オススメの宿 竜の巣
食事を終えて冒険者ギルドに戻ると、先ほどまでは気になってなかったが、掲示板みたいなのがあるのに気がついた。
横に居たオタクに声をかけて見に行く。
「異世界にありがちの冒険者ギルドの掲示板でござるな」
「ここに張り出されているのが依頼ってやつか?」
「そうでござるし、人気のない物でござる」
例えば開墾の手伝いだったり街道に出るゴブリン退治、用水路の清掃や商人の護衛なんかが今は張り出されている。
「開墾や用水路清掃は時間、ゴブリン退治は討伐数、商人の護衛は安全に目的地に到着したら報酬が支払われるっぽいでござるな」
「どれもだいたい稼げても50Gってところか?」
「そうでござるな……紙の色的に張り出されて数日経過していて紙が重ねられて値上げされているでござるから、本来はもっと安そうでござるな」
「お、糸紡ぎの仕事とかあるな……安いなぁ1日25Gか」
「拙者達がやるとしてもよほど塩漬けされている依頼か、ダンジョンに潜ってしまったほうが稼げると言えば稼げるでござるな」
「俺的には地域のコネ目的で開墾には参加しても良いかなぁと思ったけど」
「そういう考えもありでござるな……稼ぎと貯金と相談しながらやり甲斐のある仕事と生活をして、息抜きの娯楽を見つけるでござるよ」
「息抜きねぇ……」
マリーに聞いたら掲示板の依頼の紙を取って受付に持っていけば依頼の受注になるらしい。
そしたら紙に書かれている場所に向かい、依頼者から説明を受けて仕事をするという流れだ。
「日雇い仕事みたいな感じか」
「冒険者が日雇いの仕事をする人の集まりみたいな感じでござるな。稼げる人は下級市民でござるよ」
「まぁそうだろうな」
マリーに逆に依頼をするときはどうすれば良いか聞くと受付で依頼したい要件を受付から渡される紙に書いて提出すれば翌日の朝に依頼が成立すれば依頼者の所に受注した冒険者が出向いてくれるらしい。
「前田先生、ベアトリーチェさんに宿の場所を聞いたら明日は町の案内を冒険者の方にしてもらうのはどうでしょう。町の案内をしてもらわないと土地勘が無くて迷いますよ」
「それもそうですね……相場はどれくらいなのでしょう」
『マリーちゃん、町の案内を冒険者の方に1日頼む時報酬はどれくらいにすればいいのですか?』
『はい、マエダさん……えっとだいたい30Gと昼食と夜食を奢る条件ですと間違いなく受けてくださいます。更に冒険者ギルドの方に人員の選別料金を支払ってくれれば質の良い冒険者を紹介しますが』
『指定とかはできますか?』
『指定依頼ですと依頼料金が倍額になりますが』
「金田君が前にお世話になったキッチーナさんでしたっけ、彼らに依頼した方がはなしやすいですよね?」
「確かに、キッチーナさんだったら他の人よりも信用できます」
『宿が決まってからですがキッチーナという冒険者のチームに依頼をしたいのですが』
『わかりました。書式だけ説明しますね』
マリーがカウンターから紙と鉛筆を用意するとクラスの皆もどう書くのか眺める。
今回は前回俺がキッチーナと会っているので俺の名前で依頼を出す。
『まず名前と依頼内容……今回は町の案内ですね。それとチームでか個人を選択します。そして報酬を書き込みます。どれぐらいにします?』
『倍額込みで100Gと昼食と夜食込みで』
『おお、太っ腹ですね……キッチーナさんのチームは4人チームなので400Gと指定依頼金の20G、合わせて420Gになりますがよろしいですか?』
「金田君、依頼料金は私が皆から預かったお金から出そう」
「わかりました。前田先生お願いします」
『マリーちゃん、マエダさんの口座から料金を支払うことはできる?』
『もちろん可能です。では420Gマエダさんの口座から引いておきます……あとは待ち合わせ場所と時間で朝からにしますか?』
『そうですね。朝からでお願いします』
『わかりました。待ち合わせ場所はサブギルド長の指定する宿で良いですか?』
『はい、お願いします』
『ではこれで手続きは完了です。お疲れ様でした』
元の世界の日雇いバイトを依頼するときよりも簡単な書類で済んでしまった。
これで依頼ができるなら確かに便利である。
依頼が完了したと同じにベアトリーチェさんがギルドに戻ってきて宿が決まった事を教えてくれた。
ベアトリーチェさんに案内されてギルドを出て歩くこと8分。
大通りに面した大きな宿で、宿の名前は竜の巣……今の俺達にはピッタリな名前だな……。
中に入ると初老の男女と年頃……私達と同じくらいの姉妹が出迎えてくれた。
『宿の店主のアルベート、女将のエイダ、長女のアルスに次女のニーナよ』
ベアトリーチェさんが彼らを紹介してくれた。
『竜の巣の店主のアルベートです。皆さんよろしくお願いします』
