大混乱の時ほど理性的に
起こしたクラスメイト達は皆体の変化に大パニックである。
女子も男子も美少女、美女の獣人? になっているので困惑と誰が誰だかの確認作業でてんやわんやである。
野球部主将で身長が190センチを超えていた野村も170センチ近くで鍛えられた筋肉はぷにぷにになっているし、おっぱいの大きなねーちゃんって感じだし、ガリ勉元ヤンの里崎は赤髪長髪で八重歯が特徴的な2000年代アニメのツンデレ女キャラみたいになっていた。
女子も女子で、男子よりは顔のパーツがどことなく本人に近い感じだったが、全体で見ると大きく変わっており、特に日本人離れした大きな胸や太くなった太ももに混乱していた。
「一旦落ち着け、まずは湖で自分の容姿の確認、それが終わったらここがどこなのか、何か情報が無いかの確認だ」
美少女になった前田先生が高い声で皆を統率していく。
いつもは威厳もへったくれも無い感じだったが、年長者なだけあり、一言で皆を纏めていた。
湖に案内すると各々顔の確認と声や体の確認を終えてから最初に眠っていた広場の様な場所に集まる。
まず前田先生が
「さて状況を整理していくぞ」
と言って、起き上がるまでのことを確認する。
いつも通り又木高校のクラスでホームルームをしていたら、ピンク色のガスが教室を充満し、非常ボタンを押しても反応しないし、窓や扉も固定されているように開かなかった。
「そして起きたら皆美女にされていたと……」
オタクこと鈴木が挙手する。
「えっと鈴木だよな?」
「はい、鈴木でござる前田先生。状況的に小説や漫画であるような異世界転生か異世界転移をしたと考えるでござる」
「先生はその手の小説とかを読んだことが無いんだが、そう言う小説とかを知ってる奴はこの場でどれくらいいるんだ?」
前田先生の問にクラスの大半が手を挙げた。
多少アニメを観ていたり、漫画や小説を読んでいれば最近の流行りもあり多少は異世界に転生か転移の話を知っているのが多いだろう。
野球部の野村やガリ勉元ヤンの里崎ですら手を挙げていた。
「結構知ってるんだな……」
「先生たぶん……この場合転生か憑依になると思いまーす」
ギャルグループだった子の1人がそう発言する。
続けてオタクが
「そう言う物語でお決まりの言葉があってステータスオープンと言ったり、念じたりするとステータスが表示されることがあって、この空間でもできたでござるよ。ちなみに念じるだけで出てくるタイプでござる」
そう言われたようで皆でステータスオープンと念じてみるとステータスが書かれた板みたいなのが目の前に現れた。
ご丁寧に日本語で書かれている。
俺の場合だと
【名前】金田光一
【年齢】0歳(17歳)
【性別】女(男)
【種族】ドラゴン
【状態】健康
【レベル】1
【ステータス】
·体力 500
·力 650
·防御 450
·器用さ 6
·素早さ 12
·魔力 250
·精神力 75
·幸運 90
【スキル】(スキルポイント10)
なし
と書かれていた。
皆のステータスを聞いてみると体力は300から1000、力も300から1000、防御力は100から500、魔力はマックス300、精神力は前田先生がマックスの90で幸運は俺が最大の90で平均が50とかだった。
野球部の野村が体力、力がマックスの1000で、ガリ勉元ヤンの里崎が防御力が最大の500、オタクの鈴木が魔力最大の300で、平均数値が一番低い子でも最大の半分くらいで纏まっていた。
「オタク、基準が分からねーぞ」
「野村、確かに基準が分からないのは問題でござるが、種族がドラゴンというのに注目して欲しいでござるよ」
オタクはドラゴンという異世界転生だと最上位種のモンスター種族であるため、レベル1でも凄まじいステータスをしており、普通なら器用さとか素早さとかの5とか10とかの100を基準とした数値が一般なのではないかと説明する。
「全力で走ってみてそれが多分数値の意味なんだろうな」
「うし! ちょっと走ってみるか」
元男子達がとりあえず走ってみることになり、素早さ数値が30と一番早い陸上部で短距離走をしていた桑原と元男子の中で数値が一番遅い8のオタクこと鈴木が競争をしてみることにした。
