【TS】クラス全員ドラゴン娘にされて異世界転生したった!【共学】

星野林

異世界へ!

 キーンコーンカーンコーン


 ホームルーム開始のチャイムがいつものようにスピーカーから鳴り響く。


 高校に入ってからほぼ毎日聞く電子音にあわせてチビ、デブ、バーコード頭でメガネをかけたモテない要素満載の担任が出席確認をおこなっていく。


「梶原さん」


「はい」


「木戸さん」


「はい」


「桑原君」


「はい」


 小学生じゃないんだからいちいち名前を呼んでの出席確認しなくても良いだろと思うが、うちの学校では名前を呼んでの出席確認を今だに続けている。


 クラス人数30名、男子17名、女子13名の普通科……3年B組がうちのクラスだ。


 となりの席に座るあだ名がオタクの小太りの青年がグフグフと小説を読んでいる。


「オタク……ホームルーム始まってるぞ」


「いいでござらんか金やん、どうせ返事だけすれば問題無いんだし」


 金やんというのは俺のあだ名で金田光一だから金やん……クラスの人からはそう言われていた。


 ちなみにオタクの名前は鈴木大地である。


「それに拙者だけじゃないでござるよ……自由にしてるのは」


 オタクはそう言うと角の席でお喋りを続けるギャル達や返事だけして勉強を続けるガリ勉とこうして改めて見ると結構荒れているクラスである。


 まぁお喋りしているギャル達はAOでさっさと大学入試を突破したエリートであったり、ヒーヒー言いながら勉強しているガリ勉は2年までは結構荒れていた不良だったが何を思ったのかいきなり頭を丸めてきて、赤本片手に毎日大学入試の勉強するようになったりと色々面白いクラスではある。


 ちなみに横のオタクは実家の牧場を継ぐからと農大への受験を控えていたし、俺は兄弟が多かったので大学には行かずに自衛隊に行こうと体を鍛えることに普段は注力していた。


 他にも野球部の主将兼4番でスポーツ推薦で大学の入学を決めていた奴や寺の息子で大学は坊さんになるための仏教大学に進学することを決めている奴等様々である。


 最後の期末テストも終わり、あと数日後には冬休み……冬休みが終われば入試に向けて最後の追い込みが大学受験を控えている奴らは始まるし、3年の3学期は自由登校になるので、このクラスで全員集まるのももう数回しか無いかもしれないと思うと、少し寂しくなる。


