首長竜のステーキ バロメッツの腸詰め

 周辺探索で動いた為にお腹が空く。


 どうやらこの体は燃費が悪いらしい。


 3時間程度動いただけなのに結構お腹が空腹を訴えていた。


 今ある材料とスキルで料理を作らなければならない。


 材料は首長竜擬き、バロメッツ、桃みたいなオレンジ……これだけだ。


 ドクダミみたいな野草も食べられるかもしれないことを元生物科学部の飯田が提案する。


「はい、じゃあ料理については私と豪炎寺君に任せてもらえないでしょうか」


 おっとりしている原村さん(動く木に縛り首になりそうになった子)と実家が食堂で料理上手なことがクラスで有名な豪炎寺(動く木を蹴り殺した奴)が指揮を執ることを提案。


 原村さんは実家が牧場で鶏を絞めたり鹿を解体した経験があるらしく、バロメッツを絞めたり首長竜の解体に自信があるらしい。


「私達スキルポイントに余裕がありますので手刀というスキルと火炎放射という両方5ポイントのスキルを取得してみますね」


 原村さんがそう言うとステータス画面をいじり始めて豪炎寺も一緒にやっている。


 そう言えば原村さんと豪炎寺って前のクラスだと付き合っているって噂が流れていたけどあの距離の近さだと付き合っているかどうかはわからないけど仲が良いのは間違いないな。


 2人はスキルを取得すると持ってきた動く木で手を真っ直ぐ伸ばして手刀のスキルを発動させると木は手の形に沿ってバターを切るように切断された。


「鋭利なナイフというより溶かすように切ってる感じがする。勢いをつければもっと変わるかもしれないけど」


 次は勢いよく木の枝を切ってみるとストンと斧で枝を落とすように切ることができた。


「勢い次第で切れ味が変わる感じか……攻撃手段としても使えそうだな」


「豪炎寺君、首長竜の解体するから手伝って」


「おう、原村今行く」


 俺含めて他の皆も首長竜の首を持ち上げたり、ひっくり返したりするのを手伝ったり、手刀が無くても動く木の枝を力任せで折る事はできるので枝を折って薪にしたり、ドクダミみたいな野草を集めに出かけたりした。


 原村さんは首長竜を解体するのが始めてとは思えないほどテキパキと解体していく。


 まず首を根元から切断して、腸や内臓などが露出したので勢いよく引っこ抜き、小腸らしい部分を大腸らしい部分と分離させて、手ごろな大きさに切ったら湖で小腸を洗うように言われ、何人かの元男子達(俺を含めて)が腸を洗う。


 その間に原村さんと豪炎寺は背骨の位置を確認したり、首長竜の胴体を木に吊るして血抜きを行ったりした。


 もちろんロープとかが無いので力がある元野球部の野村と柔道部だった佐々木が首長竜の足を掴んで木の上に登って吊るしていた。


 普通恐竜の様な重量物を軽々持ち上げたり、木の上で持って30分待機とか拷問に近いが、2人は別に気にもとめずに行おうとしていた。


 それを見ていた俺と前田先生は


「「人外になってしまった」んですね」


 と思った事を口に出して見事にハモった。


 まぁ2人に悪いからと10分で交代をし、血抜きを行い、血抜きを行った。


 その後は原村さんが首長竜の胴体をバラバラにし、肉はステーキみたいに、そして肋骨を加工して棒状にし、それにステーキ肉を何枚か刺して薪を組んで、焚き火の上にて焼き始める。


 豪炎寺がスキルで取った火炎放射は口からゴォォォとオレンジ色の炎を吹くと、その場にいた皆で大いに盛り上がった。


 肉が焼き上がったら完成だ。


 首長竜のステーキ! 