「よーい、ドン」
2人が全力で走るとみるみる差が開いていき、あっという間にゴールした。
足の速さは両者共に少し速くなった気がすると言ったが、一番は全く疲れなかったというのが分かった。
これで体力の数値が異常であることが分かる。
まぁステータスもあくまで自己申告なので多少盛ってる人も居るかもしれないが、10というのが1つの基準と考えた方が良いかもしれない。
ふと横を見ると野球部だった野村が手ごろな石を見つけて思いっきり投げたが、ブオンという音と共に石はまるで砲弾が発射されたかのように遠くに飛んでいき、空中でガコンと何かに当たる音がした。
「……野球できねぇなこりゃ……本気で投げたらキャッチャーが死ぬな」
野村の投球に皆口をぽかーんと開けていた。
こうも非現実的な光景を見せれたら驚くのも無理は無いと思うが……。
もう一度皆広場に集まり、話し合いを始めるが、ギャルの1人で今は小悪魔みたいな容姿(ただ太い尻尾があるし、ドラゴンなのは変わらないが)の和田さんが
「なんかステータスのスキルって欄のスキルポイントってのに触れたら色々でてきたんですけど〜」
と言い始めた。
俺もステータス画面を開いて鍵括弧になっているスキルポイントの欄を押すとブワッと大量のスキルが表示された。
「ねぇねぇ! このスキル一覧からスキルを選択していくんじゃね?」
と水泳部の梶原がスキルを見てそう言った。
「ちょっと実験したいんだけど良いか?」
俺が皆に提案する。
「スキルの中に水泳ってのがあるんだけど高校時代普通に泳げていたからこのスキルを取ったら何が変わるのか確認したいんだけど」
「金田できるか」
前田先生からの問に
「任せてください」
と答えた。
皆が見守る中、俺はドレスみたいな服を脱ぐと普通に脱ぐことができて、湖の中に入る。
少し冷たくて気持ち良い。
クロールで泳いでみたが普通に泳ぐ事が出来た。
「じゃあスキルを取ってみるぞ」
そう言ってスキルポイントを1ポイント支払い、水泳のスキルを取ってから泳いでみると体の動かし方が分かるような感覚がしたあとに、さっきより圧倒的に速く泳ぐ事ができた。
水から上がって元男達が凝視しているが、ドレスを着てみると暖かい感覚がして、濡れていた体が一瞬で乾いた。
「泳いでみた感覚だけど、スキルがあれば補助されるみたいな感覚があるわ。そしてスキルを取ると熟練度ってのが増えたわ。スキルに適した動作をすれば伸びていって、補助がより強力になる感じか? 1つ気になったんだけど、他の人ってスキルのポイント数が違うんじゃねぇかって」
「どういう事だ?」
「例えば野村は野球部だったから物を投げるのが得意だろ。俺投擲ってスキル2ポイント必要なんだけど野村何ポイント必要だ?」
「……1ポイントだな」
「仮説だけどスキルにならない経験値や熟練度があってそれをその分スキルに必要なポイントが減るんじゃね?」
するとオタクが
「スキルポイントの重いスキルを取っていって相互に教え合う事で他の人はスキルポイントを減らす事が出来るってことでござるな」
「そう。前田先生、教育ってスキル俺は5ポイント必要なんですけど先生は何ポイントっすか」
「私は1ポイントだな」
「それ聞いてもう一つ思いつきました。他の人に比べて得意不得意でスキルポイントの獲得に差があると思うんで、得意分野を低コストで覚えて、他の人に教えていくのが良いんじゃないかと思ったんっすが」
「ただスキルを取るのはもう少し色々検証してからの方が良いんじゃないか。異世界語とかは習得に翻訳で5ポイント、読むで5ポイント、書くで5ポイント、発声で5ポイントと20ポイント必要だし」
学級委員長の前園がそう言う。
周りもそれで同意らしい。
「あとはこの空間についてもう少し詳しく知りたいですね。さっき野村君が石を投げた時に天井に当たった音がしましたので、空に見えますが、天井があるのかもしれません。広いと思うだけで実は狭い空間かもしれませんし」
前田先生の発言で5人組を組んでこの空間の探索をすることになるのだった。
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