけど、今の世界に来てからそういう性的な目線は無くなったし、もう体は女なんだからそれにも慣れていかないとだめだよね」
「そうそう」
逆に元男子の方がざわついた。
元男子的には体や長くなった髪の洗い方とかは知りたいと思っていたし、生理とかが来たら女子を頼らなければならなかったので助かると言えば助かる。
「ただ私達も生理が来てないのが気になるのよね……約1ヶ月経過したけど生理痛が辛かった子も生理が来ないのか、進行しているけど、ステータスが上がって気になってないだけなのか……それともまだ来てないだけなのか」
俺が
「女子の生理周期ってどれくらいなの?」
と聞くと和田さんが
「長い人で35日、短いと25日くらいで次の生理が始まるからまだ1ヶ月経ってないけど早い人なら始まってないとおかしいんだよね」
と答えた。
ただオタクが
「いや、今の肉体年齢が0歳になっているから体が未成熟で生理が発生していない可能性や、ドラゴンの肉体になって生理周期が凄く長くなった可能性もあるでござるよ」
と言う。
俺とオタクはダンジョンの中でもその話をしたがありえなくは無い。
「あー、その可能性もあるのか」
「でも私達顔とかは成人の容姿だけど?」
「確かにそうでござるが……それは拙者にも分からないでござるよ」
「まぁそれはそうね」
あくまでオタクの仮定であるがそうかも知れないと頭に入れておく。
女子とお風呂に入るのは女子が抵抗が無いのなら一緒に入ることになるのだった。
今日はタオルを全員借りて、服を脱いで浴場に移動する。
「しっかし見事に巨乳、美乳ばかりで……平均バストサイズがE以上ってやばいな」
「もう金やん女子もいるんだぞ」
「いや宮永さん……エロゲとかの世界でもここまで皆が皆デカいのはなかなか無いですよ……」
俺もデカいが宮永さんも美乳って感じでデカい。
女子に体の洗い方と髪の毛の洗い方を教わるが、男の頃は髪の毛を手でワシャワシャ洗えば良かったが、毛量が増えている分髪を洗うのに時間がかかる。
水浴びをしていたとは言え、シャンプーで汚れを落とそうとなるとなかなか泡立てずに魔法でお湯を生み出して被ると髪の毛から茶色い汚れがどんどん流れていく。
俺達の髪の毛は思った以上に汚れていたらしい。
髪を洗って流してを何度か繰り返していると泡立つようになり、最終的にシャンプーの泡でもこもこになってしまった。
「おお! 泡立つ! 頭部に泡の感触がある!」
先生は別の意味で喜んでいたが、髪の毛を洗い終わり、体を洗っていく。
思ったが脇とか陰毛とかツルペタでまだ何も生えていない。
これも体が0歳なのが関係しているのか、時が経過しても生えないのか……。
そのまま女子に陰部の洗い方や胸の洗い方を教わり、全身を綺麗にしたあと、タオルを洗い髪の毛をタオルで固定する。
湯船に髪の毛をつけるのは元の世界ではマナー違反らしいので俺達も従っておく。
大きな浴槽は30人が入っても大丈夫な広さがあり、クラスが半々に分かれているのでこっちに16人が湯船に浸かっているが、足を伸ばしても大丈夫な広さがあった。
お湯が出ているところをよく見ると魔石が埋め込まれており、そこからお湯がでているらしい。
ポットと同じ仕組みでお湯の量が多くなった感じなのだろう。
魔石の大きさも大きいし。
後で聞いたが、俺達の篭っていたソレンス迷宮とは別の迷宮にランプ型のモンスターが居て、ソイツを倒すと大きな浴槽のお風呂に1日お湯出しっぱなしでも大丈夫な魔力が籠もった魔石を落とすらしい。
値段も1個50Gで多く出回っているお陰でこの町ではお風呂に入る文化があるらしい。
久しぶりのお湯にリラックスしながら体をお湯に沈めると、胸が浮かんでくる。
漫画とかでは見たことがあったが、本当に巨乳だとお湯に浮くんだと感動した。
隣でお湯に浸かっている中園さんもなんか感動していた。
「中園さんも胸が浮かんでくるのに感動してるの?」
「金田君……私も元の体の胸がぺったんこだったから胸が浮くって……脂肪の塊ってわかってても嬉しいんだよ!」
となんか興奮しながら語っていた。
中園さん、まさかのおっぱいソムリエだったのか?
