1分で読める超短編小説集season2

黒澤伊織

無責任な男


 ほんと、男ってどうしようもない生き物よね!


 私たち女に「君だけだよ」なんて甘い言葉を囁いて、こっちがちょっとでも良い顔なんかしたら、もうおしまい。やることやって、その後のことなんか知らないと言わんばかりに逃げていっちゃう。


 後に残された私たちは、大きくなっていくお腹を抱えて、途方に暮れるばかり。

 まったく無責任なのよ、男って。いつも苦労するのは女のほうだなんて、ほんとに不公平!


 大体、生き物にとって一番大事なことは、子孫を残すことなんだから、女のほうが偉いに決まってるじゃない。子供が産めない男に、価値なんてあるわけないじゃない。


 だから、男は女を敬って、少しでも役に立つように、その身を捧げるべきなのよ!



 そこは、とある草の上。カマキリのメスは、金切り声でそう叫んだ。


 その視線の先には、交尾を終えたカマキリのオス。


 メスに食べられてなるものかと、必死になって逃げるその姿は、そうする間も遠ざかり、草むらに消えていったのだった。

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