 続いて先生が必死に綿をむしり取っていたバロメッツの調理を始める。


 植物のモンスターらしく、首を切断しても血液みたいなのは流れてこなく、水がにじみ出てくるだけだった。


 原村さんは動く木の一部を加工してまな板を作り、水で軽く洗ってから解体したバロメッツを両手で手刀のスキルを使い、細かく切り刻むと他の皆が取ってきた薬草を匂い消しに、桃みたいな巨大オレンジの皮を剥き、皮を細かく切り刻むと、それを混ぜてから先ほど洗った首長竜の腸に詰めて、また首長竜の肋骨に刺して焼き始めた。


 バロメッツの腸詰めの完成である。


 豪炎寺的には腸詰めは油で揚げたり、湯煎して作りたかったらしいが、鍋が無いので仕方がない。


 全員に肉と腸詰め、それに半分に切られた桃みたいなオレンジが行き渡ったら食事を開始する。


「「「いただきます」」」


 異世界に行っても食事をする前の感謝の言葉は忘れず……というより皆が協力して作った為に心からいただきますという言葉が出てきた。


「うん! 美味い」


「米が欲しいなぁ」


「牛肉……いや昔食べた鯨の肉に近いかも」


「腸詰めはバロメッツって本当に蟹みたいな味がするんだな」


「ドクダミみたいな野草が臭みを消していて口の中がスッキリする」


「野草だけじゃなくてオレンジ擬きの皮も入れたからかステーキの油っぽいのがリセットされるよね」


「桃みたいなオレンジも食感桃なのにオレンジの味が染み出てくるんだよな……めっちゃ美味い」


 皆あっという間に食べ終わり、ごちそうさまでしたと言って食器となった骨と調理に使った巨大まな板を洗っていく。


 先生がスライムに残骸となった大腸や内臓の一部を食べさせると、スライムはプルプル震えてそれらを食べていた。


 どうやら生きている物は食べないけれど、死骸や汚物を食べる掃除屋的な生き物らしい。


 内臓を食べ終わった後は血抜きしたところの地面を食べていた。


 そしてやはりここは洞窟か特殊な空間なのだろう。


 明るさが一向に変わらない。


 というよりもよく見ると光源となっているのは天井にて青色の鉱石が光り輝いて空の様に見せているだけっぽい。


「あれ? 食事したらレベルが上がった」


「あ、俺もだ」


「私も」


 皆食事をしたらレベルが上がったと報告を始め、俺も慌ててステータスをオープンし、ステータス画面を見る。


【名前】金田光一

【年齢】0歳(17歳)

【性別】女(男)

【種族】ドラゴン

【状態】健康

【レベル】2

【ステータス】

 ·体力  510

 ·力   660

 ·防御  455

 ·器用さ 7

 ·素早さ 17

 ·魔力  255

 ·精神力 76

 ·幸運  90

【スキル】(スキルポイント14)

 ·水泳(熟練度1)


 料理という経験をしたから上がった? 


 モンスターを食べたからレベルが上がった? 


 ちょっとそこら辺はよくわからない。


 ただ食後にレベルが上がったのを見るにモンスターを食べたからレベルが上がったが有力かもしれない。


 スキルポイントは1レベルにつきやっぱり5っぽいな。


 食後ということで疲れたので一旦自由行動になり、疲れからか皆眠り始めた。


 俺も眠りたいが見張りも居ないと危ないだろうと思い、起きていることにした。


 スライムの様子を見ている前田先生も起きているらしい。


「前田先生……」


「おや、金田君は寝ないのですか?」


「見張り役も居ないと危ないと思いまして」


「意外ですね……学級委員長の前園君辺りが起きていると思っていましたが……」


「前園なら体を洗う為に湖の方に何人か連れて行きましたよ」


「ああ、なるほど……金田君はこの状況をどう見ていますか」


「そうですね……元の姿に戻って家に帰りたいってのが正直な話です」


「私も家に家族が居ます……まぁ奥さんの当たりも強く、娘からは汚物を見るような目で見られていましたが、それでも愛する家族が居ます」


「先生……」


「まぁこの体の方が体調は良かったりしますが……痛風の痛みも年齢から来る体臭も、節々の痛みもありませんからね。髪もフサフサですし」


「……」


「先ほど金田君も異世界転生? 転移? について少し知っていると手を挙げていましたね。こういう物は何がきっかけとか分かりますか?」


「多いのは神様によって連れてこられた……次点で現地の人達が召喚した……あとは希望の無い話になりますが魂だけ連れてこられて体のあった元の世界では既に亡くなっているとかですかね」