『女将のエイダよ! 前日に翌日の朝食と夕食が必要か言ってちょうだい。それに合わせて作るわ! 基本料理は日替わりだからそれは許してちょうだい』
『長女のアルスです』
『次女のニーナでーす! 何かあれば言ってください!』
『これはご丁寧に……纏め役のマエダです。これから長期間お世話になります』
『一応金額の確認をしましょうか……うちの宿は全30部屋で2人部屋が殆どです。ただ皆さんは31人なので基本個室……1組だけ相部屋になりますがよろしいですか?』
『問題ありません』
『個室代金と貸切なので本来は1人1日60Gになりますが、冒険者ギルドから半額の30Gは貰えるので皆さんも1日30Gとなります。とりあえず1ヶ月の代金を先に貰う形になりますが個別契約の方がよろしいですか?』
「皆さんはそれでよろしいですか?」
「前田先生、個別で大丈夫でーす」
「宿代は自分達で稼ぎます」
『個別で良いですか』
『はい、ベアトリーチェさんとも話していますので900Gを毎月引き落とさせてもらいます。宿の長期契約を切る時や人数が20人を切りましたらこちらも経営がありますので貸切の契約を切らせてもらいます』
それはそうだ。
となるとこの宿には31人が補助金込みで60Gなので1日1860G稼ぐことになる。
宿の家族の4人は店を構えているので恐らく中級市民で3ヶ月に1度14400Gの税金の支払いが発生するので約8日分の収入が丸々税で持っていかれることになる。
それに食費や燃料代、設備維持費等を考えると20人がボーダーなのだろう。
『では皆さんに鍵を渡します順番に並んでください!』
俺は7番のキーを貰い、7号室に向かう。
部屋は2階と3階に分かれていて、部屋を開けると元の世界のホテルに近かった。
テレビとかは無いが、2台のベッドと丸いテーブルと椅子が2個、ポットみたいな魔道具と木製のコップが置かれており、ボタンを押すと魔石から水が生み出されてポットからぬるい水が出てくる様になっていた。
ちなみに和風じゃないので土足である。
まぁ今の俺達は靴を履いていないので素足であるので、寝る前に足を磨いてからベッドに横にならないといけないが……。
言えば桶にお湯とタオルを貸し出してくれるらしい。
あとクローゼットや収納スペースが結構あり、人によっては鎧とかをいれるらしい。
なので買った服や日用品はここに入れておくことができるので、今着ているドレス以外の服もようやく着ることができそうだ。
金庫もあり、金庫の鍵は部屋の鍵と一緒と言われた。
トイレは1階で5部屋あり、スライムがここでも飼育されているらしく、糞尿やお尻を拭いた紙を食べてくれるらしい。
ちなみに体内でスライムを飼うのをやっていたりするのかとベアトリーチェさんに聞くと
『長期遠征する冒険者や便秘が酷い人は小さなスライムを体内で飼う事がありますが、普通はやりませんよ……皆さんもしかしてやってるのですか?』
コクコクと俺は頷く。
『スライムですが町だと処理場が決まっているので排泄する場合は迷宮内をオススメします……手続きがめんどくさいので』
と教えてくれた。
あとはお風呂である。
大浴場があり、男女別で今は貸切なのでどっちのお風呂を使っても良いと言われた。
備え付けのシャンプーと石鹸があり、タオルは各自買って欲しいと言われ、貸し出しだと1G取るとも言われた。
1階は大浴場、食堂、エントランス、トイレ、2階と3階が客室。
食事は朝と夕食で、パンとスープ、サラダとメインが1品出るらしい。
ゴミも小さいゴミ箱は部屋にあるが、溜まってきたら宿の外にある焼却炉で燃やしてしまうらしい。
ここの宿の設備はこんな感じか。
ちなみにベッドにはマットレスに布団みたいなのを敷いて、その上にシーツ、毛布、掛け布団みたいな感じで、希望があれば毛布はもう1枚借りる事が出来るらしい。
まぁ2人部屋を1人で使わせてもらっているので隣のベッドから毛布を拝借する形でも良いのだが……。
あとベッドを整えたり、ポットの魔石の交換は昼前にドアの掛札を交換希望としておくと整えてくれたり交換してくれたりするらしい。
一応1週間に1度は設備点検で必ず部屋の中に入らせてもらうとも言われた。
『何かあったのですか?』
『ここの宿ではないですがお父さんが昔働いていた宿でなかなか札が交換にならないなぁと思っていたら、部屋の中で冒険者の方が病死していたという事件があったので、この竜の巣ではそういう決まりができたんですよ』
とニーナちゃんが教えてくれた。
とりあえず今日の夕食は食べれるか聞くと、昼なのでまだ間に合うから全員ここで食事で良いか聞かれ、全員了承し、疲れを癒すために先に風呂に入浴することにするのだった。
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