「えー、配布物配るぞ」


 担任が紙を回し始める。


 俺は一番後ろの廊下側の席なので配布物が回ってくるのを待っていると、なんか妙に煙臭い感じがした。


「なぁオタク。なんか煙臭くね?」


 横の席にいるオタクに声をかける。


「……確かに臭いでありますな……金やん、後ろのドアから煙が!?」


 俺はバッと後ろを振り向くと、ピンク色の煙が教室の後ろの扉から流れ込んできていた。


「前田先生、煙が入ってきてる! 火事じゃね!」


 担任に俺が叫ぶと担任もピンク色の煙に気が付き


「急いで口を布で塞いで背をかがめて! 扉を開けて逃げますよ」


 担任は急いで非常ベルのボタンを押すが、ボタンを押してもベルはうんともすんとも鳴らない。


「こんな時に故障か!?」


「先生! 扉が開かない!」


 一番前の席に座っていた女子が廊下に続く扉を開けようとするが、扉はびくとも動かない。


「かわれ!」


 学級委員長が急いで女子と変わるが、扉は全く開かず、体当たりしても扉はびくともしなかった。


「金やん! 後ろの扉は!」


 委員長が俺に後ろの扉は開くのかと言われ、後ろの扉に手をかけるが、後ろの扉もびくとも動かない。


 鍵がかかっているから動かないのでは無く、外から固定されているような感じだ。


「駄目だ! 全く動かない!」


「前田先生! 窓も開かない!」


 ギャルの子達が窓を開けようとしているが窓も開くことが無い。


 その間にもピンク色の煙が教室を充満していく。


 オタクが何を思ったのか掃除用具入れの扉を開けて箒を取り出すと、窓に向かって走り始めた。


 箒の持ち手の硬い部分で窓を割る気だと瞬時に分かった。


 しかし、箒の柄が窓にぶつかっても窓ガラスはヒビも入らない。


 オタクが何度も窓ガラスを叩くが全く駄目だ。


「オタクどけ!」


 野球部キャプテンだった野村が机を窓に投げつけるが、それでも窓ガラスは破ることができない。


「うっ!」


 体勢を低くして煙を吸わないようにしていた子達もそうこうしている間に煙を吸い込んでしまい、次々に倒れていく。


「開けろ! 開けてくれ! 開いてくれ!!」


 担任の前田は半狂乱になりながら窓や扉を動かそうとするが全く効果が無く、ドサリと煙を吸い込んでしまって倒れてしまった。


 次々に倒れていくクラスメイト達。


 オタクや野球部の野村も激しく動いたからか倒れてしまい、女の子達も涙を流して恐怖しながら倒れていった。


 俺も意識を保てなくなり、床に膝から崩れるように倒れた。









「あ、あの……もしもーし……もしもしでござるよ……生きてますか……」


 ガバっと俺は女性の声を聞いて起き上がる。


 目の前には真っ赤な髪を下ろした胸と尻のデカい女性がいた。


 いたのだが……人間に生えていてはいけないものがいくつかついている。


 頭に鹿の様な角、背中に生えた大きなコウモリの翼みたいなもの、真っ赤で太い尻の付け根から伸びたドラゴンとかでよく見る尻尾……それを鱗の様な服? ドレス? で身を纏っていた。


「起きたでござるか……日本語分かるでござるか?」


「日本語分かるが……あなたは?」


「拙者でござるか? 拙者は鈴木大地でござる」


「鈴木大地……オタクか?」


「オタク……え? 確認でござるが、私立又木高校3年B組に心当たりはあるでござるか?」


「俺金田光一だ。え? オタク何でそんな姿してるんだ?」


「いや、金やん!? ちょっ、ちょっとこっちに来るでござる」


 手を引かれて俺は近くにあった湖っぽい場所に行くと自分の姿が湖に写し出された。


 金色の腰まで伸びた長髪に金色の瞳、整った顔立ちにオタクと同じ様な鱗のドレス? みたいなのを身に着け、大きな胸と一角獣の様な小さな角、金色の翼に太ももくらいの太さ、下半身と同じくらいの長さの蛇みたいな金色の尻尾がくっついていた。


「な、なんじゃこりゃぁ!?」


 俺は叫ぶが、声質も女性そのもの……慌てて股を擦るが、息子も消えて穴が2つあるだけだった。


「女になってる!?」


「金やんでよいでござるよな?」


「美人になってるけどオタク……でいいんだよな?」


 俺とオタクは顔を見合わせる。


 とりあえず今も寝ている人達がクラスメイトの可能性が高いとして起そして身体の変化を確認してもらい、現状の確認を急いだ。


 誰が誰だか分からないが、黒髪で銀と黒のオッドアイをした美少女? ……周りに比べて少し年齢の若そうな小さい子をオタクと一緒に起こした。


「……はっ! クラスの皆さんは」


 起きた第一声がそれとは責任感の強そうな人物を引き当てたらしい。


「こんな姿になっているけど金田光一です」


「鈴木大地です」


「金田君に鈴木君ですか……姿が……」


「はい、起きたら姿が変わっていました……」


「もしかして前田先生でござるか?」


「はい、私は前田ですが……」


「先生も姿が凄く変わっていて……」


 ペタペタと前田先生らしき美少女が体を触り変化を確かめる。


「確かに胸ですかこれは? 前までは腹で地面が見えませんでしたが、胸で地面が見えないとは……肘よりも長くて大きな胸とは……でも痛風の痛みが綺麗さっぱりなくなっているのと久しぶりにフサフサな髪がありますね」


 前田先生の容姿も黒髪、左目が銀、右目が黒色のオッドアイで、胸も大きく、俺とオタクが美乳とすると先生は爆乳。


 身長は150センチくらいで小さく羊の様な巻いた角も特徴的。


 コウモリみたいな翼も黒色かつ、鱗のドレス? も漆黒で、太ももくらいの太さの黒色の尻尾も特徴的だ。


「湖が近くにあるので姿確認しますか?」


「確かに容姿を確認したい気持ちもあるが、まずは皆さんを起こさないと……手分けして皆さんを起こしますよ」


 先生は容姿が変わったことやここがどこなのかで驚くことよりもクラスメイトの安否確認を急ぐのだった。

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