「ふむ……現状だと一番最後のが当てはまりそうですね。他の皆さんも同じ境遇の人が居るからまだ精神的に持っていますし、一部の人達は小説の主人公の様な境遇になった事で浮かれているようにも感じます」


「そうですね……うちのクラスでも大学受験が間近に迫ってていて何処か受験勉強から解放されたいって気持ちが強い奴も多かったですし……里崎(ガリ勉元ヤン)とかは異世界に飛ばされたこの短時間でも興奮が隠しきれてませんし」


「こういう集団転移か転生か分かりませんが、そういう物語で注意しなければならないことって何がありますか?」


「うちのクラスはイジメとかが無かった……正直に言うと前田先生がイジメの対象みたいになっていたので前田先生が大人の対応しているうちはクラスも団結できると思います。あくまで俺も少し読んだだけですが、クラスの中で派閥みたいなのができて、派閥同士で対立するようになると危険かと」


「なるほど……うちのクラスにもリーダーシップを取れる人物が何人か居ますからね……その人達が派閥を作ると危険ですか」


「あとは今は皆興奮して気がついて無いかもしれないですが、日本に比べでいきなりのサバイバル生活です。それに男子は性転換をしているのでストレスが凄まじいと思います。男女の差が無くなったから良いかもしれませんが、原村さんと豪炎寺の様に男女仲に発展しそうだったクラスメイトも何組かいましたので、その関係性が一気に崩れたともいえます」


「関係性の再構築ですか」


「最初の数日間は生活を良くしていこうという動きが強くなるでしょう。問題は関係性が再構築されたあとの動きだと俺は思っています」


「ふむ……私の古い考えですが、この空間がダンジョンか洞窟のどちらかである場合、外に続く道があると思います。金田君が見つけてくれた上に続く水路が最有力ですが、数日生活ができたら他の場所に挑む必要がでてくると思います。その場合何が必要ですかね?」


「一番はレベルを上げることだと思います。食糧集めもそうですし、生活水準を上げるにはモンスターを倒して素材を集める必要があります」


「レベルか……どれぐらい上げれば良いと思うかな?」


「そこまでは分かりませんが、ドラゴンという種族はたいていの作品やゲームでも最上位にランクされています。それを考えると首長竜を現状でも倒せるのならば大抵のモンスターの遅れは取らないと思います。あ、でも病気や毒への耐性は付けないと危険かもしれないので……病気、麻痺、毒、状態異常、混乱、寒冷耐性、高温耐性の7種類をできるだけ上げておきたいのと、回復魔法と呼ばれる物も取っておきたいので単体回復、状態異常回復の2種類を含めて9種類、再生というスキルもあれば良いので10種類ですね」


「耐性系は1つ1ポイント……魔法は5ポイント、再生は10ポイントですか……合計27ポイント。最低でも5レベルは必要ですかね」


「首長竜を倒した野村が10レベル、動く木を倒した豪炎寺が6レベルなので直ぐに到達すると思います」


「うん、今試しに病気耐性を取ってみたが、耐性小と書かれているね。中に上げるには3ポイント必要みたいだ」


「となると最低中には上げておきたいので21ポイント追加で48ポイント……8レベルにはなりたいですね」


「ふむ金田君色々わかってきた。ありがとう」


「いえ、役立ったなら何よりです」

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