チラリと周りを見ても胸が浮かんで半球がお湯に浮いている人ばっかりである。
と言うか前田先生久しぶりのお風呂にあぁぁぁと言いながら溶けてるし……こうして改めて見ると中身はおじさんなんだと実感する……見た目が超絶美少女なだけにバグりそうになるが……。
体洗いに30分、長めの入浴に30分……合計約1時間も入浴すると全身がぽかぽかと体が温まっていた。
体がピカピカになった状態で今まで着ていたドレスを着たく無いが、替えの服が無いので仕方なく着て、部屋に戻るとドレスを脱ぎ捨ててベッドにダイブし、昼寝をするのだった。
3時間くらい眠っていたのか窓を見ると夕方になっており、ドレスを着て食堂の方に行くと里崎がテーブルに座ってニーナちゃんと話していた。
『里崎』
『あ、金やんおいーす』
よっこらしょっと向かいに座るとニーナちゃんは水の入ったコップを用意してくれてテーブルに2つ置いてくれた。
『ニーナちゃんありがとう』
『夕食はもう少しかかるので待っていてくださいね』
そう言われて俺はコップの水を飲む。
『かぁ! 冷えていて美味いな』
『おっさんくさいぞ金やん』
『そういや里崎とこうして1対1で喋るのは初めてだな』
『まぁそうだな』
目の前の赤い髪をダンジョンの宝箱から出たヘアゴムを使ってツインテールにしている里崎を見る。
「日本語で良いな……ちょっと俺里崎について全然知らないから聞きたかったんだが……なんで高2まで荒れていたのにいきなり坊主にしてガリ勉みたいになったんだ?」
高2までの里崎は地元でも有名な不良だった。
うちの学校は私立で偏差値50前後で凄い馬鹿ではないが普通と言った感じ。
中学でも荒れていた里崎は内申点は酷かったのだろうが、テストの点数だけで入学できているので勉強はできる方だったと思う。
事実荒れていた時期でもテストの順位は平均より上に居たと聞いている。
「高2の夏休み……俺の両親が蒸発した。俺はおじさんの家に預けられたが……おじさんは俺のことを小さい時から両親よりも愛してくれていたんだよな。そんな俺がグレていたのを知ったらぶん殴られて、泣かれて……親にはどう思われても良かったがおじさんには良い姿を見せたかっただけだ。悪い連中と縁を切って頭を丸めてなるべく良い大学に入学できるように頑張っただけ……ただそれだけだ」
「里崎……」
「金やんは家族が多いから自衛隊に入るために体を鍛えて勉強して……俺は金やんの方が凄いと思ったぜ。よくグレなかったと」
「グレてる余裕が無かっただけだよ……それが今じゃこの姿だ」
「お前は金髪のねーちゃんに、俺は平成初期のツンデレ風美少女に……何が起こるか分かんねぇな」
「里崎はこれからどうするんだ?」
「長期戦が確定した以上おじさんに帰った時に胸を張れる行動を心がけるつもりだ。ダンジョン……迷宮だったか? 迷宮には潜るがそれよりも塩漬けされて困っている依頼の方を消化しようと思う。まぁできるんだったら金を貯めて孤児院でも開くかね……俺みたいにグレる子供は少ない方が良いし」
「いい夢じゃねぇか」
「他の奴らには言うんじゃねーぞ」
「ああ、言わねーよ」
「金やんはどうすんだよこれから」
「町の住民とのコネを作って居心地重視だ。いきなり金を支払って中級市民になるもの良いが、とりあえずクラスの皆を支えながら今後の事は考えていこうと思う」
「お人好しめ」
「俺は人を助けたりするほうがストレスが溜まらないだけだよ」
コツンとコップを合わせると互いに水を飲んだ。
里崎と腹を割って話したことで互いの理解が深まった気がした。
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