モンスターは出るわ食パン食ったら強くなるわで

のりぬるのれん

第1話 日常的

 僕が生まれる134年前である西暦2030年、突然モンスターが現れた。日本だけに。そして日本人に能力が宿った。その能力を使ってモンスターを倒す者をシャルガードと言う。そして現在、2180年。父の仕事の関係で転校する事になった僕は、新生活にソワソワしながら、鏡の前で制服を来ていた。


「目良 龍介めら りゅうすけです。よろしく……インパクトが無いな……目良 龍介だ!皆よろしく!……なんか違うな……」

「龍介ーなんでこんな朝早くから起きてるの。今、朝の五時だよ?学校までは15分しかかからないでしょ?」

「ちょ、ちょっと!入ってこないでよ」

「めちゃくちゃうるさいよお兄ちゃん。これもう多分私寝れないよ?どうしてくれんのさ」

「あっ、えっとそれは……ごめん」

 急にめちゃくちゃ恥ずかしくなってしまってお腹が痛くなった僕は、結局ギリギリになってしまった。

「やばいやばいやばいやばい!もっと早く起きるべきだった!」

 慣れない革靴で走ると、こけそうになってしまった。そんな時向こうの曲がり角から声が聞こえてきた。

「いっけなーい遅刻しちゃう!食パン咥えたまま誰かさんと曲がり角でぶつかっちゃう!」

 来た!これぞ青春の初まり! これは恋に落ちちゃうやつだ! そしてこれからハチャメチャやって付き合っちゃうやつだ! なんたって僕は転校生。あぁなんて罪な男っ!

「あぁ、いけないっ!このままだと減速出来ないっ!ぶつかって恋に落ちて結婚しちゃう?」

 しちゃう? 準備はできてるぜ! なんたって俺は転校生! ちょっとどしどし重い音が聞こえるけど、ちょっとぽっちゃりぐらいの方が好みなんだからっ。今、ぶつかる!

「バコーン!!」

 トラックに跳ねられたかと思った。いや、違う。ただのスカートを履いたマッチョだ……。うちの制服じゃん……。

「死んでないよな?」

「もちろん。死んで貰っちゃあ困っちゃうんでね」

「ククッ運んでやれ」

 後から少し細めの男が来て、不気味な笑みを浮かべていた。


「うわ、知らない天井じゃん」

「気づいたか。目良」

「ちょっと待って。今何時?」

「4時、もう学校は終わってる。あと、ここはシャルガード訓練部の部室。よろしく、私は格清 心春かくせ こはるシャルガードの登録名はメイカ」

「あ!ニュースで見た事ある!商店街で大型モンスターを倒したって。って学校終わった!?先生は?」

「説得した。こいつシャルガード部員になるって言って聞かないんで入部テストさせるんで明日からこいつは出席しますって言っといた」

「え、入部するなんて一言も」

「私だって先月入部したの。こんな感じで」

「あのメイカをこんな感じで!?」

「ここ部室の癖に給料出るから。とりあえずちょっと待っといて」

 そう言って部室から出て行った。というか俺の能力はそんな大した物じゃない。俺ごときがシャルガードになれるはずがない。身体能力も良い訳じゃないのに。ていうか今朝のムキムキは一体誰なんだ。

「お待たせ。目良君。早速だが試験を受けて貰おう」

 今朝の細身の男が入って来た。入部テストは本当だったのか。いや、駄目だ。危険すぎる、というかめちゃくちゃ嫌な予感がする。今すぐ逃げなきゃ。

「悪いけど辞退は無しだ。終わった後飯奢ってやるから」

「なんでもいいのか?」

「もちろんだ。テストはこの部室を出てからすぐスタートだ。ルールはこの校舎から10分以内に出ること。では、準備が出来たらすぐ初めて良いぞ」

 なんだそんな簡単な事。たとえ迷路になっていても、俺の個性ならなんとかなる。今夜は焼肉かうなぎだな。自信満々で俺は扉を開けた。

「やぁ、久しぶり。結婚しちゃう?」

 今朝のムキムキだ。お返ししてやる。絶対に。俺は股の下を華麗にくぐり抜けた。

「また今度!!」

「今度っていつよぉぉぉ」

 そいつはクソデカ大ジャンプをかましながら俺の目の前に立ちはだかった。

 大丈夫。俺の目は捉えている。

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2024年12月13日 05:00

モンスターは出るわ食パン食ったら強くなるわで のりぬるのれん @norito0202

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